真・マグロ ~地球最後の日~ #1

大トロ回
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2016-03-09 22:04:02
劉度 @arther456

フィリピン、ミンドロ島。かつては深海棲艦の一大拠点であったが、日本海軍の反抗によりコロニーは壊滅した。しかし長引く戦争によりフィリピン人の帰還も進まず、現在は無人島になっている。今ここに、一匹の深海棲艦がいる。巨大なマグロを従えた潜水棲姫だ。 1

2016-03-09 22:05:02
劉度 @arther456

彼女の名前はツナ。米軍潜水艦ツナの艦霊を宿し、マグロ・ニンジャクランのソウルを宿したニンジャでもある。西方海域で知性ミナミマグロたちと共に通商破壊活動を行っていたが、日本海軍に倒されミンドロ島に逃げてきたのだ。以来、艦娘たちから隠れながら、反撃の時を粛々と窺っていた。 2

2016-03-09 22:08:19
劉度 @arther456

そして遂にその時が訪れた。空白地帯のミンドロ島には様々な敗残兵が流れ込んできた。南西諸島の深海棲艦、赤道付近から追い出された知性キハダマグロ、豪州のイルカ、北極のペンギン、宇宙人。艦娘という共通の敵を得て、本来なら出会うことすらない異種族の連合軍が誕生した。 3

2016-03-09 22:11:21
劉度 @arther456

「これより我々は、日本海軍を南西諸島より駆逐する!」ツナが居並ぶ連合軍に向かって呼びかける。名目上の総大将は、最大の知性マグロ軍団を持つツナだ。「まずは南から日本に向かうドイツ艦隊を攻撃、日本との合流を断念させる!それを狼煙として、南西諸島の鎮守府を攻撃する!」 4

2016-03-09 22:14:38
劉度 @arther456

「総員、奮戦を心がけよ!我々が住むべき海は、我々の手で取り返すのだ!」「ウォーッ!」「ゴボーッ!」「キューン!」「グエーッ!」深海棲艦が、マグロが、イルカが、ペンギンが、"虐げられた者"という正義の下に雄叫びを上げる。士気はこの上なく高い。 5

2016-03-09 22:18:00
劉度 @arther456

「いやはや、盛り上がっておりますな」出陣の最中、老マグロが声をかけてきた。「ドーモ、ゲスナガ=サン。キハダマグロの助力、感謝する」ツナはオジギした。アイサツは大事だ。古事記にもそう書かれている。例え得体の知れない宗教を掲げる教祖が相手でも、礼儀を忘れてはいけない。 6

2016-03-09 22:21:08
劉度 @arther456

「我々は神のお導きに従ったまで。この聖戦が果たされれば、神のマグロが降臨し、我らの敵を根絶やしにしてくれることでしょう」「そう」滔々と語るゲスナガの言葉を、ツナは信用していない。彼女が信用しているのは、ゲスナガたちの持つ"武力"だ。 7

2016-03-09 22:24:16
劉度 @arther456

「ドイツの戦艦はどうなった?」「インドネシアまで逃げ帰ったようですよ」「機動力が無いのが欠点だな」ツナとゲスナガは目の前に聳え立つ島を見上げる。これこそが彼女たちの切り札、もう一つのミンドロ島。ゲスナガと宇宙人が協力してスクラップから造りあげた、無数の砲台を持つ機動要塞だ。 8

2016-03-09 22:27:26
劉度 @arther456

宇宙人によって作られたこの島は、オートロ島と呼ばれている。いつの日か、深海棲艦やマグロが暮らす島。ツナはそう考えていた。「慌てることはありません。神が目覚めた暁には、人類に逃げ場などなくなるのですから」ゲスナガの言葉に応えるように、オートロ島が不気味に揺れた。 9

2016-03-09 22:30:35
劉度 @arther456

【真・マグロ ~地球最後の日~】

2016-03-09 22:32:30
劉度 @arther456

江東区築地市場。かつては日本最大の鮮魚卸売市場であった。だが、深海棲艦との戦争から10年以上経った今は誰もいない。「寂しいねえ……」「そうですねえ……」廃墟となった市場に呆然と立つ二人。米軍第70任務部隊レイド・クルーソー中将と、イタリア人の艦娘、ザラである。 10

