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竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次です! 今回は艤装と艦娘、その強化手術の関連性のお話と、叢雲の話。わりと艤装設定部分は、近いことを作者本人も考えていた感じです。 ぜひぜひおたのしみください! 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

古い設計思想に基づいた侵襲型艤装の部品を入れ替えて非侵襲型に改修。駆動系のソフトウェアも非侵襲型のそれを導入しつつ、基幹の部分は入れ替えられないためエミュレートで対応。人体の方にも最新のナノマシンと初期型に必要な旧型ナノマシンの双方を注入。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:36:50
竹村京 @kyou_takemura

あまりに無理があるこの構成が艤装と人体の双方に過大な負荷をかけ、ついに艦娘という統合化されたシステムがダウンしてしまった。それがこのMIAの原因だろう。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:38:43
竹村京 @kyou_takemura

こんな継ぎ接ぎではまるでフランケンシュタインの怪物ではないか。この改修を担当した者はFRAM(Fleet Rehabilitation And Modernization)が何であるか、全く理解していない。ただその場しのぎをしただけだ。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:41:42
竹村京 @kyou_takemura

藤郷が苛立ちを抑えていると、執務机の電話が鳴る。三笠が受話器を取って藤郷の耳に当てた。 「はい、藤郷」 叢雲が所属する鎮守府を含む方面を統括する将官からの、叢雲の艤装のGPSが復帰したという連絡だった。そのリアルタイム情報を技本にも回すよう依頼する。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:44:06
竹村京 @kyou_takemura

「GPSだけですか? 他の稼働データは?」 『GPSのみだ。それ以外の情報は送信されていない』#落ちぬい二次

2016-01-15 21:46:17
竹村京 @kyou_takemura

GPSは他のシステムとは独立性が高く、かつ衛星による測位というシンプルな機能だ。だから他のシステムが応答しない状況でも稼働したのだろう。であれば他の機能は不全状態と考えてよいだろう。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:46:39
竹村京 @kyou_takemura

GPSの航跡を表示すると、通常の航路から大きく離れ、あちこちに迷走していた。誘導装置もダウンしているので小型すぎて精度が悪い機械式の慣性航法装置しかないにしても、この迷走ぶりは異常だった。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:48:45
竹村京 @kyou_takemura

「彼女をどうするおつもりです」 『その前に彼女の状態を教えてくれ』 「推測でしかありませんが」 『かまわん』 「おそらく正気は保っていないでしょう。戦闘を経ていないのなら弾薬は満載。場合によってはかなりの脅威になります」#落ちぬい二次

2016-01-15 21:50:53
竹村京 @kyou_takemura

『そうか。であれば、私としては被害を局限するために必要な措置を講じねばならん』 「撃沈ですか」 『それも選択肢には入る。だがこれは技術的な不具合による不幸な事故だろう。可能ならば彼女を救いたいというのが偽らざる本心だ』#落ちぬい二次

2016-01-15 21:52:36
竹村京 @kyou_takemura

技術的な不具合による、という部分を強調して言った。その意図は明白だ。技術屋のミスは技術屋がリカバリーしろ、だ。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:53:58
竹村京 @kyou_takemura

言いたいことはある。技本では開発するだけで、製造や実際の運用、都度の補修などを行うのは実戦部隊の工廠や民間の防衛企業であるから、度重なるつぎはぎアップデートにまで自分が責任を負う謂れはない、と。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:55:50
竹村京 @kyou_takemura

「所属鎮守府に回収させればよいのでは?」 『残念ながら、別方面の作戦に急遽出動している』 何らかの作為を感じる。所属部隊を動かせないのなら近隣の他の部隊を動かせばよいはずだ。だがそれをせずに技術的なトラブルだからと技本に尻を拭かせるとはどういう意図があるのだろうか?#落ちぬい二次

