山本七平botまとめ/【裏切者ヨセフスの役割⑤】人類史に類例がないような数奇な運命を辿ったヨセフス/~ローマ支配下においてユダヤ人とギリシャ人が抗争した理由とは~

山本七平『禁忌の聖書学』/裏切者ヨセフスの役割/21頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①二人が別れた後も、私は…ぼんやりと今までの会話を反芻していた。そして私自身も「エチオピヤに遠征したモーセの出典は?」に似た質問を何回か受けていた事を思い出した。 …ヨセフスの『ユダヤ古代誌』の役割に触れると、たいていの人は「ヨセフスとは何者ですか」ときく。<『禁忌の聖書学』

2016-03-25 20:09:12
山本七平bot @yamamoto7hei

②そこで、人類史に類例がないような数奇な運命をたどった人の話になるのだが、彼が″摂理″によってたどった生涯と、そうならざるを得なかった歴史的前提を簡単に要約してみよう。

2016-03-25 20:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

③ユダヤ人はローマ帝国に抵抗して戦い、二度にわたって徹底的に叩き潰されて国を失い、二千年近く祖国なき民として存続しつづけて来たが、ローマ人は決して仇敵としてでなく、まず友人・同盟者として彼らの前に現われる。

2016-03-25 21:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

④前169年からユダヤ人はシリアのセレウコス朝のユダヤ教徒弾圧に対して抵抗していたが、攻守同盟を結んで背後から彼らを支えていたのがローマだった。

2016-03-25 21:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤ローマは長い間、ユダヤ人にとって無縁の民であったが、彼らの手がギリシアから小アジアヘ、さらにシリアヘと延びてきたとき、シリアに対するユダヤ人の抵抗運動に遭った。 政治感覚の鋭い彼らにとって、併呑すべきシリアの背後にいて抵抗しているユダヤ人と手を結ぶのは当然のことであった。

2016-03-25 22:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥そしてローマ人もユダヤ人も成功し、ユダヤは独立王国となった。 この対シリア戦争のユダヤ側の猛将がユダ・マカバイ、すなわち「ユダス・マカベウス」である。 この王朝は正規の名称のほかにしばしばマカバイ朝と呼ばれるのはこのためである。

2016-03-25 22:38:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦だがシリアを併呑したローマの手はユダヤに及び、前66年のポンペイのエルサレム攻略となった。 しかしローマ人は、エジプトを確保するにはパレスチナという廻廊を確保しなければならず、そのためには、ユダヤ人と友好関係を保つ方が有利だと考えていたのでマカバイ朝は存続させた。

2016-03-25 23:09:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧ローマの三頭政治が崩れ、ポンペイがエジプトヘ逃れ、これを追ってカイサルが来たとき、マカバイ朝の宰相ともいえる位置にいたイドマヤ人アンティパトロスは、全力を挙げてカイサルを援助した。 この行為は、憎いポンペイ討伐の援助だから、ユダヤ人に反対があろうはずはない。

2016-03-25 23:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨カイサルはその代償として同盟国の特権をユダヤ人に与えた。 これに基づいてユダヤ人は、ローマ帝国のどこにいても、ユダヤ教の律法に基づいて生活する権利を得た。 エジプトには多くのユダヤ人が住んでいた。 この歴史も古い。

2016-03-26 08:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩前587年に新パビロニア帝国の攻撃でエルサレムが陥落し、多くの者がバビロン捕囚として引き立てられて行ったとき、徹底抗戦派は最終的にはエジプトに逃れた。 そしてこの地に定着して生活が安定すると、荒廃した故国から先住者をたよって多くの者が移って来た。

2016-03-26 08:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪やがてアレクサンドロス大王が来て新都市アレクサンドリアを建てると、多くのユダヤ人はこの新都市に移った。 おそらく土着の住民がいない新植民都市の方が生活しやすかったからであろう。

2016-03-26 09:09:15
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫ヨセフスは後述するようにアレクサンドロス大王の後継者がユダヤ人にギリシア人と同等の権利を与えたと主張するが、これはおそらく事実ではない。 それは新しい主人ローマが来たときである。

2016-03-26 09:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬ローマ人は施政権下のギリシア人と同盟者ユダヤ人とを同等に扱い、ユダヤ人に一種の自治権を与えたのはカイサルであろう。 彼らはアレクサンドリアという都市の中でポリテウマを保持していた。 ポリスとポリテウマの関係は様々に論じられているが「ユダヤ人自治地区」と理解してよい。

2016-03-26 10:09:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭だがプトレマイオス朝というギリシア系王朝の下で生きてきた誇り高きギリシア人は、今までの支配階級の位置から転落してローマに支配されることには何とか我慢ができても、ユダヤ人と同等に扱われることは我慢ならなかった。 彼らはたとえ征服されても、ローマ人には文化的優越感を持ち得る。

2016-03-26 10:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮だがギリシア文化など全く認めようとしないユダヤ人と同等とされることは、彼らのプライドが許さない。 そのうえユダヤ人はローマヘの穀物輸出で、着々と巨万の富を蓄積し、この点でもギリシア人を凌駕していった。

2016-03-26 11:09:04