【新・日本推理小説体系・総解説】《第1期》下

松井さんの【新・日本推理小説体系・総解説】《第8巻》から《第13巻》までのまとめです
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松井和翠 @WasuiMatui2014

さ、今日は午前中から【新・日本推理小説大系・総解説】やっていくぞ。

2015-12-30 10:01:15
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第8巻》 【松本清張】 『点と線』 「張り込み」 「遭難」 「投影」 「紐」 「八十通の遺書」 「声」 「顔」 「凶器」 「火の記憶」 「家紋」 「潜在光景」 「天城越え」 「一年半待て」 「地方紙を買う女」 「馬を売る女」 「巻頭句の女」 「二冊の同じ本」

2015-12-30 10:15:36
松井和翠 @WasuiMatui2014

「二階」 「装飾評伝」 「草」 「偽狂人の犯罪」 「鬼畜」 「万葉翡翠」 「陸行水行」

2015-12-30 10:15:57
松井和翠 @WasuiMatui2014

第8巻には松本清張の長編1作品と24作品を収録した。 本来なら、長編2本に短編10数本というかたちが基本なのだが、清張作品には短編の収穫が多くあり、10数本に絞り切れなかった。そこで、思い切って長編は1本のみの収録とし、短編の採録に力を入れた次第である。

2015-12-30 10:20:20
松井和翠 @WasuiMatui2014

その長編1本は『点と線』を選択した。「何を今更…」と思われる向きもあるだろうが、やはりこれは外せない。アリバイトリックが古びてしまっているのは確かだが、推理のスクラップ&ビルドや犯人の真の狙いなどは現代的な視点で見ても洗練されている。

2015-12-30 10:23:01
松井和翠 @WasuiMatui2014

また、秀逸な〇〇ミステリとしても読むことが可能である。是非、現代の読者にも、食わず嫌いをせず、一読願いたい。その他に、清張の長編としては壮絶なトリック(と壮絶な犯人の最期!)が忘れ難い『眼の壁』、アリバイ崩しの名作『時間の習俗』、戦争因果譚が突如謎解きに変貌する『遠い接近』

2015-12-30 10:26:34
松井和翠 @WasuiMatui2014

ハイミスの心情を描いて生々しい異色編『ガラスの城』あたりがお薦めだ。

2015-12-30 10:27:50
松井和翠 @WasuiMatui2014

さて、多くの名作・佳作・秀作を持つ清張短編の中からは、24本に絞るまでもなかなか大変な作業であった。結果いくつかの定評作が落ちてしまった。これは名手であるが故の仕方のないことであり、ご寛恕願いたい。

2015-12-30 10:32:50
松井和翠 @WasuiMatui2014

清張短編は大体5つのパターンに大別することが出来る。曰く、 ①サスペンス味の強いもの②トリッキーなもの③記憶を主題に扱ったもの④悪女もの⑤歴史を題材にしたもの の5つである。

2015-12-30 10:35:46
松井和翠 @WasuiMatui2014

①サスペンス味の強いものは名作の誉れ高い「張り込み」「遭難」が代表格。この作品群は、ドラマ化されることが多く、一般的な知名度も高い。今回収録したものとして他に「鬼畜」「声」「顔」あたりが同じくこのグループ。あまり知られていないものとしては「草」。語りに趣向を凝らした佳編である。

2015-12-30 10:39:23
松井和翠 @WasuiMatui2014

意外にも清張はトリックにこだわった作家である(使い方の得手不得手は脇に置いておくとして)。短編の中にも大きなトリックにこだわった作品が結構多く、海外の名作を換骨奪胎した「凶器」や大掛かりな殺人トリックが映える「投影」、凝った犯罪計画に恐れ入る「紐」などがその代表である。

2015-12-30 10:44:11
松井和翠 @WasuiMatui2014

また数自体は少ないがホワイダニットの力点を置いた「装飾評伝」「八十通の遺書」もある。全体的にプロバビリティテーマや九マイル風に推理を飛ばす作品が多いのも作者の特徴。前者は流石に名指せないが、後者の代表として「二冊の同じ本」を収録した。

2015-12-30 10:47:54
松井和翠 @WasuiMatui2014

③記憶を主題に扱ったものが多いのも作者の特徴である。「家紋」「潜在光景」「天城越え」あたりがその代表か。個人的にこの分野は苦手なのだが、そんな中でも「火の記憶」は別格。哀しい女の情念を描いて忘れ難い逸品である。

