- shiroboshi2
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昼間。太陽。夏が近づいているため、気温も上がっている。そんな中、暑さを気にもせず、彼は歩いていた。相も変わらず独り言を呟きながら。夢遊病患者めいて。通り過ぎる人々は、彼を避けながら歩いていく。侮蔑の目で。あるいは、恐怖を孕んだ目で。あるいは、冷めた目で。あるいは、あるいは……。1
2016-01-21 21:53:32彼は、灰崎 黒星は、この町では有名だったーー無論、悪い意味でーー好き好んで彼と親交を深めようという酔狂な人間はいない。それこそ、唯一の肉親たる白星ぐらい……唯一の? 「唯一……違う、誰か一人居たはずなんだ……誰だ、一人、知っている、彼女は。彼女?女なのか?」2
2016-01-21 21:59:13頭痛に見舞われながら、彼は思い起こしていく。ただ肝心な所が、出てこない。独り言のボリュームを増す黒星に、人々はまた、あの目を。 黒星はそれらを、何かしらのオブジェクトのようにしか捉えていない。あるいは、光に集まる虫か。黒星は歩みを進めて行く。道は勝手に空けられる。それだけだ。3
2016-01-21 22:05:13歩みを進めて、どこか目的地に向かおうというわけではない。彼にはいつも、目的地が無い。ただ、当てもなく歩き、なんとなく。ただなんとなく、進んでいく。 それだけ。4
2016-01-21 22:11:50やがて彼が辿り着いたのは、ごくふつうの公園であった。座亭家町第二公園。なんら面白味のない、普通の名前。遊具はブランコと滑り台のみだが、そこそこの広さがあるため、子連れの親も多い。6
2016-01-21 22:16:52が、彼等は黒星の姿を認めると、顔を合わせてこそこそと何かを話し合い、一人また一人と去っていく。黒星はそれらを無感動に一瞥すると、寂れた雰囲気を醸し出すベンチに腰掛けた。 風が、吹く。 木の葉が、揺れる。7
2016-01-21 22:22:09「白星……白星、お前なんで……」 白星が死んだ。白星が、死んだ。彼の心中を埋め尽くす空虚ーー空虚なのに、埋め尽くす虚無で溢れる。なぜ? 白星が死んだ。白星が、死んだ。殺された。昨夜告げられた、重い事実を反芻する。何度も、何度も。夜も眠れないほどに、彼は。8
2016-01-21 22:27:18白星が死んだのなら、誰がこの空虚を、虚無を埋める?誰が。分かっている。分かってはいるが、思い出せない。頭痛。 「白星……それと、あと一人……!」 風に揺れる木の葉の音、黒星の独り言の声。それだけが、この寂れた空間を支配していた。暫くの間だけ。9
2016-01-21 22:33:05「夜までずうっと、そうしているつもりかい?黒星君」 その声によって、静寂は終わりを告げた。この少年に、マルジャークによって。 「昨日はごめんね、説明せずに帰っちゃって。少し用事があったものでね」 「お前……お前だ、マルジャーク。お前。白星、腕、鳴聲、何が!何故?」10
2016-01-21 22:35:35マルジャークを睨み付けながら、黒星は質問を投げかける。欠陥した話し方で。彼にとっては、普通の話し方で。するとマルジャークは肩を竦め、呆れたような声で言った。11
2016-01-21 22:39:36「やれやれ、どうもこの世界の君は頭に何か欠陥でもあるのかね?まぁどこにいっても大概キミは狂っているけどさ……彼なんかまだボクを追って……あぁすまない、こっちの話さ」 彼が何の話をしているのか黒星には分からない。が、自分の質問への解答が得られなかったことは確かだ。12
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