デイドリーム・ネイション #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ?そう、その通り。つまり、自我の弱った野菜の世話なぞ、俺のジツひとつで容易というわけでな……閑職も閑職だよ。で?UNIX室ねえ?」デプレッサーは欠伸した。「東棟といい、何をやらかそうとしている?いや、答えられんだろう。答える気力はあるまい」「ア……アア……」24

2016-02-06 23:54:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時であった。パワリオワー!館内放送でロービット・ファンファーレ音が鳴り響いた。「何かやったか」デプレッサーは呟き、シャッターフスマに手をかけた。バチバチとスパークが起こり、顔をしかめさせた。「まったくハッカーというのは……」BRATATATA……KABOOOM!外からだ。25

2016-02-07 00:00:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だ」BRATATA!BRATATA!銃声。それも複数。KABOOM!再び爆発音。大きく揺れた。「警告!施設が不測の攻撃を受けています。ヤミヨ機能障害発生。係員は武装し至急東棟エントランスへ!」放送に対し、初めてデプレッサーは不快げに眉根を寄せた。「東だと」 26

2016-02-07 00:08:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「警告!武装集団東棟突入!係官にて対応中」「イヤーッ!」デプレッサーは素早くフスマのロックを破壊し、UNIX室に乗り込むと、LAN直結中のタネコを強制切断した。ZAP!火花が散り、「ンアーッ!」床に投げ出された。デプレッサーは物理ADMINキーを挿し込む。反応無し!「ヌウ!」27

2016-02-07 00:14:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「起きろ。ハッカー」デプレッサーは己のデプレッション・ジツの波動を解除し、タネコの頬を張った。タネコは焦点の合わぬ目でニンジャを見る。「アイエエエ……ニンジャ、ナンデ」「フザけた真似をしてくれた。システムリカバリをせよ」「……わかった」息も絶え絶えに答えた。「時間……かかる」28

2016-02-07 00:21:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デプレッサーは短絡を起こしてこのハッカーの首を折りかけた。だが踏みとどまった。「フゥー……執り行え。そうすれば貴様の命は保証する」タネコは震える手で再び直結した。たちまちモニタにはウサギと蛙が走り回るシークバーが表示された。「UNIX室に二人!」ニンジャは通信指示し、去った。29

2016-02-07 00:26:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その一部始終の間、クロマは生きる事を止めぬよう、床の上、死体たちの横で、ずっと己を強いていた。恐るべき虚無感と彼は戦わねばならなかった。彼はアイザワの教えに、キョートのあの破壊光景に縋っていた。心の王国に。背中の瓦礫を必死で押し退けたあの時と同様に、必死で己を鼓舞した。30

2016-02-07 00:33:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて4人分の足音が彼の耳元を通り過ぎ、UNIX室に入っていった。さきのニンジャに連絡を受けた武装係官だ。タネコを確保したのだ。システムリカバリを滞り無く行わせる為に。クロマは指先に力を感じた。あの時に似ていた。ほとんど同じだ。まだ命がある。力がある。そう言い聞かせた。 31

2016-02-07 00:36:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(タネコ=サン。スミマセン。絶対に助けます)クロマは這い始めた。UNIX室とは逆方向。階段の方向へ。徐々に、徐々に這う力が戻ってきた。今はタネコを助けられない。クロマの目に無念の涙が滲んだ。会って一時間経ったかどうかという相手なのに、その辛さは彼の胸を裂いた。 32

2016-02-07 00:39:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて彼は手をつき、どうにか起き上がった。デプレッサーによってわけもわからず倒された者達の冷たい死体を見下ろした。サツバツとした気持ちだった。彼は首を振った。警報音が鳴り続けていた。武装係官の鎮圧銃を手に取る。遠い銃声。ローニン・リーグはどこまでやれる。ニンジャを相手に。 33

2016-02-07 00:48:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階段を下り、映像室の廊下に差し掛かった。クロマは凍りつく。大勢倒れている。収容者達。アレをやられたのだ。デプレッサーが通った跡だ。まるで殺戮の道だ。チカマツは無事か?別の場所に移ったか?クロマは目を拭い、なおも進む。銃声の方向へ。東棟へ。点々と転がる収容者。容赦がない。34

2016-02-07 01:02:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「くそッ!」クロマは連絡通路を走り抜けた。東棟の廊下で彼は遂に、銃声の主を……ローニン・リーグの者達を目にした。なりはネオサイタマ市民と変わらない。ただ、腕に「浪人」と書かれた腕章をしている。クロマの胸に希望が湧いた、ことだろう。彼らとデプレッサーを一緒に見たのでなければ。35

