廃棄物日誌 LOG:13

廃棄物13号@カクヨム連載中 @eibis_splicer

そしてトドメにライフル弾を撃ち込もうとして、アドミラリの肩部ミサイルランチャーが 中型ミサイルを発射する。 六発のミサイルは直線的で、そして高速でアスフィクシアに命中。藍色の装甲が傷つく。 対するアスフィクシアが絶叫し、右脇から伸びたヘビーマシンガンを構えた。 #廃棄物日誌

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アドミラリもといコンゴウがQBによる回避を選択しようとしてブースターが損傷していたことに気付いたのと、マシンガンから放たれた大口径弾が殺到したのは同時だった。 クラインフィールドの展開が間に合わず、猛烈な攻撃を受けてしまう。 しかしそれを遮る爆音。 #廃棄物日誌

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ナガラ級から取り外されたビームランチャーが、アスフィクシアの右腕を撃ち抜く。 しかし志津江は怯むことなく、絶叫しながらレーザーブレードを構え、アドミラリに突進した。 刃は胴体を一文字に切り裂き、反撃に打ち出されたブレードランスがアスフィクシアの胴体を貫く。 #廃棄物日誌

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お互い引き裂かれた胴体から、お互いを見る。 憤怒で紅く染まった詩藤志津江と、黄昏と夜明けを彷彿させる金と赤を輝かせるエンタープライズ。 お互いを視認したと同時に、二人はコックピットから飛び出した。 主を失い、後ろのめりに倒れ伏すアドミラリとアスフィクシア。 #廃棄物日誌

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それによって生じた波で、死んだふりをしていた卯月が転がされて上を向く。 光を感じ、卯月が目を開けると、自分の上で黒いドレスの女性と先程の空母ヲ級が殴り合っていた。 お互いノーガードノー回避の壮絶な殴り合いだった。 「あ、ありえねえぴょん…」 #廃棄物日誌

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その光景に絶句する卯月。 二人は足元の卯月など気にせず、一心不乱に拳と足を繰り出し、目の前の敵を打つ。 （どうして…こんな事に…？）（何故、どうして…？） 二人の中に響く、声を聞きながら。 #廃棄物日誌

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それはまさに、死闘と呼べる戦いだった。 #廃棄物日誌

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今まで、この世界の艦娘が成しえなかった、彼女へのダメージ。 実はそれは、彼女の防衛本能によるものだ。 自分より強い力の持ち主には、本能的に身を護るため、彼女の身体はより強くなる。 具体的には、相手が強ければ強いほど、彼女は負けない。 #廃棄物日誌

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弱ければ当然、至極あっさりと彼女に瞬殺される。 ではどうすればいいのか。 それはまさに、ギガベースの卯月の真上で実践されていた。 #廃棄物日誌

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黒衣のドレスの少女の拳が、彼女の顔を殴る。 大和型の拳でもビクともしなかった彼女の口から、血が滲む。 間髪入れずに左腕が彼女の鳩尾に入る。 長門型にどれだけ蹴られてもビクともしない彼女が、胴体をくの字に曲げて浮き上がった。 #廃棄物日誌

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彼女の弱点は一つ。 「同等の力を持った者」。 その少女こそが、彼女に唯一有効なダメージを与えることが出来る。 そして少女の弱点もまた、彼女なのだ。 #廃棄物日誌

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反撃の拳が、少女の顔を打つ。 顔が拉げることはないが、少女の視界が揺らぐ。 細くしなやかな膝が、少女の胴を貫く勢いで突き刺さる。 少女は咳き込み、少しだけ腹を押さえて、吼えて頭突きを彼女に食らわした。 #廃棄物日誌

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少女、詩藤志津江と彼女、エンタープライズの二度目の再会は やはり全力の殺し合いへとなり、ノーガードの死闘へと変じた。 お互い少女から出るとは思わない呻き声と咆哮を上げながら、足元の卯月など 気にすることなく拳と脚を振るい、戦っている。 #廃棄物日誌

