ゴリラ爆発#1 ゴリラのワクワク感◆3
_ザリガニ騎士団の朝は早い。今日は特別に早い。なぜなら、暴走したゴリラの置物が走り回り、そこらじゅうでビームを発射していたからだ。 「てめーゆっくり寝させろ!」 「捕まえるんだ!」 「ダメだ、速い!」 夜も明けないうちから大捕り物。 21
2016-03-05 17:12:56_毎朝こうだ。走り回って、ビーム乱射。浴びた騎士は痺れて起こされる。気の済むまで嫌がらせした後、ゴリラは静かになる。 破壊しようとしても無駄だった。捨てても、歩いて追いかけてくる。どうやら所有者と認められてしまったらしい。 22
2016-03-05 17:16:28「全く、ゴミだと分かっていて売りつけたんだ。悪い店主だよ」 不健康そうな技師は、寝不足でいつもより顔色が青い。気弱なバルメルは恐る恐る言う。 「あのう……ゴミではないんです……凄い商品なんです、きっと……」 「信じているのかい、バルメル。君は騙されやすいね」 23
2016-03-05 17:21:09_枕を抱えて、三角の帽子をかぶった金髭のエリート騎士が彼らの元へやってきた。 「しょうがない。神に捧げてしまおう。それなら破壊不可能でも追放できる」 野営地の中心に簡易祭壇を作り、全員が荒野に腰を下ろして朝日を浴びつつ事の次第を見守る。 24
2016-03-05 17:27:55_神々は捧げものを祭壇から受け付けており、それはどんなゴミでも……冒涜的だったり、汚物だったり以外なら大抵受け入れてくれる。それは神々の力となり、お返しに何かを貰える時もある。 「こっちはゴミを処分できる。おまけに何か貰える。win-winだ」 「意味が違くね!?」 25
2016-03-05 17:31:59_今回は戦いの神ルーンノアに祈ることにした。この男神とのコンタクトは、過去何回か行っており、今回も頼むことにする。 「よぉし、祭壇にゴリラを固定したな!」 「早くしてくれぇ、もう持たねぇ! こいつ力が強すぎる!」 祭壇が光り、神からのコメント。 「うーん、イラネ」 26
2016-03-05 17:38:45_受け取りを拒否されて途方に暮れるザリガニ騎士団であったが、一人真面目に対処法を考えている者がいた。 夜、騎士団の野営地の一角、幌馬車が止まっている。この中にはたくさんの本や書類が詰まっている。騎士団の資料室だ。 女騎士は騎士団の取引先リストを見ていた。 27
2016-03-05 17:45:12_バルメルは一人帳簿を見ている彼女の元を訪ねた。 「あのぅ……どうしたんでしょうか」 「困ったときはコネに頼るに限る。ここなんかどうだ? ここから南に火焔水鏡の街がある。知っているだろう、大きな湖のあるリゾート地だ」 「リゾート地?」 28
2016-03-05 17:51:14「そうだ、そこに大きな会社がある。グランガダル廃棄物処理社の大きな支店がな。設備も凄いぞ。大抵のものは破壊してくれる」 「えっ、すごい……じゃあ、そこでゴリラを破壊してもらいましょう……」 バルメルはとうとう諦めた。正直、これほどの迷惑になるとは思っていなかった。 29
2016-03-05 17:58:56_バルメルは酷く落ち込んで、力なく座った。 「僕はみんなが喜ぶと……いいものを見つけたって、言ってくれることを期待したのに、こんなことになっちゃった……本当に、馬鹿だよ」 「いいんじゃない? バカンスの口実にはなったしさ!」 長身の女騎士は、そう笑ってくれた。 30
2016-03-05 18:03:39【用語解説】 【猟兵狂戦士の《ルーンノア》】 赤髪でルビーの目をした狂戦士の男神。勇ましい青年、または赤毛の狼の姿で顕現する。魔法使いの殺害を至上の喜びとし、魔法使いを殺した信者に喜んで褒美を与える。魔法文明の支配する灰土地域では、彼は自分の主張を曲げて戦いの神として居座っている
2016-03-05 18:09:19