イモムシの夢を見ている

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120. 「…『蜘蛛の糸』」 芥川龍之介の描いた たった一本だけ垂れ下がった救いの糸に群がる地獄の亡者そのものの姿だった。

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121.

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122.往路と同じだけの時間をかけて、アパートに帰った。 未練のように使わず持ち続けていた火炎瓶は既に無い。 貴重な手持ちのガソリンを軽率に使いきった以上の軽さは 多分精神的なものだと思う。 ハーネスにぶら下がった、馴染んだ鉈一本分の重さが心地いい。

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123.自分は蜘蛛じゃない、蜘蛛で居続けたらおかしくなる。 蜘蛛で居続けたからおかしくなった。 だから自分に、Yに戻る。

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124. 『ゾンビ犬の頸を切り落とした男』 『ハンスの盟友』 『Y城の主』に相応しい行動を取り続ける。

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125.八月最後の日、大阪でゾンビが出た。

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126.繋がりを喪った

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127.今日、ゾンビを焼いた。

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128.鉈に手を触れる、冷たさが心地良くて ハンスの大真面目な言葉を思い出す。

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129. 『ところで、焼きゴテでアレらと戦ったら詳細を教えてほしい』 「ははっ…」 そうだ、効果があるか試して見るのも悪く無い どのみち、次の夏にはまた蚊が出る そうしたら、流石に生き残れない…”生きられない”だろう

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130.生存圏の確保、そして安全圏の確保 火も使う、道具も使う。 確実に、的確に、自分らしく安全に 『安全経路』を最大限に使って、アレらを大阪から駆逐する。

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131.そして、いつか 握りしめる、読み返しすぎてすっかり傷んだ一冊の本と 『ケイン・レポート』の入ったUSBメモリを 縁は、繋ぐ。

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132.3月も末、人が消えて死体が這いまわる大阪から いつかロンドンと、アメリカに尋ねる為に続く日々を、続ける。

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133.空路の絶えた今、それがたとえ蜘蛛の糸のように細い道をゆく日々でも 絶対に。

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134.絶対に。