【新・日本推理小説体系・総解説】《第4期》

松井さんの【新・日本推理小説体系・総解説】の《第38巻》から《第50巻》までのまとめです
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松井和翠 @WasuiMatui2014

ではラスト《第4期》の13巻へ。

2015-12-31 21:13:27
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第38巻》 【綾辻行人】 『十角館の殺人』 『霧越邸殺人事件』 「洗礼」 「再生」 「四〇九号室の患者」

2015-12-31 21:15:03
松井和翠 @WasuiMatui2014

第38巻には綾辻行人の長編2作品と短編3作品を収めた。 問答無用の“新本格”の旗手。『十角館の殺人』は長い“本格冬の時代”に光を差し込んだ作品として未だにフォロワーが絶えない名作である。

2015-12-31 21:19:05
松井和翠 @WasuiMatui2014

本巻でも、当然巻頭に置いた。完成度からみれば、『迷路館』や『時計館』の方が上であろうが、それでもやはりこの作を外すことは出来ない。“新本格の楷書”として称揚しておこう。

2015-12-31 21:21:17
松井和翠 @WasuiMatui2014

もう一作は―『暗闇の囁き』『殺人鬼』『Another』といったサイコ・サスペンスに後ろ髪をひかれつつも―著者畢生の大作『霧越邸殺人事件』を選んだ。本格ミステリと幻想怪奇小説が見事な合致を見せた異形の作。

2015-12-31 21:25:49
松井和翠 @WasuiMatui2014

この他、亡き名編集者に捧げた犯人当て「洗礼」とホラー短編「再生」、サイコ・サスペンス「四〇九号室の患者」を収めた。特に、「洗礼」は未だ単行本未収録のため、珍重すべき作品である。

2015-12-31 21:27:28
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第39巻》 【有栖川有栖】 『月光ゲーム』 『幽霊刑事』 「望月周平の密やかな旅」 「四分間は短すぎる」 「ハードロック・ラバーズ・オンリー」 「除夜を歩く」 「蝶々がはばたく」 「ロジカル・デス・ゲーム」 「地下室の処刑」 「絶叫城殺人事件」 「スイス時計の謎」

2015-12-31 21:30:08
松井和翠 @WasuiMatui2014

第39巻は有栖川有栖の長編2作品と短編9作品を収録した。 作者は盟友・綾辻行人と共に、新本格のトップを走り続けてきた。筆を途切れさせる作家が多い中にあって、常にコンスタントな活躍をしてきた作者の活躍は立派である。

2015-12-31 21:35:31
松井和翠 @WasuiMatui2014

長編は勿論、自他共に認める最高傑作『双頭の悪魔』を挙げるべきだろう(選者自身も勿論最高作と考えている)。しかし、この《学生アリス》シリーズは、まず第1作から味わってほしいと考えた。マリアがなぜあの村を訪れる事になったか、アリスがなぜマリアを助けに行くのか、

2015-12-31 21:38:58
松井和翠 @WasuiMatui2014

それを知ることがより大きな感動に繋がるのではないか―そう愚考し、敢えて『月光ゲーム』を推すしだいである。

2015-12-31 21:41:54
松井和翠 @WasuiMatui2014

もう一作はノンシリーズ『幽霊刑事』を置いた。2つの《アリス》に隠れてはいるが、ロジックの閃きとともに、何の衒いもない“泣かせ”の演出が光る、実に作者らしい作品である。

2015-12-31 21:44:27
松井和翠 @WasuiMatui2014

長編2作に比べると短編の選択は比較的穏当である。《学生アリス》からは、単行本未収録の「望月周平の密やかな旅」を筆頭に「四分間は短すぎる」「ハードロック・ラバーズ・オンリー」「除夜を歩く」を収録した。

2015-12-31 21:46:09
松井和翠 @WasuiMatui2014

対して《作家アリス》からは「蝶々がはばたく」「ロジカル・デス・ゲーム」「地下室の処刑」「絶叫城殺人事件」「スイス時計の謎」を収穫。特に「スイス時計の謎」は敬愛するエラリー・クイーンに引けを取らぬハード・ロジック・パズラーである。

