ダブルケア

Sachiko_i @Sachiko_Vo_Sop

今月のケアマネージャー実務研修で初めて#ダブルケアという言葉を知った。 親の介護と自分の子育てが重なること。 そんな言葉ができるほど、今や当たり前になったんだと思った。 私の母がそれに向き合っていた35年前は、そんな問題に誰も関心を寄せなかった。 #ダブルケア　#認知症

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病気の両親の介護に明け暮れた母は初婚も初産も遅く、第一子の私を産んだのが34歳、第二子の弟は37歳の時。(1980年、1983年) 既に、母の母親のアルツハイマー病、父親の慢性関節リウマチは進行していた。今と違って薬もない。ヘルパー派遣の制度もデイサービスもない。 #ダブルケア

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そんな状態だったから、私を身籠った母は実の姉妹からも｢子供は堕ろしなさい。まともに育てられないから｣と何度も勧められたという。 それでも母は私を産み、その家で育てた。そして弟が産まれ、半年後に祖父が亡くなる。しかし、そこからが祖母の認知症介護の本番だった。 #認知症　#ダブルケア

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物をなくす。他の家族の私物を捨てる。同じ物を何度も買ってくる。手持ちの現金がなくなればツケで買ってくる。食品を箪笥に仕舞って腐らせる。洗剤や毛染め液を飲んでしまう。出掛けては戻れず捜索願い。昼夜逆転で夜間に歩き回り、主治医からの頓服薬も効かないetc. #認知症　#ダブルケア

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小学生の私と弟、心置きなく遊びに出ることがなかった。 母｢どっちかがおばあちゃん見て！家にいるなら襖は開けて！｣ 襖を閉めれば狭い家でも物音は聞こえにくい。祖母が玄関を開けたのが分からず、徘徊されては困るというわけ。第一に交通事故の危険、第二に散財の心配。 #認知症　#ダブルケア

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母親の配偶者も同居していたが、収入面でも子育ての面でも協力的とは言えなかった。 母は一人で、親と子供を世話し家事をし、生活費のために寝る間も惜しんで仕事をした。祖母が亡くなるまで2時間以上続けて眠ったことがなく、あまりの疲れにいつも死を覚悟していたという。 #認知症　#ダブルケア

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そんな状況でも、そこで産まれた子供はそれを｢当たり前｣として育つ。他の家族を知るまでは。 それを知っても、家族としての情が勝る。 母の姉妹が祖母を施設に連れ出そうとした時、泣いて怒ったのは幼稚園児の弟だった。｢家族やのに、どうして離れて暮らさなあかんの｣ #認知症　#ダブルケア

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母の姉妹のことを、私も母も信用できなかった。祖母が体調を崩し入院中、伯母たちは病院食を食べさせずに捨てていた。認知症の祖母が｢食べていない｣と看護師に訴えても物忘れで片付けられただろう。母がそれを問い詰めると伯母たちは｢食べさせん方が早く楽になるやないの｣ #認知症　#ダブルケア

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産み育ててくれた実の親の死を、どうして願えるのだろう。しかも伯母たちは隣県に住み、日頃の世話には無関心。 このことから入院中の付き添いを伯母たちに頼めなくなった。 祖母は譫妄がひどく、一人にできない。母は仕事場から離れられず、小学校が退けた私が病院へ。 #認知症　#ダブルケア

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そこで宿題をし、眠っている祖母の隣で本を読み、落書きをし、祖母が目覚めれば話し相手になった。母が弟を連れて交代に来てくれたら、病院の近くの公園で弟と遊ぶ。時々は泊まり込み、病院の簡易ベッドで眠った。私が小学3年生か4年生の冬だった。 #認知症　#ダブルケア

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お迎えの観音様まで見えていた(らしい)祖母はそれでも何とか回復、在宅復帰できた。 アルツハイマー病そのものが治った訳ではなく、家の中は相変わらずの状態となる。それでも私は戻ってきてくれて嬉しかったのだが。 しかし、時々顔を見せにくる伯母二人の虐待は続いた。 #認知症　#ダブルケア

