イクストリーム・フライト・イン・ネオサイタマ 後半

SUMIYU(@SUMIYU1987)=サンのテキストカラテ 前半はこちら(http://togetter.com/li/946982)
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SUMIYU @SUMIYU1987

バッ 凧が展開 ぶわっっっっっっっ ヘルカイトは闇に消えた。極限のフライトがはじまる。 拾七

2016-03-07 17:36:39
SUMIYU @SUMIYU1987

ごぉぉぉぉっっっっ 右左後!!右上下前右下上左!右左後右!上下前右下上左!!! 目隠しをされ、巨大バイオハムスターの回すマニ車に縛り付けられたまま地下鉄にくくり付けられ、トンネルを疾走するかのようだ!何も見えない! 黒い雲、ビル群の照明、飛来物、全てがかき混ざる! 拾八

2016-03-07 17:40:55
SUMIYU @SUMIYU1987

操縦がまったくきかない。ヘルカイトと特製凧は暴風に弄ばれるまま、トコロザワ・ピラーから東へ吹き飛んでいった。上昇と下降を脈絡なく繰り返し、狂ったように回転する。(ヌウウウゥ!)彼は唸るが、それは声にならない。なんとか姿勢制御を!しかし凧の操縦レバーを握っているのがやっとだ! 拾九

2016-03-07 17:46:37
SUMIYU @SUMIYU1987

ひゅぅんっっっ 「グワーッ」灰色の何かが飛来し、脇腹を痛打した!もぎ取られた自動車のパーツか何かであろうか。彼は吐き気がするほどの内臓への圧迫を感じたが、耐えた。常人であれば気を失っていただろう。(一度不時着を!)彼は前方の巨大な銀行ビルを確認した。 弐拾

2016-03-07 17:52:56
SUMIYU @SUMIYU1987

突風に押されるまま姿勢制御を試み、無理やりに下降する。それはヘリポートを備えた広い屋上であった。屋上庭園を彩るバイオ松は一本残らず風によって根元からもぎ取られて、行方すら知れない。屋上まであと20m、5m、 ごあっっ 上から巨人の手で押さえつけるような風が吹いた。 弐拾壱

2016-03-07 17:56:18
SUMIYU @SUMIYU1987

DOM!!! ヘルカイトは屋上の硬いコンクリートにしたたか打ち付けられた。胸を強打し、頭が真っ白になる。「グワ...」非常に乱暴なかたちであったが、なんとか着陸することが... ...できない!そのまま弱まる気配もない突風によって屋上を高速で滑り続ける!「ウオオオオ!」 弐拾弐

2016-03-07 18:01:14
SUMIYU @SUMIYU1987

屋上を凄まじいスピードで横断すると、ビルの東端へ!そこには落下防止用の手摺が!彼は身をこわばらせガードの姿勢を取ると、風に引っ張られるまま手摺に体当たりして止ま... ...らない!掴んだ手摺がそのままもげる!「グワーッ!外れた手摺を持ったまま屋上を再離陸させられる! 弐拾参

2016-03-07 18:06:21
SUMIYU @SUMIYU1987

再び荒れ狂う獣のような空に放り出されたヘルカイト!彼の命運もここまでか。否!見よ!彼は右手で鉄製の手摺を抱いたまま、その重量によってなんとかバランスを取り姿勢制御に成功していた!ゴウランガ!なんたるニンジャ判断力か! 弐拾四

2016-03-07 18:10:27
SUMIYU @SUMIYU1987

(それにしても少々甘く見すぎていた)彼は己の自己過信を自戒しつつも、再び冷静さを取り戻し、目に闘志をみなぎらせた。すでに風は南風に変わり、相も変わらず獰猛な叫びをあげている。彼は左手で操縦レバーを操り、可能な範囲で風に乗ろうと試みる。悪くない。(よく作ったぜこりゃ) 弐拾伍

2016-03-07 18:15:08
SUMIYU @SUMIYU1987

南風が続けば目的地のプランテーション施設まではすぐだ。たったの30km、朝飯前。だがそううまく事は運ばなかった。「ディストリビューターが希望通り納品してくれることは珍しい」ミヤモト・マサシのコトワザだ。まさにその通り、直後に北からの突風がヘルカイトをうっちゃる。 弐拾六

2016-03-07 18:22:08
SUMIYU @SUMIYU1987

南に、西に、東に、南に、北に。まるで巨人神族かブッダの張り手をくらい続けるかのような感覚だ。しかし先刻とうって変わって、なんとかして飛んでいるし、ある程度飛来物を避けることもできるようになった。バランスは取れている。あとはいかに都合の良い風を逃さないか。腕の見せ所だ。 弐拾七

2016-03-07 18:26:23
SUMIYU @SUMIYU1987

風に翻弄されながら彼は下界を見下ろした。都市は混乱の極みにあった。事故が多発、交通は封鎖され、暴風の唸りの中に織り込まれるかすかなサイレン音も聞こえる。横転したトレーラー。レスキュー隊もまともに機能していないだろう。(俺は何をやっている)ふいに自嘲の笑いが漏れる。 弐拾八

