- canjani8kanjani
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51 もっとちゃんと出会いたかった。 お金とか体とか…こんな風じゃなく。 でもね。 「…いつものとこでええ?」 そう、これが現実。 今まで私がしてきたことの結果。 『…うん』 これからすることを思い浮かべながら、子供みたいに素直に頷いてた。
2016-02-09 19:48:5752 部屋に入って、上着脱いで、ドサッと椅子に座って息を吐く。 どんな風に触れるのか、どんな声で囁くのか、どんな風に触れるのか、どんな体しててどんな感触で、どうされるのが好きか、どこが感じるのか、形だって大きさだって味だって知ってる。 何度も繰り返した行為。
2016-02-09 19:49:4153 今からするのはその延長線上。 そんなこと思いながら、彼の動きを立ったままずっと見てた。 「…こっち来ーへんの?」 チラッてこっちを見る視線が熱を帯びているようで微かに体の奥が熱くなる。 『っ…、し、シャワー…』 「んん?」 『シャワー、浴びてきていい?』
2016-02-09 19:49:5354 「…まだ上着も脱いでへんのに?」 『たくさん歩いて、汗かいたから…』 同じ空間にいるのが息苦しくて思わず口から出たけど、それって自分から服を脱ぐって言うことで。 はっきり言われてもないのに私が求めてるみたいで恥ずかしくて顔が熱くなった。 沈黙のまま絡まる視線。
2016-02-09 19:50:0455 「…ふ、ええよ。行ってき」 顔が反らされて緊張が緩む。 逃げるようにバスルームに飛び込んだ。 わ…顔真っ赤だ…。 鏡に映った自分の顔を見て更に赤くなる。 服を脱いで、端っこに畳んで置いて、髪の毛を結んで火照った体を冷やすように少し冷たいお湯を浴びた。
2016-02-09 19:50:1456 ほんとにするのかな…これから…。 痛い…よね? アレがここに入るんでしょ…? いつも口に含んでる、…、を思い浮かべてソコに触れてみる。 入るの?本当に? ちょっとだけ指を入れてみて、ピクンって疼いて慌てて抜いた。 何してんの私…。 シャワーの温度を上げる。
2016-02-09 19:50:2557 本当にいいの、私? 勢いよくシャワーを浴びながら自問自答してみる。 きっと私が本気で拒んだらあの人は引いてくれる、そんな気がする。 今更そんなこと出来る立場じゃないってわかってる。 それでもきっと。 渋谷さんに抱かれる、その行為自体は…嫌じゃない。
2016-02-09 19:50:4158 ただ、本当にこんな形でいいの? 考えたってもう遅い。 全身泡立てて洗いながら、昨日ちゃんと準備したはずの体中を色々チェックしてみる。 抱かれる準備。 何か…ちょっとむず痒い。 ガチャッ 『きゃっ!?』 突然バスルームの扉が開く音がして飛び上がった。
2016-02-09 19:50:5559 え、嘘!?こんなとこで!?さすがにそれは嫌! 思わず身を隠して耳を澄ます。 カーテンの向こう、何か音がしてすぐに扉が閉まって、ホッと息を吐いた。 何だったの一体…用事にしたってせめて一声…。 まあ長風呂しちゃって心配して入ってきたのかもしれないけど…。 …も、出よ。
2016-02-09 19:51:0860 どっと疲れた気がしてカーテンを開ける。 体を拭きながら気付いた。 置いてあった服がなくなってて、代わりにバススローブが置いてある。 さっきこれ置きに来たの? 逃がさないってこと、か…。 それを着て鏡を見る。 顔…大丈夫、だよね。 ニコッて笑ってみる。 引き攣った笑顔。
2016-02-09 19:51:1961 大きく深呼吸して、恐る恐るドアを開けた。 …静かだ。 『…渋谷さん?』 声かけても返事はない。 置いてあったスリッパを履いて部屋を見回すと。 『…えぇ?』 嘘…寝てる…。 椅子に凭れて、少し眉間に皺寄せて眠る姿。 テーブルの上にはビールの缶が。
2016-02-09 19:51:3062 うそぉ…あんなに緊張して出てきたのに…。 何か拍子抜けして向かいに座って、静かに寝息を立てるその顔をじっと見つめた。 こんな風に寝顔見るの初めてだ。 綺麗な顔。 こんなに近くで見てもそう思う。 きっとモテるんだろうな…ほんと、何で私なんて相手にしてるんだろ。
