真・マグロ ~地球最後の日~ #4

※現実のマグロは「トロォォォ……」と鳴いたりしません。ご注意ください。
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劉度 @arther456

「はいはいゆっちゃん。聞こえてますよー」横須賀鎮守府には、既に警報が鳴り響いていた。突如現れたマグロ怪獣を迎撃するため、艦娘たちが次々と艤装を装備し、指揮艦に乗り込んでくる。横須賀元帥・三笠は艦橋から巨大マグロを見ながら呟いた。隣には秘書官の長門が控えている。24

2016-03-19 22:00:18
劉度 @arther456

「長門、やれそう?」「やるしかないだろう」「でもあの大きさはねえ。ヒュドラよりデカいよ?」「いいじゃないか。久々の大物狙いだ」「クジラ包丁買っとけばよかったなあ……」100mを超える怪物だが、彼女たちはまるで怖気づいていない。昔から、そういう巨大生物の相手には慣れている。25

2016-03-19 22:03:07
劉度 @arther456

「出撃準備完了です!」「よーし、それじゃあ横須賀連合艦隊、しゅつげ」ブツン、と艦内の照明が切れた。「……ちょっとー?」オペレーターにじとっとした視線を送る。「すみません、えっと、原因は……えっ!?」「どうしたの?」「艦のシステムがダウンしています!」「何ですって!?」26

2016-03-19 22:06:17
劉度 @arther456

三笠が乗る指揮艦『毘沙門』は、各所に魔力による補強が施されているものの、ベースはコンピューター制御された船舶である。そのコンピューターシステムが落ちたということは、脳が止まったに等しい。「復帰は!?」「再起動まで、10分!」「間に合わないね!『楠木』、先に出撃しなさい!」27

2016-03-19 22:09:05
劉度 @arther456

すると、三笠の携帯が鳴った。「はい、もしもし?」《悪い、閣下!『楠木』だ!》「どーしたよっしー!作戦中はプライベートの番号にかけるなって言ったでしょ?」《すまん、『楠木』のシステムがダウンした!通信も使えない!》「……あんですってえ!?」三笠は慌てて艦橋の窓に駆け寄った。28

2016-03-19 22:12:06
劉度 @arther456

窓から見える20隻ほどの軍艦は、全て静まり返っていた。偶然とは思えない。何者かが、海軍の戦術ネットワークに侵入し、何らかの手段で軍艦の制御コンピューターをダウンさせている!「こいつは……3分マグロハッキングね!」《どうした三笠!?》「なんでもない!語呂が良かっただけ!」29

2016-03-19 22:15:07
劉度 @arther456

「とにかく船は当てにならないねえ!こっから艦娘を直接出撃させる!総指揮はアタシが洋上で執るわ!」《俺たちはどうする?》「どうにか艦を復帰させて!指揮はアンタに任せるわ!」《分かった!》三笠は電話を切った。「作戦変更!ここで船を降りて、マグロを迎え撃つよ!」30

2016-03-19 22:18:02
劉度 @arther456

「接続、切断されました」「システムダウンさせるのが精一杯か」「母船のコンピューターなら、5秒で掌握できるのだが……」東京湾海底に潜む、星形の潜水艇。以前、地球各国に宣戦布告した宇宙人、ミミー星人の乗る船だ。そして、海底のスクラップを集めてオートロ島を作った張本人でもある。32

2016-03-19 22:21:07
劉度 @arther456

以前の戦いでミミー星人はアイアンロックスを倒され、グレートシングによって調査船を破壊された。辛うじて生き残ったクルーはフィリピン島に隠れ住んだが、その日の食料にも困る有様だった。そんな時、近くのカンパン湾に住む知性キハダマグロたちと出会ったのだ。33

2016-03-19 22:24:01
劉度 @arther456

ミミー星人たちは、人類に敵意を抱いている知性マグロたちを利用しようと考えた。目論見はたやすく成功した。オートロ島を提供し、知性マグロの敵意を煽って人類と敵対させることができた。イルカやペンギン、深海棲艦といった奇妙な生物たちまで集まってきたのは予想外だったが。34