2016-03-07 18:31:25
SUMIYU @SUMIYU1987

びゅわーわー びゅわわーわ ひょうぅぅーーー 「ムッハッハッハ!サケを持てい!」ラオモト=カンは黄金メンポの下で哄笑し、オーガニック・トロ・スシを口に放り込んだ。向かい合った、黄土色の装束を着た若いニンジャが冷や汗を流しながらドゲザする。彼の顔からは血の気が引いていた。 参拾

2016-03-07 18:39:09
SUMIYU @SUMIYU1987

「お、恐れながら、この暴風天候でサケ工場からの納品が滞っており...」若いニンジャは死を覚悟した。「ヌウウ~!?」眉間に深い皺が刻まれ、ラオモトが立ち上がる。圧倒的オーラ!側らのオイランたちが次々に失神!そして拳が飛ぶ!吹き飛ぶ黄土色ニンジャ!フスマを突き破って隣室へ! 参拾壱

2016-03-07 18:43:48
SUMIYU @SUMIYU1987

ナムサン!若いニンジャは吐血即失神。彼の下顎はサイバネ手術が必要になるだろう。「バカ者どもが!何が納品か!誰か行って運んで参れ!」ラオモトの凄まじい怒りだ。同席する二人のニンジャも顔を見合わせた。しかし彼らは委縮していない。相当のカラテ力量が伺える。「ラオモト=サン」 参拾弐

2016-03-07 18:49:14
SUMIYU @SUMIYU1987

恐ろしく大柄なニンジャが答えた。「恐れながら、実際かつてない強風被害に道路は封鎖され、そこら中に事故車両が転がっている模様です。さすがに...」ラオモトが睨む。無言だが凄まじい圧力。アルマーニの高級スーツの胸が膨らみ、はち切れんばかりになる。大柄のニンジャは息をのんだ。 参拾参

2016-03-07 18:53:04
SUMIYU @SUMIYU1987

すかさず、脇に座る小柄なニンジャが切り出す。「ヘルカイト=サンに行かせてはどうでしょう。彼ほどの使い手ならば飛んで行けるのでは...」そう言うと彼はメンポの奥で歪んだ笑みを浮かべた。ラオモトの顔色が変わる。少し思案すると彼は満足げにうなずいた。 参拾四

2016-03-07 19:10:21
SUMIYU @SUMIYU1987

BOOOOOM... 都市迷彩塗装を施された大型武装ツェッペリンがコントロールを失い、炎上しながら墜落してくる。黒煙の尾を風雨にかき消されつつ不気味にのたうつウルトラ質量は、この最悪の天候下での飛行バランスを体得しつつあるヘルカイトに容赦なく襲いかかる! 参拾六

2016-03-07 20:27:38
SUMIYU @SUMIYU1987

正面衝突すれば即死!アブナイ!両者の距離わずかタタミ4枚! (スラスターだ!)Booow! ヘルカイトの凧が飛び跳ね瞬間回避!キューシニッショ! 直後、真横をかすめるように墜落するツェッペリン!「「「グワーッ!」」」放り出されたクローンヤクザ乗組員がゴミのように落下! 参拾七

2016-03-07 20:32:27
SUMIYU @SUMIYU1987

(実際危なかった)背筋の凍るような感覚はあったが、彼は驚くほど平常心を保っていた。彼はツェッペリンがそのまま照明の落ちたショッピングモールに轟音と共に崩れ落ちる様を見守ると、また顔を上げ、ゴーグルの奥の目を光らせた。風雨は強くなっている。本来なら方舟に入ってる時分だろう。 参拾八

2016-03-07 20:37:48
SUMIYU @SUMIYU1987

この自殺に等しい任務に自分を駆り出した者がいる。あからさまな罠だ。おおかた想像はつくが...否、それは考えるに値しないことだ。ラオモト=サンにサケを届ける。それだけだ。彼は再び強く操縦レバーを握る。スラスターも快調だ。彼の趣味ではないが、今日だけは何よりもありがたい代物。 参拾九

2016-03-07 20:41:47
SUMIYU @SUMIYU1987

全方位からの容赦ない突風に翻弄されつつも、彼は巧みに風を捕まえて確実に目標に近づいていた。すでに15kmほどは北に飛んだだろうか。 にわかに前方の分厚い黒雲を縫うようにして高速飛来する物体の影を、彼の鋭敏なニンジャ視力がとらえた。またさまようあわれなカンバンの類であろうか。 四拾

2016-03-07 20:44:13
SUMIYU @SUMIYU1987

徐々に大きくなる機影。そう、機影だ。このたけり狂う獣のような空を飛行機で飛ぶ者がいるというのか!飛行機は巧みなアクロバット飛行を決めつつ暴風の致命的打撃をかわし、ヘルカイトの元にまっすぐ飛んでくる。とんでもないパイロット!狂人の類か!彼は目を疑った。 四拾壱

2016-03-07 20:48:53