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竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次です! 今回は艤装と艦娘、その強化手術の関連性のお話と、叢雲の話。わりと艤装設定部分は、近いことを作者本人も考えていた感じです。 ぜひぜひおたのしみください! 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

「何かご用ですか?」 「横須賀病院の佐藤と申します。彼女の移送をするのでどいていただきたい」 「そんな話は聞いていませんが」 「失礼。つい先ほど藤郷さんから許可は貰っていますよ」#落ちぬい二次

2016-01-15 23:53:19
竹村京 @kyou_takemura

男が小脇に挟んだバインダーを開くと、たしかに三笠が代筆した藤郷の名前と判子が押された書類があった。移送先は横須賀にある軍病院。確かに技本の医務室よりは設備が充実しているので治療には都合がいい。#落ちぬい二次

2016-01-15 23:55:09
竹村京 @kyou_takemura

許可があるのならば止める理由も権限もない明石はストレッチャーで運ばれていく叢雲を見送るほかなかった。 しかし、少しもやもやは残る。藤郷が術後の経過さえ観察せずに叢雲を手放すことに違和感があったのだ。#落ちぬい二次

2016-01-15 23:57:49
竹村京 @kyou_takemura

壁の時計を見ると休憩時間はまだ10分ほど残っている。無人の病室を出ると、技監の執務室に足を向けた。 「明石です」 「入りなさい」 藤郷はいつも通り、様々な技術仕様書や報告書に目を通しながら三笠にあれこれと指示を出していた。作業は止めず、視線で明石を促した。#落ちぬい二次

2016-01-15 23:59:15
竹村京 @kyou_takemura

「失礼します。叢雲ちゃんの件ですが、移送は少し早かったのでは?」 「叢雲君を移送? いえ、腕が完全に繋がるまで移送するつもりはありませんが」 書類から視線を上げた。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:00:47
竹村京 @kyou_takemura

「でも、さっき佐藤という方が横須賀病院に移送すると言って藤郷技監の書類を持ってきましたけど」 その言葉に藤郷が絶句する。 「……やられました。おそらく大本営ですよ、その佐藤は」#落ちぬい二次

2016-01-16 00:02:31
竹村京 @kyou_takemura

技本のセキュリティを越えて施設に入り込み、技監の書類さえ偽造して堂々と傷痍艦娘を連れ出せる権限があるのはそれしか思い浮かばない。 大本営が腕を失った艦娘を連れ去って何をするつもりなのかは見当もつかない。しかしこんな方法を取るならば真っ当な目的ではないだろう。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:04:22
竹村京 @kyou_takemura

「三笠。入退室のセキュリティ記録を洗い直させなさい。それからギンブチとイルカに連絡を。彼女について情報が掴めたら私に流すようにと」#落ちぬい二次

2016-01-16 00:04:40
竹村京 @kyou_takemura

ギンブチこと鷲塚紡は知己の海軍大佐だが、紡績系財閥の御曹司でもあるため軍内外に多くのコネクションを持つ。イルカこと鯨崎は海保から海自および海軍、陸軍と転属した異色の軍歴を持つだけに情報網も広い。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:05:50
竹村京 @kyou_takemura

「はい。でも、大本営を探って大丈夫でしょうか」 「彼らもそのあたりは心得ています」 それから数秒考え、付け加える。 「ついでに片目にも連絡してください。あるいは外からの方が探りやすいかもしれません」#落ちぬい二次

2016-01-16 00:07:06
竹村京 @kyou_takemura

片目とは先の二人と同じく旧知の兵頭大佐のことだ。彼はアウターヘブンを率いる龍田や人民解放軍の大校と個人的なつながりがある。もし大本営が日本国外で叢雲を使うつもりなら国外勢力の情報網にかかる可能性はある。 「かしこまりました」#落ちぬい二次

2016-01-16 00:08:23
竹村京 @kyou_takemura

三笠がそれぞれの鎮守府に連絡するのを見ながら、明石が呟く。 「ちょっと意外です」 「何がです」 「藤郷技監はもっと冷たい人だとばかり思っていました。でも叢雲ちゃんを助けようとしてて……」#落ちぬい二次