2015-12-30 10:52:24
松井和翠 @WasuiMatui2014

“女”といえば④悪女もの。「悪女」というと語弊があるかもしれないが、女性が強烈な印象を残す作品は幾つもある。代表は「地方紙を買う女」「馬を売る女」「巻頭句の女」あたりか。また法律の落とし穴を見事に使った「一年半待て」もなかなかに強烈な“女”が登場する。

2015-12-30 10:56:50
松井和翠 @WasuiMatui2014

最後に⑤歴史を題材としたものとして、「万葉翡翠」「陸行水行」を挙げておく。これを気にいったら、「火神被殺」「巨人の磯」「神の里事件」といった短編や『Dの複合』といった作品にも手を伸ばしてほしいところだ。

2015-12-30 11:00:03
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第9巻》 【仁木悦子】 『林の中の家』 『枯葉色の街で』 『冷えきった街』 「粘土の犬」 「暗い日曜日」 「うす紫の午後」 「おたね」 「赤い猫」 「うさぎと豚と人間と」 「緋の記憶」 「夢魔の爪」 「かあちゃんは犯人じゃない」 「罪なき者まず石を投げうて」 「聖い夜の中で」

2015-12-30 12:10:46
松井和翠 @WasuiMatui2014

第9巻には仁木悦子の長編3作品と短編11作品を収録した。 仁木悦子の長編3本となるとかなりの分量になると思われるかもしれないが、仁木悦子の長編は1編1編がそれほど長くないので可能となった。早速その長編から見ていこう。

2015-12-30 12:14:33
松井和翠 @WasuiMatui2014

まず挙げねばならないのは仁木悦子・雄太郎シリーズだろう。デビュー作『猫は知っていた』から、作者と歩みをともにするこの兄妹は全部で4つの長編で活躍する。今回は法月綸太郎に「《国名》シリーズに匹敵する」と言わしめた『林の中の家』を採った。

2015-12-30 12:18:04
松井和翠 @WasuiMatui2014

2本目はハードボイルド長編の傑作として『冷えきった街』を選択。女性作家によるハードボイルド作品は今でこそ珍しくなくなったが、この当時としてはかなり先駆的な試みである。作者特有の“優しさ”とは冷え冷えとした空気感がマッチして、類稀な作品に仕上がっている。

2015-12-30 12:22:22
松井和翠 @WasuiMatui2014

多くの評者が指摘する通り、作者の特長の一つに「子供の描き方の巧さ」があるわけだが、それが如実に表れた作品として『枯葉色の街で』を収録した。この作品に登場するミチルちゃんは、日本推理小説史屈指の名ヒロインといえる。

2015-12-30 12:25:42
松井和翠 @WasuiMatui2014

先ほど「子供の描き方の巧さ」といったが、それは無論短編にも現れている。「かあちゃんは犯人じゃない」は題名からもわかるようにその方面の代表作である。ただし、決して甘い作品ばかりではないところが、作者の凄いところ。

2015-12-30 12:33:16
松井和翠 @WasuiMatui2014

「うす紫の午後」「粘土の犬」「うさぎと豚と人間と」といった作品にも魅力的な子供たちが登場するが、そのダークさに慄然とする読者も多いだろう。

2015-12-30 12:36:30
松井和翠 @WasuiMatui2014

この他に正統派の謎解き短編として仁木兄妹ものの「暗い日曜日」、協会賞受賞作「赤い猫」、幻のシリーズ・神父探偵ものの「罪なき者まず石をなげうて」を収録した。また三影潤ものの「緋の記憶」「夢魔の爪」もハードボイルドの皮を被ってはいるが、謎解きのしっかりした作品だ。

2015-12-30 12:39:34
松井和翠 @WasuiMatui2014

ボーナストラックとしてクリスマス・ストーリー「聖い夜の中で」を収録した。

2015-12-30 12:41:40
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第10巻》 【佐野洋】 『轢き逃げ』 「銅婚式」 「さらば厭わしきものよ」 「不運な旅館」 「二度目の手術」 「三人目の椅子」 「金属音病事件」 「掘る」 「密室の裏切り」 「冷えた茶」 「直線大外強襲」 「奇しくも同じ日に・・・」 「大使”夫人”誘拐事件」

2015-12-30 12:43:18