2016-02-07 01:12:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ローニン達は手にした銃をデプレッサーに向けていた。デプレッサーがひと睨みすると、それをゆっくりと下ろした。クロマにはその感覚がわかる。ローニンの一人はなおニンジャを狙った。自我が摩耗していない人間ならば、ときに耐えられる……BLAM!ニンジャは壁を蹴って飛び、銃弾を回避した。36

2016-02-07 01:15:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」ローニンは胸を跳び蹴りに割られ、血を吐いて倒れた。「イヤーッ!」「グワーッ!」怯んだもう一人の胸をデプレッサーの拳が打ち抜いた。「イヤーッ!」「グワーッ!」更に一人の顎をデプレッサーの蹴りが打ち砕いた。クロマは膝から崩れた。デプレッサーが彼を見た。37

2016-02-07 01:18:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハ!生き永らえるも意外、死にに戻ってくるはなお意外!」デプレッサーは向き直り、クロマに向かって来た。クロマは床に手をついた。無駄だ。虚無がニューロンを満たす。それがわかる。クロマは顎を上げ、デプレッサーを見ようとする。廊下の先にキョートのジゴクを見ようとする。 38

2016-02-07 01:23:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デプレッサーは吟味するようにクロマを見る。「さて。俺がカイシャクするまで生きておれるか、非ニンジャの屑。暴力は好かぬのだが」鎮圧銃がガシャンと音を立てる。彼はデプレッサーの肩越しに、巨大な腕を持つ悪鬼めいたニンジャと、赤黒の死神を見ようとする。39

2016-02-07 01:30:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クロマは床についた手を拳に握った。怒りと悔しさが彼のニューロンを満たしていた。立て。せめてこの拳を。それでもやがて……巨大な腕を持つ悪鬼は、陽炎めいて滲んで消えた。クロマは呻いた。デプレッサーは悠々と近づく。途中で足を止める。肩越しにクロマの視線と同方向を見る。赤黒の死神を。40

2016-02-07 01:35:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな」デプレッサーは呻いた。クロマは立ち上がった。デプレッサーはもはや彼に構わず、陽炎に向かってカラテを構えた。「なぜ貴様が現れる!?」否。陽炎ではない。実体を持った赤黒のニンジャだ。センコめいたその眼には決断的な殺意の火が灯っていた。その火がデプレッサーを射た! 41

2016-02-07 01:41:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クロマは目をこすった。しかし赤黒の死神は消えない。決断的に廊下を歩き進んでくる。違う。あれは記憶ではないのだ。記憶と同じだが……それは実体を伴って……!デプレッサーは喚いた。「有り得ぬ!なぜ今貴様が!」「私がそう決めたからだ」死神は答えた。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」42

2016-02-07 01:47:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな」デプレッサーは呻いた。クロマは立ち上がった。デプレッサーはもはや彼に構わず、陽炎に向かってカラテを構えた。「なぜ貴様が現れる!?」否。陽炎ではない。実体を持った赤黒のニンジャだ。センコめいたその眼には決断的な殺意の火が灯っていた。その火がデプレッサーを射た! 41

2016-02-07 13:26:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クロマは目をこすった。しかし赤黒の死神は消えない。決断的に廊下を歩き進んでくる。違う。あれは記憶ではないのだ。記憶と同じだが……それは実体を伴って……!デプレッサーは喚いた。「有り得ぬ!なぜ今貴様が!」「私がそう決めたからだ」死神は答えた。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」 42

2016-02-07 13:27:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハ……ハハハハ」デプレッサーはやがて笑い出した。「成る程、ではいよいよ貴様は、惨めったらしいドブネズミめいてガタガタ震え隠れ暮らす事にも耐えられず、ヤバレカバレのバンザイ行為に出たか。哀れ!ブザマ!貴様の運命は決しておる。死だ!」「その運命に呑まれるのはオヌシが先のようだ」43

2016-02-07 13:33:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」デプレッサーはスリケンを投げつけた。ニンジャスレイヤーは指先で飛来スリケンを摘み取り、ねじり潰した。「ニンジャ。殺すべし」「近寄るな!負け犬め!」デプレッサーはもう一方の手をかざし、後ずさった。「デプレッション・ジツ!イヤーッ!」効果はない! 44

2016-02-07 13:38:34