2016-03-09 22:35:03
劉度 @arther456

憧れの日本を観光していた二人だったが、現実の日本は大きく様変わりしていた。秋葉原はオタクの町ではなかったし、上野は全く電車が走っていない。魚のセリが行われていると聞いた築地市場もご覧の有様だ。深海棲艦の東京爆撃、通称『D空襲』は日本の中核に深い傷跡を残していた。 11

2016-03-09 22:39:19
劉度 @arther456

「それにしたって少しは残っててもいいだろー」クルーソーは愚痴りながら瓦礫を蹴飛ばす。すると、道の向こう側に漁師らしき人影が目に入った。「お、誰かいるぞ」「本当だ!」二人が近づいてみると、日焼けした漁師がマグロを埋めているところだった。「あのー、何してるんですか?」 12

2016-03-09 22:42:32
劉度 @arther456

「見りゃ分かんだろ。マグロを埋めてるんだよ」「何それ、勿体ない」「食えねえんだよ、このマグロは」「ああ、なるほど」このマグロは恐らく、知性マグロなのだろう。知性マグロの体内には重金属が蓄積されており、人体に有毒なのだ。そもそも喋るマグロなど、気味が悪くて食べる気が起きない。 13

2016-03-09 22:45:56
劉度 @arther456

不意に、クルーソーの電話が鳴った。「もしもし?」《司令、ご報告したいことが》「どうした?」《『蔵王』が緊急出撃しました》「何?」『蔵王』はクルーソーの艦隊とともに、近々観艦式を行う予定の船だ。この時期に出撃するなどあり得ない。「ドイツ艦隊に何かあったか?」《かもしれません》 14

2016-03-09 22:49:08
劉度 @arther456

「ザラちゃん、すまない。東京観光は一旦終わりだ」「何かあったんですか?」「ああ。船に戻らなくちゃいけねえ」「ううー、残念ですー。お台場のガンダム、まだ見てないのにー」「ああ。司令は辛いよ……」二人は足早にその場を後にする。そちらには目もくれず、漁師はマグロを埋め続けていた。 15

2016-03-09 22:52:13
劉度 @arther456

「電ちゃん。その話、本当なの?」「なのです!」南西諸島海域に出撃した『蔵王』艦内では、偵察部隊が持ち帰った情報を元に、作戦会議が行われていた。先行した電たちの報告は、提督には信じられないものだった。「聞き違いがあるかもしれないから、一回確認するよ?」 17

2016-03-09 22:55:33
劉度 @arther456

「フィリピン沖合に沈没船を基に作られた機動要塞が出現。それに潜水棲姫、マグロ、イルカ、ペンギンが乗り込んでいて、しかも海域の近くに飛行場姫に戻った姫ちゃんがいて、ほっぽちゃんのっぽい艦載機も周りに飛んでると」「その通りなのです」あんまりな状況に、提督は無言で頭を抱えた。 18

2016-03-09 22:58:45
劉度 @arther456

事の発端はフィリピン方面からやってくるドイツ海軍からの通報だった。敵集団に進路を妨害されていると聞き、提督が援護に来たのだ。既に港湾棲姫と北方棲姫が鎮守府からいなくなったと聞いていたので、彼女たちが乱入してくることぐらいは予想していた。 19

2016-03-09 23:01:54
劉度 @arther456

だが現場では深海棲艦だけでなく、マグロ、イルカ、ペンギンの連合軍がフィリピン近海を拠点に破壊の限りを尽くしていた。おまけに魚類が拠点にしているのは、沈没船を基にした機動要塞だった。事態は既に、ネギトロを床にぶちまけたかのような混沌に飲み込まれていた。 20

2016-03-09 23:05:08
劉度 @arther456

「……まずは姫ちゃんとほっぽちゃんを捕まえて、それからドイツ海軍と合流。機動要塞をどうにかしよう」提督は問題を一つづつ片付けることに決めた。まとめて相手にするには、存在感が大きすぎる。「『蔵王』、進路変更。フィリピン北部の姫ちゃんを迎えに行くよ」「了解!」 21

2016-03-09 23:08:10
劉度 @arther456

出撃のため、会議室から艦娘たちが出て行く。提督も部屋を出て艦橋に向かう。その途中、ふと水平線の方が気になった。目を凝らしてみると、何やら船影のような物が見える。「隼鷹、双眼鏡持ってない?」「んん?持ってないよ?」「そっかあ……」提督は諦めて艦橋に向かった。 22

2016-03-09 23:11:18