2016-02-09 19:51:5563 目の下に隈が出来てる。 ちょっとしんどそう?疲れてる? そういえば前に忙しいって言ってたな…全然連絡も来なかったし。 理由くらい言ってくれたらいいのに。 ずっとほったらかしにしてたくせにいきなり連絡してくるし、こうやって一緒にいるのに寝てるなんて…。
2016-02-09 19:52:0764 ちょっと腹立って、眉間の皺を突っついてみた。 「…んん?」 その皺が深くなるから、ぐいーって伸ばしてみる。 「…やめろって」 手取られて、目がパチッて開いた。 『…っ』 思わぬ至近距離で体が硬直する。 そのままチュッて小さくキスされて思わず飛び退いた。
2016-02-09 19:52:2565 「んあー…寝てた?」 んーって伸びをする姿はまるで猫みたい。 「顔赤いで」 ニヤニヤしながらこっち見た。 『…っ!』 からかわれてる? オッサンのくせに妙に可愛い顔して笑う。 『…疲れてるんなら家で寝てたらよかったのに』 「前から約束してたやん」
2016-02-09 19:52:3666 『…ずっとほっといたくせに』 「あん?」 『何してたの?』 「ん?…ん、まぁ…」 『何よ』 「や、でっかい仕事入って忙しかっただけやで。ほんでまぁ…」 『それから何よ』 「ええやん、別に」 『何?』 「…今日空けよう思て、まあ…数日徹夜やな。せやからほら、髪も伸びっぱや」
2016-02-09 19:52:4967 『…何で、そんな…』 「誕生日だからやん」 『だからって…』 どうしてそこまで…。 胸がぎゅーってする。 「何やお前寂しかったん?」 『ッ!そんなわけないでしょ、バカ!』 思わず叫んだ罵声を笑顔で受け止めて立ち上がる。 「あ、せや」 『え?』 「これ」
2016-02-09 19:53:0368 差し出された封筒。 『…え?』 「前払いしとくわ」 は…? 「足らんかったら言うて」 それを見つめたまま動かない私の目の前にポンと置いた。 「俺もシャワー」 そう言って、バスルームに入って行った。 無造作に放られた分厚い封筒。
2016-02-09 19:53:1669 中身を見なくたって今まで見たことない金額が入ってるってわかる。 10万とか20万とか、そういう数字じゃない。 今まで散々私に散在してきて、今日だって一日空けるために徹夜してあんなに疲れた顔して…それにこの金額…前払いって…しかも足らんかったら言えって…何、考えてるの…?
2016-02-09 19:53:2970 処女の値段? それとも手切れ金? わけわかんなくて頭の中がぐるぐる回る。 呆然と封筒を見たまま、動くことも出来ずただ立ち尽くしていた
2016-02-09 19:53:4171 そのままどれくらいの時間が過ぎてたんだろう。 『ひゃっ!』 ポンって肩に手を置かれて飛び上がった。 そのまま後ろからギュッって抱きしめられて思わず息を止める。 「逃げへんかったんや」 『…ぇ?』 髪の毛のゴム取って、肩に顔埋めて、痛いくらい強く。
2016-02-09 19:54:3472 「何で逃げへんかったん?金もあるしそこに服もあったやろ?」 何でって…え、…何で? わけわかんない、わかんないよ…。 胸がドキドキする。 苦しい。助けて。 「折角ゆっくり入って来たったのに…」 『え、え?』 ふわって抱き上げられてベッドの上。 『ぁ、待って…』
2016-02-09 19:54:4573 「待たへん」 制止しようとした手を取ってそのまま抑えつけられて、言葉はキスに飲み込まれる。 「出てきておらんかったらもう諦めよう思っとったのに…もうアカン、無理」 『ぇ、な、に?』 絶え間なく降って来るキスに翻弄されて彼の言葉がよく聞こえない。
2016-02-09 19:54:5674 「お前は俺のんや…村子…」 『渋谷さ…』 何、言って…? 「好きや、村子…」 『…え?』 今、何て? 「好きやっ…!」 小さく叫んで、深く唇を奪われる。 絡まる舌。 呼吸を奪われて喘ぎながら逃げると何処までも追いかけてくる熱い吐息。
2016-02-09 19:55:0775 次第にぼんやりと霞む頭で言葉の意味を考えてた。 何度も何度もその声を思い出して、噛み締めて…それから涙が溢れた。 「村子?」 心配そうに覗き込んでくる瞳。 短い髪の毛からポタポタ滴が落ちて、涙と一緒に流れ落ちる。 信じられない。 こんなの…夢みたい。
2016-02-09 19:55:17