四肢を切断されてただ飼われるだけの生活に慣れていく眼鏡男子

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レミアルミ @remi_arumi

「おまえはおれの手足をきったりするくせに、そのあとはなにもしてきやしない。挑発しても暴力もふるわず犯したりもせず、ただかわいいかわいいと愛でるだけ。それでいておれの要望はきこうともしない」 「うん」 「意味のわからんやつだ」 「きみは本当にかわいいねえ」 「またそんなことを言う」

2016-02-17 03:49:26
レミアルミ @remi_arumi

「わたしはきみのことがだいすきだけれども、きみはわたしのこと、少しはすきになってくれたかい」 「いいや、まったく。おまえのことがすきだなんて手足が戻ってくるとしても言うものか」 「それはチャンスを捨ててまでわたしとずっと一緒にいてくれるということだね!」 「そういうことじゃない」

2016-02-17 07:43:07

レミアルミ @remi_arumi

「ほうら、見て、星がきれいだよ」 「いまここでおれが大声を出したら、おまえは一瞬でお縄になるんだろうな」 「わたしがいま少しきみの背中を押せば、きみはあっけなく地面におちて死んでしまうのだろうね」 「そのあとおまえは後を追いかけてくるのだろう」 「もちろん

2016-02-17 08:25:50

レミアルミ @remi_arumi

「なあ、なあ、退屈なんだ、本でも読み聞かせてくれ」 「いいよ、どんな本にしようか」 「そうだな、とびきり卑猥な本にしてくれ」 「困ったな、本棚にない。けれどきみの頼みだ、今から買ってこよう」 「冗談だ、やめてくれ」 「わたしはきみが冗談を言うようになったことがとても嬉しいよ」

2016-02-17 09:31:40
レミアルミ @remi_arumi

「おまえはひとにそんなことしようともしないのに、読み聞かせるのは平気でしようとするのだな」 「だっていまのはきみの頼みだし、わたしがしようとしてもきみはいやがるだろう、きみのいやがることはしたくない」 「ひとの手足をきりおとして閉じこめているくせに、何をいまさら言っているんだ」

2016-02-17 09:34:58
レミアルミ @remi_arumi

「要望はきかない、殺してくれさえしない、風呂の時に身体を触ってくる」 「わたしが触れていないと、きみは沈んで溺れ死んでしまうよ」 「むしろなんで一緒に入るんだ」 「だって、好きなひととのお風呂は幸せだろう」 「おれはおまえのことが、きらいだ」 「知ってるよ」

2016-02-17 10:10:43
レミアルミ @remi_arumi

「きみの幸せはここにないかもしれないけれど、わたしの幸せはこの場所にしかないんだ」 「……おまえは、頭がおかしい」 「何度でも言えばいいさ、きみの言葉ならどんなものでも嬉しいよ」 「気狂いの、犯罪者め」 「そうだ、きみを手にいれるために罪をおかした」

2016-02-17 11:01:28

 
 

レミアルミ @remi_arumi

「悲鳴にも似た甘い声を……ね、きみ、興奮する?」 「おまえの声が淡々としすぎて、全く興奮できない」 「きみ以外の性の営みなんて、どうでもいいからねえ。感情移入なんてできやしないよ。きみが読み上げてくれるのなら、少しは楽しめるかもしれないけど」 「おまえが楽しんでどうする」

2016-05-12 04:22:13

レミアルミ @remi_arumi

「きみの肉はおいしかったよ」 「おれはそんな感想、一生聞きたくなかった」 「きみもすこし、食べたのに」 「一時期ハンバーグとカレーばかり食べさせられたのは、そういうことか」 「覚えてくれているんだね」 「覚えているさ、ハンバーグはともかく、カレーは変な肉だとは思った」

2016-02-17 11:38:56

レミアルミ @remi_arumi

「交番で、きみの写真を見た」 「よくもまあ、堂々と行けるものだな」 「わたしの知らない写真だった。欲しかったなあ。……きみは、ちゃんと捜してくれる人がいるのだね」 「おまえは、居ないのか」 「わたしはずっと独りだったからね。親の顔さえ、知りはしないよ」 「……そうか」

2016-02-17 12:48:24
レミアルミ @remi_arumi

「同情したかい」 「しないな」 「そう言うと思った」 「やっていいことと、悪いことがある」 「わたしがやっているのは、悪いことだね」 「よくわかってるじゃないか」 「けれど、けれどもね、悪いことでも止められないことっていうものが、あるんだ……」

2016-02-17 12:56:15
レミアルミ @remi_arumi

「おれはおまえのこと、何にも知らないな。未だに名前すらわからない」 「教えてあげようか」 「おまえはおれのことを名前で呼んでくれないから、いい」 「呼んであげようか」 「それもそれで、いやだ」 「じゃあ、ずっときみでいいね」 「ああ、おまえも、おまえだ」

2016-02-17 13:06:18

レミアルミ @remi_arumi

「(……?)」 「(……泣いている)」 「(……こいつも、寝ながら泣くことがあるのか)」 「(……泣きたいのは間違いなくおれの方なのに、なんてやつだ)」 「(……抱く力が、いつもより強い……)」 「(……痛い……)」

2016-02-17 14:09:51
レミアルミ @remi_arumi

「……なあ、起きろ、起きろよ、痛いんだ、もう少し力を緩めてくれ」 「……あ、あ、……ああ、よかった、ちゃんといる……」 「おまえも、泣くくらいの悪夢を見るんだな」 「見るさ、見るとも……君が忽然といなくなる夢だった……」 「……」

2016-02-17 14:13:04
レミアルミ @remi_arumi

「本当に突然、痕跡もなくいなくなるものだから、きみが生きているのか死んでいるのかの区別がつかなくて、わたしは死んでいいのか悪いのかわからないからただ泣くしかなかったんだ、夢で良かった、起きた時きみがそばにいてくれて本当によかった」 「……おまえは、……」

2016-02-17 14:20:03
レミアルミ @remi_arumi

「どうせ、手足がないからどこにも行きやしないのに」 「わたしが目を離した隙に誰かにさらわれたとか、可能性はいくらでもある。きみはかわいいし、簡単に捕まってしまうから、心配なんだ……」 「……そんな物好き、世の中におまえしかいないだろう」

2016-02-17 14:30:30

 

レミアルミ @remi_arumi

「最近寝ているときによく思うんだが、おまえはおれのことを湯たんぽか何かとかんちがいしているんじゃあないか」 「たしかに今の時期のきみは大きめの湯たんぽに思えなくもないね」 「否定はしないのか」 「けどわたしはきみのこと、こいびとだと思っているよ」 「……湯たんぽの方がまだマシだ」

2016-02-17 19:35:08

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