2016-01-15 21:57:13
竹村京 @kyou_takemura

あるいは、自分が原因かもしれない。 自分を含めた数人の生き残り組は『海ぼうず』と呼ばれており、一部で英雄視されているためその反動で目の敵にする者もまた存在する。海ぼうずの一員である自分に厄介事を押し付け、自分が上位であることを再確認して溜飲を下げるためであろうか。#落ちぬい二次

2016-01-15 21:58:34
竹村京 @kyou_takemura

どの様な魂胆があるにしろ、技本も軍、ひいては大本営の命令を受ける立場にある以上、断る事はできなかった。 「承知しました。では彼女の措置についてはこちらに一任して頂きたく」 『よろしい。ただし上陸までだ。上陸してしまったら陸軍を出す』#落ちぬい二次

2016-01-15 22:00:38
竹村京 @kyou_takemura

通話を終え、大きくため息をついた。 「明石を呼んでください」 明石が来るまでの数分の間に、三笠に口述筆記をさせて作戦計画書を作成する。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:02:30
竹村京 @kyou_takemura

淀みなく文章を口にしながら考える。新造は予算上困難だが、新造より費用が掛かっても修繕ならば許可されやすい。今回の件はそういう官僚体質が招いた悲劇だった。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:03:44
竹村京 @kyou_takemura

だから技術者として、艤装もそれを動かす少女も両方回収せねばならない。命令された義務というよりは意地だった。 5分もせずに執務室のドアがノックされる。 「明石、出頭しました」 「入りなさい」 明石は初期に製造された艦娘の中でも特異な工作艦である。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:05:50
竹村京 @kyou_takemura

ある程度戦闘艦が揃ったら、次に欲しくなるのはそれをサポートする特務艦の類だ。かつて海上自衛隊でも1次防でDD16隻、DE6隻、PF18隻という戦闘艦が揃ったあとに建造されたのはそれらの活動時間を延長するための給油艦はまなAO-411だった。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:06:46
竹村京 @kyou_takemura

艦娘も同様で、長門型をはじめとした戦闘艦の後にはそれらの造修をするための工作艦が建造された。もとより人でしかない艦娘が持てる食料や燃料は限られているので、補給艦の艦娘は優先度が低かったためだ。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:09:32
竹村京 @kyou_takemura

初期こそあちこちに急造された鎮守府に出ずっぱりではあったが、戦況が安定して鎮守府が大なり小なり艤装の造修能力を備えるようになってからは海に出ることが少なくなり、初代の明石はそのまま退役した。いま技本にいるのは二代目である。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:11:22
竹村京 @kyou_takemura

基本的には技術者として、なおかつ艦娘として艤装の開発に参加している。だが明石にはもう一つ、重要な仕事があった。 「久しぶりの作戦です。行けますね?」 技術研究本部が保有する唯一の艦娘。つまりは『戦力』である。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:12:51
竹村京 @kyou_takemura

「ええ……でも戦闘ってすごい苦手なんですけど……」 「所定の訓練はこなしているんでしょう。それに相手は深海棲艦ではありません」 言われて、明石は三笠から渡された計画書を読む。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:14:33
竹村京 @kyou_takemura

「相手は……艦娘? 現在暴走中……ふむふむ……艤装は半稼動状態……」 「フルスペックの艦娘を相手にできない事は分かっています。ですがそれならいけるはずです」 「むむ。確かにこの状態だったらいけるかも……」#落ちぬい二次

2016-01-15 22:15:54
竹村京 @kyou_takemura

「よろしい。艤装は破壊しなさい。ただし核だけは無傷で持ち帰る様に。詳しいブリーフィングは移動中に行います」#落ちぬい二次

2016-01-15 22:17:45
竹村京 @kyou_takemura

有無を言わさぬ藤郷に追い立てられるように執務室を出た明石は、既に準備万端整えられていた艤装を後部シートが撤去されたバンに載せ、数名のサポートチームと共に技本から出撃していった。#落ちぬい二次

2016-01-15 22:19:38
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