117番元素と118番元素の名前の末尾はどうなるか

113番元素Uutが日本・アジアで初めての新元素認定を受けた事で話題ですが、個人的にはUutの命名よりもっと気になるのが117番元素Uusと118番元素Uuoの命名。と言っても末尾の方であるが…。
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エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

113番元素Uutが正式に理化学研究所の発見として承認された関係で沸き立っているけど、今回は同時に115番元素Uup、117番元素Uus、118番元素Uuoも米露合同研究チームの発見として承認されている。

2015-12-31 20:21:45
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

発見された元素の命名についてはこれからで、UutははたしてJapanに因むかどうかも結構話題だけど、実際の所私が個人的に気になっているのはUusとUuoの命名。と言っても気になるのは頭の方ではなく、末尾の方。

2015-12-31 20:21:52
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

最近発見・命名された元素だったり、あるいは架空の物質が「何とかイウム」で統一されているので忘れがちだが、元々末尾が「-ium」で終わる元素は基本的に金属元素という習慣がある。これは遵守すべき厳密なルールと言うわけではないが、

2015-12-31 20:22:01
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

1736年にハンフリー・デービーがカリウム(英語ではPotassium)を名付けてから習慣になったもので、非金属に-iumが付けられたのはヘリウムしかない。但し、これは仮の名称である系統名には当てはまらず、予測される性質に関わらず必ず-iumで終わる事になっている。

2015-12-31 20:22:43
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

これがあまり顧みられないのは、多分だが2つの理由がある。1つは、初期に発見された新元素がちゃんと化学的性質が調べられる程まともな量が入手可能なので、周期表の位置から予測される性質を持つ事が明らかになっている事。

2015-12-31 20:22:53
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

2つに、そのような性質を調べる事が出来ないごく微量しか合成できない新元素は、検討せずとも金属的性質を持つ事が予測される状態が長らく続いたから。特に第7周期はアクチノイドを挟んでかなり長い間金属元素が続くので、連続で-iumが登場する状態になっている。

2015-12-31 20:23:01
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

最も非金属に近いだろう新元素で、直近ではリバモリウムが命名されたが、これは直上のポロニウムが金属的性質を示す事と、計算化学的にもポロニウムに類似した金属的性質を示す事が予測されているので、特に考えられていなかったかもしれないが、-iumで問題のない命名だった。

2015-12-31 20:23:07
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

しかし今回UusとUuoが承認された事により、恐らく真面目に-iumを単純につけていいのかどうかを考える機会が発生したかもしれない。ちなみに次にそのような立ち位置になるのは、早くても167番元素Uhsの登場を待たなければならないので、恐らく生きているうちに合成される事は無い。

2015-12-31 20:23:12
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

分かりやすいUuoから考える。Uuoの位置は第18族、一般的に希ガスと呼ばれている位置である。希ガスは常温常圧で反応性の乏しい単原子分子の気体であり、非金属である。そしてヘリウムを除けば、名前の接尾辞は「-on」で統一されている。

2015-12-31 20:23:19
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

従って、希ガスに分類される元素の性質や、何より希ガスと言う名称からも、常温常圧で非金属の気体であるならば、Uuoの名前も-onで終わる事が統一感があって理にかなうように見える。そして初期に予測された性質も、Uuoは恐らく希ガス的であると予測されていた。

2015-12-31 20:23:27
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

しかしながら、最近の計算化学は、Uuoは希ガスとは似て非なる元素である事を予測している。これは電子軌道の相対論効果を検討した結果である。詳しい説明は省くが、化学的な性質を決める電子の軌道上での速度が光速に近づく事で、従来の周期表の並びから外れた性質を有する事が予測されるのである。

2015-12-31 20:23:33
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

まず、恐らくUuoは反応性に富む。これは従来の希ガスもヘリウムからラドンに下るに従って反応性が増す事は既知であるが、Uuoは希ガスとはみなせない程反応性に富み、むしろコペルニシウムやフレロビウムの方がより反応性に乏しいのではないか、と予測される程である。

2015-12-31 20:23:40
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

更に言えば、Uuoはガスですらないかもしれない。予測される融点は47℃、沸点は107℃である。これは不確実性を伴うとはいえ、Uuoは常温常圧で固体か液体、少なくとも凝集している可能性が高い事を示す。液体の幅が60℃なのも、他の希ガスが2~9℃の幅しかないのと比べれば異常である。

2015-12-31 20:23:47
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

従って、全て予測でしかないものの、Uuoが従来通りのイメージの希ガスに当てはまると期待している科学者は少ない。これを「希ガス」と呼ぶのは違和感があるのではなかろうか。

2015-12-31 20:23:54
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

Uusの場合は更に事情が複雑である。直上のアスタチンも化学的性質が良く分かっていない事も背景にある。しかしながら、アスタチンのわずかながら判明している性質は、他のハロゲンとほぼ同じである。アスタチンは発見が比較的最近だが、他のハロゲンと同じく末尾が「-ine」で終わっている。

2015-12-31 20:24:00
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

ハロゲンは単体では2個の原子が結合した二原子分子で存在し、これはΣ結合とよばれる化学結合でつながっている。しかしながら、Uusは単体ではΣ結合ではなく、π結合という別の種類の結合になる事が予測されており、これはハロゲンの性質から外れている。

2015-12-31 20:24:06
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

この結合の仕方の違いの関係で、例えば、ハロゲンの三フッ化物(ClF3・BrF3・IF3)は、分子の形がおよそT字型となる。しかし、UusF3は平面三角形型をするという予測がある。

2015-12-31 20:24:11
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

また、Uusは酸化数+1と+3が安定であると言う予測がある。他のハロゲンでも、一番安定な-1以外の酸化数が安定している場合はあるが、Uusはむしろ-1が不安定であると予測されている。また、+5は珍しく、+7は存在しないか、非常に不安定と予測されている。

2015-12-31 20:24:20
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

更に、Uusは半金属であると言う予測がある点で、もしかすると金属ではないかもしれないUuoとは違う。直上のアスタチンも半金属という予測があるが、Uusは更に金属的性質を持つ可能性が高いと見られている。

2015-12-31 20:24:31
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

しかし、今まで話してきたことは全て計算化学による予測された性質である。どれも実際に測定された物ではない。原子1個を合成する事自体が困難で、更にそれも短時間で崩壊してしまう事を考えれば、性質の測定は極めて困難である。また相対論効果があり、予測も困難にしている。

2015-12-31 20:24:40
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

なので、UusとUuoの名前が「-ium」で終わるのか、「-ine」「-on」で終わるのかは、最終的には命名者とIUPACがどういう判断をするかによる。そしてその判断基準が特にない以上、どっちに転んでもおかしくない状況ではある。

2015-12-31 20:24:44
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

今まで系統名で-iumと呼ばれていたのが長かったので、特に何の考えもなく、あるいは従来のハロゲンや希ガスから外れている事を鑑みて-iumにするかもしれないし、従来の習慣を守って-ine・-onにするかもしれない。ここら辺はどうなるか、楽しみでもある。

2015-12-31 20:24:48