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「石田三成の青春」第9話 「友よ!~佐和山から関ヶ原へ~」
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また、三成は無条件に信じているようだが、大老の中の、上杉、毛利とて、何ら彼らと変わるところはないと、吉継には思える。その彼らを抑えているのは、家康の力だ。もし今、家康がいなかったら、世は乱世に逆戻りだ。 #友よ
2016-01-06 19:13:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そこの道理がわからぬ佐吉ではあるまいに。 吉継は、首を傾げる思いだった。 吉継の心を察したのであろうか、 「それは、豊臣家の大老として政を行うてくれておる分には、頼もしい」 三成が、渋々認めたように言う。 #友よ
2016-01-06 19:15:08![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「で、あろうが」 「じゃが、きっと家康は自ら天下を取ろうとする」 「なぜ、そのようなことが言える」 「おぬしも今、頭の中で考えているではないか。上杉殿、毛利殿にも野心はあると。その野心、なぜ家康にのみ、ないと言える」 「うーん」 吉継は、うなった。 #友よ
2016-01-06 19:16:27![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
さすが三成。吉継が考えていることをよくわかっている。そして、三成の言うとおりなのだ。吉継の挙げた武将たちと同じく家康も、天下を望んでいる。家康の実力を思う時、現実性がある分、その望みは誰よりも強いかもしれない。だが、 それでもいい。 吉継は思っている。 #友よ
2016-01-06 19:17:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
徳川殿が天下を取ってもいいではないか、むしろその方が世の中は安定する。 吉継は、家康と政について話し合ったことがある。いや、話し合うというよりも、家康の政についての考えを聞いたといった方がいいかもしれない。 #友よ
2016-01-06 19:18:55![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
豊臣公儀内にいる家康の考えが、今の政の目指しているところと、あまり変わらないのは、当たり前だ。しかし、家康が今の公儀の政の全てを善しとしているかというと、断じてそうではない。 #友よ
2016-01-06 19:19:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
家康が今の公儀の政のなかで、一番に直さなければならないと考えているもの。それは、あまりにも、大名家への監視があからさまだということだ。 その代表的なものが「太閤蔵入地」、各大名の領地の中にある一万石程度の公儀直轄地だ。 #友よ
2016-01-06 19:20:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
その存在は、戦時の兵糧の調達には便利だし、そこに代官をおいて大名を監視できる。公儀の側からすれば、すこぶる都合がよい方法だ。謀反も事前に防げるし、領民への圧政も取り締まることができる。 しかし公儀がいつも正義だとは限らない。 #友よ
2016-01-06 19:21:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
いきすぎた監視、内政干渉は、不満をため込んで、やがては爆発する。 家康の目指す世の中は、基本的に大名領地の政は領主である大名家に任せる。公儀はゆるく大きく統治する。そんな世の中だ。 #友よ
2016-01-06 19:22:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
その話を聞いた時、吉継は、目からうろこが落ちる思いだった。 徳川殿が作る天下、見てみたい気がする。 と思わぬでもない。 そんなわけで吉継は、 豊臣から徳川へ、天下の覇権が移っても、それはそれで、致し方ないことだ。 と思っている。 #友よ
2016-01-06 19:23:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかし、そんな自分の気持ちを、三成に理解させるのは、 難しい。 と吉継は思う。 そして 佐吉をこのようにしてしまった責任の半分以上は自分にあるのかもしれない。 自戒を込めて十八年前に思いを馳せるのだった。 #友よ
2016-01-06 19:24:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
十八年前、天正十年六月、本能寺の変が起きた。秀吉は事前にその情報を知りながら、主・信長に知らせず、見殺しにした。 それを知った三成は、衝撃を受け、まっすぐな若者の正義感から、秀吉を嫌悪しかけた。 それを止めたのが吉継だ。 #友よ
2016-01-06 19:25:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
吉継は三成に、 「御屋形様(信長)よりも、わが殿(秀吉)の方がより良い世をおつくりくださる」 そう言って、説得した。 その時、三成は、頭では納得したようだった。しかし、大方の感情の部分では、受け入れられずに苦しんだようだ。しかし、秀吉は主だ。否定することはできない。 #友よ
2016-01-06 19:26:58![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「より良い世をおつくりくださる」 言葉を発した吉継よりも、三成の方が、この言葉にすがった。 やがて秀吉が天下を取ると、三成は、より良い世をつくるべく、秀吉の手足となって奔走する。 そして今、戦のない平穏な世がつくられた。 #友よ
2016-01-06 19:27:58![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
佐吉はまだ、あの事をひきずっているのかもしれない。いや、ひきずっているのだろう。 吉継は、ほとんど見えぬ目で、三成を見つめた。 始まりのわだかまりが大きく、未だ消すことができない故に、 これで、良かったんだ。あれは正しかったんだ。 思い込みたい。信じたい。 #友よ
2016-01-06 19:29:45![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そんな三成とって、天下の主は、 豊臣家以外に考えられない。 というのもわかる。 三成にとって太閤・豊臣秀吉と豊臣の家は、何物にも勝る絶対的なものなのだ。 三成には、家康が、 豊臣の世を脅かす大悪人。 そんなふうに見えるのかもしれない。 #友よ
2016-01-06 19:30:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
三成の気持ちはわかる。 だが、兵を挙げるのは、間違っている。 再び世が乱れれば、もう一度自分に天下取りの機会が訪れるかもしれない。そういう思いで三成に味方するものはいるだろう。そんな、あからさまな野望でなくても、人それぞれの思惑で、家康に敵対する者もないとは言えぬ。 #友よ
2016-01-06 19:33:12![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかし、それで、どうなる。 無益だ。やめろ。 吉継は繰り返した。 #友よ
2016-01-06 19:34:04![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「石田三成の青春」 第9話【最終話】 「友よ! 佐和山から関ヶ原へ」第2回 これにて終了です。 今宵もお付き合いくださり、どうも有難うございました。 明日も、どうぞお楽しみに! #友よ
2016-01-06 19:36:15![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
お待たせいたしました。 「石田三成の青春」第9話【最終話】 「友よ! 佐和山から関ヶ原へ」第3回 ぼちぼち始めさせていただきます。 #友よ pic.twitter.com/DpUiCmKImV
2016-01-07 19:00:06![](https://pbs.twimg.com/media/CYG-mjAUkAAUGWC.png:medium)
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(四) なぜ、これほど言うてもわからんのだ。 三成は、自分の前に座る吉継につかみかかりたい衝動を辛うじてこらえた。 家康をこのままにしておいたら、きっと秀頼様に害をなす。 何故それがわからぬ。 #友よ
2016-01-07 19:01:07![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
虎之助(加藤清正)や市松(福島正則)と同じく、紀之介、そなたまでも、家康にうまくまるめ込まれたか。 家康は天下を自分の手中に収めることしか考えておらん。 何故それがわからぬ。 太閤殿下のご恩を忘れたか。 #友よ
2016-01-07 19:02:01![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
こんなはずではなかった、 吉継は、家康と近しい関係にあるものの、自分が話をしたら必ずわかってくれると信じていた。それなのに……。 #友よ
2016-01-07 19:02:47![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
吉継は、あくまでも挙兵に反対した。それどころか、世の中の平穏のためには家康が必要だとまで言う。さらに、さすがに三成の前では口には出さないが、どうやら家康が天下を取ってもよいとまで思っているようなふしさえある。 #友よ
2016-01-07 19:03:35![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
どうなってしまったんだ、紀之介。 三成には吉継の考えが、どうしても理解できなかった。 「これほど言うてもわからんか」 三成は絶叫した。 #友よ
2016-01-07 19:04:19