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@nezikure
01.イモムシの夢を見ている
@nezikure
02.明晰夢というやつはとにかく残酷だと思う。 見ているものが夢だとわかっているのに、逃げることも叫ぶことも息を殺すことも出来ない。 今よりも綺麗な部屋の中で、夢の中で目を覚まして 本当にしたい事以外の自由を与えられている夢を見ている。
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03.ここは自室、目を覚まして寝返りし、前にすすめる事を確認する。 うず高く積み上げられたダンボールの中には、小分けされた物資が詰まっていて 本当は半年余りの籠城生活の中で既に使い潰してしまった物で 頭の中では既に使い切り、食べ尽くしたと理解している物を、もぞもぞと確認している。
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04.用意した物資は、三ヶ月分だった。
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05.苦心して、爪に火を灯し、一月までは持たせた。
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07.予想外に散財して、手持ちと残高が心もとなく 頼りの預金口座の数字が、月々の引き落としで自動的に目減りしていくのを見た事が有る。 胃の腑を摩り下ろされるような気分で一日一食で十日をしのいだ。 ソレ以上の恐怖を、半年余り続けた。
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08.夢の中の様子は、部屋の中の家具や物資の数から見て恐らく十月ごろ 何も考えずに、ハンスから齎された情報から 『早く寒くなれば良い』と祈っていた頃だ。 まだ、デスクトップパソコンが”窓から捨てられていない”
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09.あの後、あの日、10月10日。 フォーラムが纏めた『ケイン・レポート』が完成した日 タイミングを見計らっていたようにライフラインが死に絶えた。 しぶとく供給されていた電気・水道・通信回線はまるで示し合わせてそうしたように同じ日にストップした。 これは、その直前の夢だ。
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10.回り続ける思考を無視して、夢の中の自分が物資の確認を終えて、のろのろと室内を動き回る。 動きは遅く、鈍い イモムシの夢、イモムシに成り果てた夢。
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11.室内には刺激が乏しい 電灯は消えて、時計の文字盤が蛍光色に薄く光っている以外は 自分が動いて立てる僅かな音以外は何も外部からの情報がない。 この頃には慣れきっていた、叫びだしたく成る、気が狂いそうな静けさ
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12.最初の頃、頼り切りになっていた遮音性の高いイヤホンは 使わなくても静かだった 耳をふさがなくても大阪は静かで、静かになっていたから。
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13.それなのにコツコツと、叩くような音がした。
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14.意識が喉を鳴らす、夢の中の身体の反応は鈍い。 意識は目を瞑ろうとする、夢の中の身体は窓を見る。 意識は叫びを上げる、夢の中の身体はもうイモムシで、だから叫ぶことも出来ない。
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15.窓を見る、そこにいる。
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16.イモムシの身体が鈍く、鈍く、鈍く鈍く鈍く のそのそと這いずって窓に、窓に、窓に窓に窓に進む、進む進む進む。
@nezikure
17.意識が回る、この部屋は六階 建物のワンフロアは高さ約3m、 この部屋の概算上の高さは地上18m だから、だから、だから だからだからだからだからだからだからだからだからだからだから
@nezikure
18.有り得ないと『信じる』
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19.信じなければ、狂う
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20.コツ、コツ、コツコツコツコツと、窓を叩いて 呼びかけるように、誘うように、窓の外から外に出ようと誘う 隣人の姿が有り得ないと、狂ったように信じる。
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21.イモムシの地平、イモムシの水面、イモムシの海
@nezikure
22.”地上六階、高さ18mに届いてしまう地を這う屍肉の積み重なり”が、窓の外に満ち満ちている。 一面、すきまなく、どこまでも、見渡す限りに
@nezikure
23.その上でのたうって窓を叩く あの日窓から転落して半身を食い散らかされた隣人の笑顔は夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ――――夢だ。
@nezikure
24.この夢にも馴れた、何度も何度も何度も何度も見るものだから馴れて馴れてしまって、もう現実との区別も曖昧なほどに馴れ切ってしまったっだから俺は平気まだ狂ってないこれは夢で俺はまだだいじょうぶでだから平気で生きていてかまれていなくて俺はイモムシじゃないんだだいじょうぶだ
@nezikure
25.ぎょろりと、自分自身と目が合うだいじょうぶだ
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コメント

オブジェクト@図書館はいいぞ @oixi_soredeiino 2016年3月19日
アゲハ蝶の幼虫だったら夢のなかでSAN値ゼロになって発狂してる/(^p^)\
maryuw@糖質制限 無断転載お断り @maryuw 2016年3月19日
今回もキレッキレですわあ……まとめながら再読しましたんで抜けは無いと思いますが
ララ円 @NachtNagel 2016年4月20日
面白かった。読みやすい文章、想像しやすい場面、心理表現で綺麗にまとまっていながら主人公のとっ散らかった頭を表現出来ていて、実に有意義な時間を過ごせたと思う 今後にも期待したい
maryuw@糖質制限 無断転載お断り @maryuw 2016年5月24日
なんとなく通しで再読。これここで終わってもいいし主人公の末期まで続けてもいいって感じではあるんだなーと
葉月銃久郎@メンズの領域 @wolfhearts_t23s 2016年6月23日
読んでいてふと思ったのだけれど、仮に舞台が札幌であった場合、暖冬という条件も重なって地下街を「アレら」が埋め尽くして冬を越え、相当数の個体が生き残って札幌の中心街が埋まるという展開を想像してしまった。
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