彼のトリセツ

はち公。 @funkastic_8er

26 「大倉さん！？ なんでいるんですか！？」 『はぁ？茜ちゃんがいきなり ぶっ倒れたんやないかぁ･･･』 暗闇に目が慣れてきて 彼が目を擦ってるの位は分かった そして そう言えば自分が ドアを開けて 大倉さんを見て ･･･安心したのを思い出す #彼のトリセツ

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27 「ご、ごめんなさい」 『ん。分かったならよろし。』 彼はスマホのライトをつけて 互いの顔が見えるようにした 『で？風邪？』 「･･･はい」 『で、こんな時にいきなり停電』 「･･･はい」 『思わず心細くて泣いてしもたと』 「･･･はい」 #彼のトリセツ

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28 あぁ。きっとバカにされて 笑われるんだろうな･･･ と思ってたら 『ま。そりゃそーなるな』 といい頭を撫でてくれた 『風邪の時は心も弱るから 必要以上に不安になるもんな』 ･･･お 予想外に優しいな リアクションに困ってたら ────ぐぅぅ #彼のトリセツ

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29 「あ」 『お』 お腹が鳴って 「ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ」 私は照れて 彼は笑った 『おっけおっけ。 なんか作ったるわ。 待っとき♡』 と立ち上がった そして1度部屋に戻って 何か取ってくると 鼻歌交じりで料理を始めた 「停電･･･なのに？」 #彼のトリセツ

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30 『あほか。 うちのアパートガスやんかwww』 「あ、そか。」 『残りご飯あれば お粥ぐらいなら作れますー』 なるほど さすが一人暮らしの先輩 感心してたら すぐにいい匂いがしてきて ぐぅぅ･･･ またお腹が鳴って 彼がまた笑った #彼のトリセツ

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31 『はい、お待たせ』 運ばれてきたお粥には トッピング梅干し 「･･･意外と所帯染みてるよね」 『･･･うるさい。 いらんなら俺が食うてまうで』 「あ、すみません頂きます喜んで」 ゆっくり口にすれば 優しくて温かい 「･･･おいひ」 『うむ』 #彼のトリセツ

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32 空きっ腹のお腹は あっという間にそれを完食して 「ふわ･･･ご馳走さまでした」 と手を合わせたら 『はい。じゃあもっかい寝ぇ？ 電気も起きる頃には復旧してるやろ』 って後片付けを始めた 「はーい」 と言いつつ ぼんやりとその背中を見つめる #彼のトリセツ

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33 ぼんやりしか見えないその背中に ひとり物思う ────この人の ホントの顔はどれ？ 女遊び激しいくせに こーゆう優しさとか 「･･･聞いてもいい？」 『んー？ひとつだけならええよwww』 ひとつで充分 「なんで色んな女の子と 付き合うの？」 #彼のトリセツ

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34 すると彼は一瞬手を止めて 『･･･誰とも付き合ってない ってのが正解やな』 って呟いた 「付き合ってない･･･の？」 『うん。 みんな利害が一致してるだけ？ そんな感じ。』 そんな 「付き合ってないのに･･･」 エッチするの？ 利害って？ #彼のトリセツ

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35 頭が今にもショートしそう そんな私を見かねて 彼が近づいてくる 『茜ちゃんは知らんくてええ事。 ほら･･･寝ぇ？ 風邪には寝るのが一番やで？』 そう言うと無理やり私に布団を掛けた ────知らなくていい と言われると 知りたくなるよなぁ･･･ #彼のトリセツ

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36 「ねぇねぇ」 『ん？』 「寝るまでそばにいてくれる？」 『ふっ･･･今日は偉い 甘えたちゃんやなぁwww』 「･･･たまにはいいじゃないか。 甘えても･･･」 布団の中でボソボソぼやくと 笑いながら私の手を取り出し 『しゃーないなぁwww』 #彼のトリセツ

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37 それからそっと 手を繋いでくれた 『おるよ。おるから･･･ ちゃんと寝ぇ？』 「･･･はーい」 ･･･まるで妹みたいな扱いだな だけど 不思議な事に 繋いだ先から伝わる温もりが ひどく私を安心させて 「ん･･･落ちるかも」 むにゃむにゃ･･･ #彼のトリセツ