2015-12-31 21:48:42
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第40巻》 【原尞】 『私が殺した少女』 『さらば長き眠り』 「子どもを失った男」

2015-12-31 21:51:32
松井和翠 @WasuiMatui2014

第40巻には原尞の長編2作品と短編1作品を収録した。 現代ハードボイルドを代表する作家のひとり。さらに、そのプロッティングは本格推理小説顔負けのものである。ただし、欠点は“超”がつく寡作であることだ。

2015-12-31 21:55:57
松井和翠 @WasuiMatui2014

本来であれば処女作『そして夜は甦る』と直木賞受賞作『私が殺した少女』をカップリングするべきであろうが、この2作はやや似通った部分があるため、本巻では『私が殺した少女』と第3作『さらば長き眠り』を収録した。

2015-12-31 21:58:24
松井和翠 @WasuiMatui2014

ただし、3作品ともその完成度は凄まじく、文体の密度・プロットの練度も文句のつけようのないレベル。正直どれを採ってもかまわない。

2015-12-31 22:00:19
松井和翠 @WasuiMatui2014

重量級の2作を収録したせいで短編は1作品のみとなってしまったが、収録した「子供を失った男」は第9回日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞作『天使たちの探偵』中の一編である。

2015-12-31 22:03:44
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第41巻》 【法月綸太郎】 『密閉教室』 『頼子のために』 「死刑囚パズル」 「カニバリズム小論」 「黒衣の家」 「都市伝説パズル」 「背信の交点」 「トゥ・オブ・アス」 「しらみつぶしの時計」 「バベルの牢獄」 「ノックス・マシン」 「カット・アウト」

2015-12-31 22:08:03
松井和翠 @WasuiMatui2014

第41巻は法月綸太郎の長編2作品と短編10作品を収録した。 “新本格”きっての理論派である作者は、凝りに凝り、捻に捻くれた作品が多く、どこか屈折したマニア気質が窺える作品揃いである。

2015-12-31 22:11:00
松井和翠 @WasuiMatui2014

ただし、いずれの作品も質自体は安定しており、代表作は読者の好みによって大きく分かれるだろう。本巻では処女作『密閉教室』と作者と同名の探偵が活躍する《法月綸太郎》シリーズから『頼子のために』を収録した。どちらも、“名探偵の敗北”をテーマにしているところが作者の屈折ぶりを表している。

2015-12-31 22:14:16
松井和翠 @WasuiMatui2014

また、現代屈指の短編の名手でもある。特に「死刑囚パズル」はオールタイムベストアンケートで1位に選ばれたこともある傑作。《法月綸太郎》シリーズからは、この他に「カニバリズム小論」「黒衣の家」「都市伝説パズル」「背信の交点」と“林太郎”時代の「トゥ・オブ・アス」を採った。

2015-12-31 22:16:52
松井和翠 @WasuiMatui2014

近年では、造詣の深いSFの知識を活かして、「しらみつぶしの時計」「バベルの牢獄」「ノックス・マシン」等の実験的な作品の執筆に力を入れている。来年刊行される予定の『挑戦者たち』は99の“読者への挑戦状”で構成された長編作品とのこと。楽しみである。

2015-12-31 22:19:30
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第42巻》 【北村薫】 『空飛ぶ馬』 『盤上の敵』 『冬のオペラ』 「水虎」 「白い朝」 「新釈おとぎばなし」 「植物採集」 「ものがたり」

2015-12-31 22:20:54
松井和翠 @WasuiMatui2014

第42巻には北村薫の長編1作品と連作短編集2作品及び短掌編5作品を収録した。 “日常の謎”を本格的に定着させた功績者である。その巧みな言葉遣いと瑞々しい筆致でミステリファン以外からの支持も厚い。

2015-12-31 22:24:16