2016-01-16 00:09:47
竹村京 @kyou_takemura

「叢雲君も私の作品です。完成してもいないのに横取りされるのは我慢なりません」 ぽかん。 明石は唖然としたが、言われてみればその通りである。義手も新型ナノマシンも藤郷が開発した技術だ。その両技術を適用した昨夜の処置も藤郷が指揮を執っていた。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:11:15
竹村京 @kyou_takemura

「えー……確かにそうですけど……」 「用が済んだなら通常業務に戻りなさい。これは私の問題です」 藤郷の表情はいつもと変わらない能面のような無表情だったが、明らかに苛立ちを感じているようだった。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:11:28
竹村京 @kyou_takemura

しかし結局、方々手を尽くしても叢雲の行方は掴めなかった。 藤郷も新たな業務に追われて叢雲の事を忘れかけていた頃、兵頭提督から連絡があった。 謎の男と艦娘のコンビに襲撃を受けた。男の方に見覚えが無いが、艦娘の方は間違いなく叢雲だ、と。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:13:26
竹村京 @kyou_takemura

それをきっかけにしたように、一つまた一つと断片的な情報が入るようになった。 離島で反逆を企てた鎮守府を壊滅させた、とか。 男の方もサイバネ義肢を付けているらしい、とか。 その二人は大本営の粛清部隊である、とか。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:14:59
竹村京 @kyou_takemura

「確かに私の技術は上には筒抜けですが、やりすぎですよ、これは」 藤郷が苦々しく呟いた。 ただでさえボロボロだった叢雲に、おそらく強化処置を施して新式艤装を支給して強襲要員とする。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:16:38
竹村京 @kyou_takemura

強化処置はそもそも肉体のポテンシャルが異常に優れている素体に更なる戦闘力向上を期して施されるものだ。 初期型における特注品とは骨格の強化や人工関節への置換、痛覚の鈍化、艤装の構成部品の一部を人体内に移植することによる人体へのエンチャントフィールド付加など多岐に亘る。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:17:52
竹村京 @kyou_takemura

現行の強化処置は大部分がナノテクノロジーに置き換えられているものの、艤装部品の移植等の残された外科処置はやはりかなりの負担になる。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:19:15
竹村京 @kyou_takemura

藤郷の見立てではどうあっても退役以外には考えられない状態だった叢雲には、いずれの処置であっても確実に命を縮める。艦娘としてではない。人体としての生命を、だ。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:20:22
竹村京 @kyou_takemura

データベースにアクセスして各鎮守府に所属している艦娘を検索する。叢雲の艦娘はヒットしたが、あの二代目ではなくその後に処置を受けた三代目だった。それも普通の鎮守府に所属している。二代目のステータスはMIAのまま、艤装のみが回収されたと表示されていた。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:21:51
竹村京 @kyou_takemura

兵頭が見間違えるほど間抜けな男とは思えない。二代目の叢雲が暗部に組み込まれたのはまず間違いなかった。 藤郷はまんまとリクルートに利用されたのだ。最初に叢雲の回収を命じた将も大本営の暗部に飼われていたかその一員なのだろう。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:23:33
竹村京 @kyou_takemura

実戦部隊でない技本の戦果は揉み消しやすい。そして救ったはずの叢雲は存在を抹消され、ウェットワーク専門の部署に配属される。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:25:16
竹村京 @kyou_takemura

もともと存在しない要員ならばどうなろうと痛くはない。死亡したところでもとから死んでいるようなもの、裏切ったところでそんな人物は存在しないと公式に主張できる。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:26:04
竹村京 @kyou_takemura

藤郷とて自分が冷血漢だとか人を人とも思わない外道だとか言われている事は知っている。それがどうした、とも思っている。だがそんな藤郷にも一つだけ矜持があった。 「これは、技術の利用ではなく濫用です」 技術とは人を幸せにするためのもの。#落ちぬい二次

2016-01-16 00:27:26
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