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もう十数回目の拳が彼女の顔を打つと、志津江は足元の卯月の足代わりになっていた装甲版に手をかける。 そして、勢いよく卯月から引き抜いた。 「いでぇっ！」卯月が悲鳴を上げるが無視。エンターは、彼女の持っていた実体ブレード 「MURAKUMO」を腕ごと引き千切る。 #廃棄物日誌

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そして、真下の卯月が悲鳴と罵声を上げている中、志津江はフルスイングで装甲を エンターに叩きつけた。対するエンターは装甲版をブレードで受け止める。 そのまま何回も何回も装甲とブレードで叩き合った。 「やめるぴょん！MURAKUMOはそんな使い方じゃないぴょん！」 #廃棄物日誌

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卯月が叫ぶが彼女はくっついていた腕をブレードから引き剥がす。 そして装着するのかと思ったら、刃を引き出し、更に無理矢理固定した。 自身の愛用武器を滅茶苦茶にされた怒りと二人への恐怖が混じった悲鳴が卯月から上がる。 悲鳴などなかったように、彼女は叩き合いを再開した。 #廃棄物日誌

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特殊合金製の刃はともかく、それを格納するフレームが先に耐えられなくなり、 とうとう装甲板がフレームを粉砕した。バラバラになるパーツ。 そして傷一つつかないまま宙を舞い、海に沈んでいく刃。 「うーちゃんのむらくもがあぁぁ！！」絶叫する卯月。 #廃棄物日誌

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しかし志津江はまだ止まらない。 装甲板を彼女に叩きつけて、装甲がボロボロになっていると気づくと、最後に渾身の力で振り、装甲を彼女の頭で叩き割った。 それでも、彼女の頭は割れない。が下がった頭に強烈なアッパーを加える。 #廃棄物日誌

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視界が海から空へと瞬時に変わる。 しかし、彼女は即座に立ち直して追撃しようとした彼女の顔を殴る。 胴体を狙う必要はない。ただひたすらに殴り、殺す。 二人の思考は完全にそれだけになっていた。 #廃棄物日誌

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（どうして…？何故こんなことになってしまったの…？） 二人の思考に過ぎる。疑問の声。 二人の声で、それは続いている。MIで再会を果たしたあの日から。 （こんなはずじゃなかったのに…？） それを押し殺すように、二人は叫び、暴力をぶつけ合う。 #廃棄物日誌

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しかし、どうにも決定打が出せない。 まるで何かがストッパーをかけるように、拳が不自然に力を失う。 （何故…貴女とこんなに殺し合うようになってしまったの…） （私と貴女は…友達になりたかっただけだったのに…） 「「うがあぁあぁあぁあっ！！」」絶叫する二人。 #廃棄物日誌

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後ろに跳び、距離を取った志津江は、近くにあった鉄柱を片手で持ち上げ、投げつける。 エンターはそれを蹴りで打ち上げ、続いて鉄筋コンクリートを投げようとした志津江に飛びつく。 それをミドルキックで阻止し、組み合う。 同時に頭を振り、同時に頭突きを繰り出した。 #廃棄物日誌

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人格が入れ替わるどころか二人揃って天に召される勢いで頭が激突する。 「ぐえぇ…っ！」「うぐぅ…っ！」頭を押さえ転がる二人。 しかしすぐに立ち上がり、また拳を打ち合いを始める。 志津江の拳がエンターを打てば、エンターのアッパーが彼女の顔を上へ向けさせた。 #廃棄物日誌

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志津江の蹴りをエンターが腕で防げば、夜戦中の川内のドロップキックを受け止めてもビクともしなかった彼女の腕から痺れるような感覚と鈍い痛みが走った。 しかしフリーの腕が志津江の腹をめり込み、バランスを崩した志津江の顔面にストレートが入る。 #廃棄物日誌

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金剛型の顔面を悉く叩き潰してきた拳だが、志津江の顔は潰れていない。 それどころかすぐに立ち上がり、反撃の鳩尾。 吐瀉物を押さえながら腕を振ると、それを絡め取り、空いた脇腹を何度も殴打した。 そして最後に顔面を殴り飛ばす。 #廃棄物日誌