2016-03-19 22:27:03
劉度 @arther456

「あんなものが本当にいるとはな……」海上の巨大歩行マグロをモニターしながら、2代目ミミー星人のリーダーは呟いた。あの巨大マグロを、ゲスナガは神と呼んでいた。神マグロなどという与太話を、ミミー星人は誰も信じていなかったが、現物を前にしては認めるしかなかった。35

2016-03-19 22:30:11
劉度 @arther456

オートロ島の中心部には、ゲスナガの儀式場があった。ミミー星人がオートロ島を作る時に、ゲスナガの注文で付け加えた部屋だ。そこにゲスナガは白骨化したマグロを持ち込み、毎晩のように『神喚の儀』というものを行っていた。詳しい内容は、他のマグロにすら知らされていない。36

2016-03-19 22:33:04
劉度 @arther456

儀式に使われるマグロの骨は、日本のツキジという所に埋められていたものらしい。ゲスナガがいうには、旧い怨念が篭った骨だそうだが、ミミー星人には微弱な放射能を放つ以外はただの骨にしか見えなかった。とにかく、そんな土着宗教とガラクタから、あの破壊生物が生まれてしまったのだ。37

2016-03-19 22:36:03
劉度 @arther456

全長100m超の、足の生えたマグロの化物など、宇宙広しといえど見たことも聞いたこともない。それでもミミー星人は、ゲスナガと神マグロを援護するため、横須賀海軍の戦術ネットワークに侵入し、敵艦隊の動きを止めた。後は巨大魚が陸地を蹂躙するのを待つだけだ。38

2016-03-19 22:39:02
劉度 @arther456

「船長!」「なんだ」「神マグロの進路が、横須賀から逸れています」「……むう」だが、事はそう上手く行かないようだ。神マグロはオートロ島を攻撃したイージス艦と巨大戦艦を、執拗に狙っている。相手はそれに気付いたのか、横須賀ではなく東京へ神マグロを誘い込もうとしている。39

2016-03-19 22:42:07
劉度 @arther456

「どのみちこの先は東京沿岸、行き止まりだ。敵艦隊のハックを続けろ」「了解!」ミミー星人はあくまでも潜航に徹する。神マグロの力を完全に信じたわけではない。万が一負けた時は、このまま静かに立ち去ればいい。星形の宇宙船は、洋上の戦いを冷静に見守り続けていた。40

2016-03-19 22:45:07
劉度 @arther456

「船長!」「なんだ」「神マグロの進路が、横須賀から逸れています」「……むう」だが、事はそう上手く行かないようだ。神マグロはオートロ島を攻撃したイージス艦と巨大戦艦を、執拗に狙っている。相手はそれに気付いたのか、横須賀ではなく東京へ神マグロを誘い込もうとしている。39

2016-03-20 21:01:17
劉度 @arther456

「どのみちこの先は東京沿岸、行き止まりだ。敵艦隊のハックを続けろ」「了解!」ミミー星人はあくまでも潜航に徹する。神マグロの力を完全に信じたわけではない。万が一負けた時は、このまま静かに立ち去ればいい。星形の宇宙船は、洋上の戦いを冷静に見守り続けていた。40

2016-03-20 21:03:04
劉度 @arther456

「主砲、撃てぇーっ!」『蔵王』に搭載された12.7cm単装砲が火を吹いた。放たれた砲弾は、マグロ怪獣の眉間を直撃した。だが、マグロの表皮には傷一つついていない。「トロォォォ!」マグロが口から熱線を吐いた。『蔵王』の船体が軽く炙られる。航行に問題はないが、直撃すれば危険は確実!42

2016-03-20 21:06:19
劉度 @arther456

「撃て、撃てー!」洋上に展開した艦娘たちも砲撃を浴びせるが、マグロ怪獣はまるで意に介さない。ズシン、ズシンと歩みで海を揺らしながら、『蔵王』を追い詰める。「ホラニア元帥!そろそろ東京沿岸です!主砲の準備は!?」《できている!だが……このままでは回頭ができん!》43

2016-03-20 21:06:19