真・マグロ ~地球最後の日~ #4

※現実のマグロは「トロォォォ……」と鳴いたりしません。ご注意ください。
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2016-03-19 21:01:17
劉度 @arther456

「……ゼハァッ!」むせ返る血の海から、潜水棲姫は顔を出した。海面に浮かぶのは無数のキハダマグロの死骸。潜水棲姫は歯ぎしりする。オートロ島が沈み、大勢が決したあとも、キハダマグロたちは不気味なチャントを唱えながら自殺的な突撃を繰り返していた。その結果がこれだ。1

2016-03-19 21:04:01
劉度 @arther456

「ゲスナガ……ゲスナガァ!」血走った目で、潜水棲姫はマグロの死骸を掻き分け、泳ぐ。巨大ミナミマグロがその後ろを心配そうについていく。やがて彼女は見つけた。血の海から離れた海面に顔を出す、一匹の老マグロを。「おや、ドーモ、ツナ=サン」「アイサツなどしている場合か!」2

2016-03-19 21:06:17
劉度 @arther456

「貴様、なぜあの場で突撃を命じた!」「それがこの戦いの意味だからですよ」「何……?」涼しい顔で応える老マグロの真意を、潜水棲姫は読み取れなかった。「まさかあの程度の軍勢で、人間たちに勝てると本気で思っていたのですか?」虚ろなマグロ目に見られ、潜水棲姫の背筋に怖気が奔る。3

2016-03-19 21:06:18
劉度 @arther456

「我々はこの戦いで無残に負け、死ぬ必要があった。あなたが撤退戦を上手く収めたのは予想外でしたが」「殺されるために戦ったというのか!?」「ええ。そして、この惨劇に神はお怒りになられた」ズン。潜水棲姫は揺れを感じた。波ではない。地震でもない。空間そのものが揺れたような感覚。4

2016-03-19 21:09:06
劉度 @arther456

海の中から巨大なものが浮き上がってきた。沈められたはずのオートロ島だ。潜水棲姫はその威容に息を呑んだ。これが、本当に島なのか。放たれる威圧感。傍らの巨大ミナミマグロも泡を吹いて震えている。島の中に何かがいる。彼女たちには想像もつかない、強大な存在が。5

2016-03-19 21:12:04
劉度 @arther456

「なんだ、これは」潜水棲姫は、震えながらゲスナガに問いかけるのが精一杯だった。「裁きの時は来た。神は目覚め、我々の敵を追い、日本を目指す!」オートロ島が、いや、外観を覆っていたスクラップが剥がれ落ち、"それ"が姿を現した。「審判の日は来たれり!(トロカリプス・ナウ!)」6

2016-03-19 21:15:06
劉度 @arther456

【真・マグロ ~地球最後の日~】#4

2016-03-19 21:17:02
劉度 @arther456

「これがお台場ガンダムか」「凄い……1/1サイズで作ってある……」ショッピングモール前に、全長18mの巨大なロボットが仰向けに倒れていた。かつて東京の観光名所だったお台場ガンダムである。東京が壊滅した今、ガンダムを見に来る観光客はおらず、無残に錆びついた姿を晒している。7

2016-03-19 21:18:03
劉度 @arther456

だがそれは逆にアニメオタクの2人、クルーソーとザラのロボ魂に火をつけた。「錆びたガンダムもこれはこれでいいな!」「ところどころ茶色になってるのがいい色合いですよね!」「んー。あと、戦争を生き残った感がいい。最終回は大体いっつもぶっ壊されて終わるからな、ガンダム」「渋いですねえ」8

2016-03-19 21:21:08
劉度 @arther456

以前、築地まで来た時は、敵襲のせいで引き返さなくてはいけなかった。その分、今回のクルーソーとザラはハイになって楽しんでいる。「エクシアリペアとは違うんですか?」「違うよ、全然違う。あっちは敗残兵っていうか、痛々しいんだよ。話の流れもあって」「あー。じゃ、そろそろ写真撮ります?」9

2016-03-19 21:24:02
劉度 @arther456

「おう。先に撮る?」「いえいえ。提督さんからどうぞ」「サンキュー」ザラにカメラを渡し、クルーソーはガンダムの足元でピースする。パシャリ。ファインダーにガンダムとクルーソーが綺麗に映る。「次は私ですね」ザラとクルーソーが交代し、今度はザラがガンダムとツーショットを撮った。10