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その頃私は小学校でいじめに遭い、平日家にいることも多かった。そこに伯母たちが来るという。 ｢たまにはお母ちゃんの世話もしたるわ。｣ 余計なお世話だが断れない。母は仕事に出、私は二階に潜んだ。伯母たちにバレたら、母が何を言われるかわからない。 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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玄関が開き、伯母たちの声がした。私は子供部屋で息を潜める。 狭い家だから話し声は筒抜け。しばらくは伯母たちと祖母の普通の会話が続いていた。昼食過ぎまでは。 やがて静かになった、と思ったら… 〈…パシーン‼〉 聞こえてきたのは打擲の音だった。 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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｢なんでこんなこともわかれへんの‼｣ パシーン、パシーン…伯母の声に、平手打ちの音が続いた。 ｢やめてくれよぅ、痛いどよぅ…｣ 奈良訛りの祖母の声が続く。 ｢こんな汚いことして‼｣ 怒声や殴打の音、祖母の悲鳴はその後も続いた。 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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私は二階の部屋で、ぎゅっと縮こまっていた。声も息も殺した。その場に出ていくか迷った。けれど行かなかった。学校に行かないことを詰られたくない。母が詰られるのも嫌だ。そして、暴力が怖かった。父のそれを思い出すから。 …私はそのまま母の帰りを待った。 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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夕方になり母が戻り、伯母たちは何か話して帰っていった。叩いたことは言わない。玄関が閉まるのを聞き届けて、私は下に降りた。母の顔を見ると涙が出た。 私は母に、昼間に起こったことを伝えた。助けに行かなかったことも話した。 母は私を抱き締め、 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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｢あんたがいてくれて良かったわ。ちゃんと聞いててくれて。これでおばちゃんたちがうちで何してるんかはっきりわかった。もう頼まへんから。｣ 叩かれても罵られても祖母は忘れてしまう。 今までもそうだったのかもしれない、けれど母にも確証がなかったのだ。 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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…今も後悔している、どうしてあの時助けに行かなかったのかと。 祖母はどんなに辛かっただろう…忘れてしまうとしても、その瞬間の痛みや恐怖を感じないはずない。 私の判断はあまりに幼く、未熟だった。 #認知症　#ダブルケア　#介護虐待

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ところで、祖母の認知症エピソードをいくつか。 時系列は遡り、1985年の夏頃、祖母は68歳、私は5歳。 その頃私は、祖母の病気のことをよく知らなかったのだと思う。 まだ祖母は、行きたいところに出掛け、自分で帰ってくることができた。 #認知症　#ダブルケア

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母が出掛けたある朝、祖母が私に訴えた。 ｢あんたのお父さんが、私のお財布を盗った。警察に行こう！｣ 私は驚き、しかし祖母の言うことを信じた。 大人の言うことは正しいと信じていたから。 父のことを信じていなかったから。 #認知症 #ダブルケア

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実はその数日前、父が私の貯金箱から小銭を勝手に拝借する｢事件｣があった。だから私は、ついに祖母のお金にも手を出したのかと愕然と受け止めたのだ。 そして、祖母に手を引かれ、駅前の交番で盗難を訴える祖母の横で、書類を書く警察官とのやり取りを茫然と聞いていた。 #認知症 #ダブルケア

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家に帰ると、帰宅していた母が出迎えた。 ｢留守番言うてたのに、あんたらどこ行ってたん！？｣ 警察に行った、と話すと母の顔色が変わった。 ｢一緒になって何やってんの‼あんたが止めなあかんやないの‼｣ 思いがけないものすごい叱責、私はたじろいで、泣いて謝った。 #認知症 #ダブルケア

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｢おばあちゃんは、何もわかれへんの‼そんな人の話を本気で聞いたらあかん‼｣ 祖母が普通の大人ではない、と知った初めての出来事だった。 和裁の上手な祖母、いつも遊んでくれる祖母が。 祖父の病気は身体を冒した。記憶を冒す病気があると、それまで私は知らなかった。 #認知症 #ダブルケア

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『認知症』という病気がある。 祖母はアルツハイマー病だった。 母に聞くと五十代半ばから様子がおかしかったそうだから、この時、発症から10年ほどは経っていた。 私は5歳、つまり私は健常者だった祖母を全く知らない。 私の成長とは逆に祖母の病気は進行していった。 #認知症 #ダブルケア

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『物盗られ妄想』という症状がある↓ 第8回　認知症の妄想｜認知症ねっと info.ninchisho.net/column/psychia… うちは母が実の娘、父が婿養子だったから、その矛先が父に向いたのだろう。 この症状、今でこそ周知のものになりつつあるが当時はどうだったか。 #認知症 #ダブルケア