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38 意識が落ちそうになる瞬間 夢現に訊ねる 「･･･あなたを 好きになってもいいかな」 言うだけ言って 私はそのまま落ちた 彼は目を丸くしつつ スヤスヤ眠る私を見て 『･･･なんやそれwww 聞き逃げ！？』 クスクス笑う それから 頬に手を当て #彼のトリセツ

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39 『･･･好きになったらあかんよ？ こんな男好きになっても 幸せな恋愛できへんで･･･』 そっと頬にキスを落とし そっと部屋を 後にした──── #彼のトリセツ pic.twitter.com/Jv9QELlBXQ

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40 目が覚めると 大倉さんは居なくなってて 「ちぇ･･･」 呟きつつ、慌てる 「バカ･･･」 何期待してんだよ 彼には何も望まない そう決めたのに なんだって心は あんな男に惹かれるのか──── #彼のトリセツ pic.twitter.com/MhEUYrTM37

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41 風邪はどんどん治るのに 胸がチクチク痛むのは治らなくて それどころか増していく 「はぁ･･･」 気づくとため息も増えてきた 《茜ちゃん！ほら休憩おしまい！ ホール早く入って》 「あ、はーい」 ファミレスでのバイトの最中も ぼーっとしちゃって #彼のトリセツ

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42 ♪♪ 呼び出しの音がして テーブル番号をチェックして 「お待たせしました･･･」 注文を取りに行くと 『おつー♡』 「へ！？大倉さん！？」 驚く私を見て お腹を抱える彼 『お前wwwよく、へ！？ って言うよなwww 言葉っちゅうか音www』 #彼のトリセツ

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43 その表情に 動悸ハンパなくて 「それは！大倉さんが！ 驚かすこと多いから！！」 思わず叱っちゃう 『ふーん。可愛げない子やなぁ。 こないだの夜は甘えんぼで 可愛かったのにー♡』 「な！！！」 『ずっと風邪ひいといたら？』 「はぁ！？」 #彼のトリセツ

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44 やっぱり最低！ やっぱり最低！！ イライラしてる私に 彼はふわっと笑って 『あれー？ なんか忘れてへん？』 私を試す感じ 『ありがとう聞いてへんなぁ？』 「な･･･」 『お粥作ったしぃー』 「う」 『寝るまで手ぇ握ったしぃー』 「うぅ」 #彼のトリセツ

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45 確かに救われた。 あの夜は救われた。 ･･･くそっ 「あ、ありがとーございます」 『あかん。可愛くない』 くそっ！ 「大倉さん！有難うございます！」 大げさに頭を下げれば 『ん。よろしい。』 満足気に笑って立ち上がる 「あれ？注文は？」 #彼のトリセツ

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46 『あ、ええわ。 今からデートやねん。』 指さした先には 見覚えのある車 「･･･あ。貢いでくれる人･･･」 『そうそう。だからええわ♡』 なんだろ 後頭部鈍器で 殴られたぐらいのショック (やられたことないけど) 『あ･･･でもあれ食べたい』 #彼のトリセツ

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47 『茜ちゃん特製コロッケ。 あれほんまにうまかったから。 お粥のお礼に作ってや♡』 ･･･なんだよ 殴りつけた直後に 真綿で包まれる感じ (されたことないけど) 「･･･いいよ。 ナポリタンも付けてあげる」 『いえーい♡』 ほんとずるい人 #彼のトリセツ

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48 『じゃーね茜ちゃん。 帰り遅いなら気ぃつけやー。』 ひらひら手を振って 店の外へ出ると さっき指さした車に 消えていく ────なんなんだよ キツイ現実を突きつけたと思ったら 想像をこえた 甘い言葉で掻き乱す そうやって色んな人を虜にして #彼のトリセツ

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49 貴方にとって 私は何の女？ 貴方の目に私は どんな風に映ってる？ ･･･知りたくてしかたない 貴方を思って胸が痛くなる 「ああ･･･そっか」 これは風邪でも 病でも何でもない ただの、恋──── #彼のトリセツ pic.twitter.com/q4n2gzBiZr

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50 好きになっちゃったんだ どうしようもない人に･･･ そう認めてしまえば むしろ心は軽くなった気がした。 「あ」 午後一の講義の後 彼を見つけた 「大倉さーん！」 1人で歩いてたから 思い切って声をかける 『おー、茜ちゃん。 講義終わり？』 #彼のトリセツ