2016-03-19 21:27:01
劉度 @arther456

「あと土産とかあれば完璧なんだけどなぁ」「無理ですねー。すみません」周囲を見てみるが、どこも廃墟。観光客向けの屋台などありはしない。ゾンビの方がまだいそうな雰囲気だ。「……あれ?」不意に、ザラが声を上げた。「どうした、ゾンビか?」「なんでゾンビ?……いや、それよりもあれ!」11

2016-03-19 21:30:15
劉度 @arther456

ザラにつられて、クルーソーも海の方を見る。海の遠くの方に巨大な影が見える。クルーソーが目を凝らしていると、懐の携帯電話が鳴った。「はい、もしもし?」《提督!?至急お戻り下さい!》「どうした、何があった!」《東京湾に……敵が出現しましたァーッ!》「な、なんだってー!?」12

2016-03-19 21:33:06
劉度 @arther456

左手に見えるのは久里浜。右手に見えるのは千葉県の海岸。ここは浦賀水道。東京湾の入り口で、最も海の幅が狭いところだ。狭いといっても幅は11kmもある。『蔵王』はもちろん、グロース・シュトラールも余裕をもって湾内に入ることができた。「横須賀へようこそ、ホラニア元帥」14

2016-03-19 21:36:04
劉度 @arther456

《もう何度も来ている》「ですよねー」数年前までホラニアたちは日本にいた。東京湾も見慣れている。《今回も第2地区に入ればいいのか?》「はい。そこしかグロース・シュトラールの入れるドックがないので」進路を北に取り、観音崎を回れば、横須賀鎮守府は目の前だ。15

2016-03-19 21:39:05
劉度 @arther456

「……あれ?」妖精さんの一人が、不穏な声を上げた。「どうしたの?敵襲?」「いえ……えーと、放射能反応が少し高まってます」「放射能?」提督は首を傾げた。心当たりは全く無い。『蔵王』は原子力巡洋艦だが、放射能漏れを起こしたのなら、まず航行に異常がある。16

2016-03-19 21:42:07
劉度 @arther456

窓の外を見ると、遠くの水上に緑色の船が見えた。以前、オートロ島を攻撃する前に、少しだけ見えた漁船だ。「まさか……アレが?」嫌な予感がした提督が双眼鏡を手にとった、その時だった。「ソナーに反応!」「やっぱりね!相手は?」「それが……ええと、全長100m以上あります!」「えっ?」17

2016-03-19 21:45:04
劉度 @arther456

モニターに目をやる。後方から、海面を盛り上げながら何かが近づいてくる。まるで津波だ。「まずい、機関全速!」「ダメです!目標、40ノット超で接近!」「なら取舵!」巨体にはあり得ないスピード、ましてや相手は海中である。人智を超えた存在であることは明らかだ。「目標、浮上します!」18

2016-03-19 21:48:05
劉度 @arther456

海水を掻き分け、それは姿を現した。「……ナンデ?」提督は、いや、『蔵王』に乗る人間全てが、その姿を知っていた。知ってはいたが、理解ができなかった。「トロオオオォォォ……」奇怪な鳴き声を上げる、全長100mを超えたマグロなど、見たことも、聞いたことも、想像したこともなかった。19

2016-03-19 21:51:03
劉度 @arther456

呆けた顔で巨体を見上げる提督たちに向かって、マグロは立ち上がり、火を吹いた。20

2016-03-19 21:53:04
劉度 @arther456

「うわぁっ!?」取舵を切っていたことが幸いした。炎は僅かに『蔵王』を逸れ、海に着弾。水蒸気が吹き上がる。艦橋の壁越しに熱気を感じる。すさまじい熱量だ。「機関……機関全速!逃げろっ!距離を取れ!」『蔵王』が加速する。マグロの怪獣は、それをゆっくり歩いて追いかけ始めた。21

2016-03-19 21:54:04
劉度 @arther456

《なんだアレは!?》ホラニアから通信。「分かりません!」後ろを気にしながら提督が応える。《足が生えてる、まるでカイジュウだ!》「……横須賀まで逃げ切れますか!?」《……そうだ、横須賀だ!このままだと奴が!》「横須賀に繋いで!……こちら『蔵王』!誰でもいい、応答して下さい!」22

2016-03-19 21:57:01
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