胚生まれ野郎と稽古　他

カラテ家てん@あ4 @ten01nj

@ten01nj ーー胚生まれ野郎と稽古ーー

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@ten01nj サブジュゲイターには、壁のタイルを引っ掻く癖があるようだ。 ケージを齧るネズミめいている。出れないと解っていても、やらざるを得ないのだ。…ネズミの方は前歯を研いでいるのか、そうかい。 01

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@ten01nj サブジュゲイターの習慣は、壁のタイルを引っ掻くこと、アサイラムと話すこと。それに加えて 「カラテだ」 「またですか」 「本日のコースはポン・パンチ50本」 サンドバッグ代わりに四本腕を壁めいて構え、突きの高さまでかがむ。 02

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@ten01nj 「武器使ったほうがいいと思いません？」 「目下の課題は接近された時の対処だ。それとアンタのジツ、両手塞がってもいいのかい」 渋々、サブジュゲイターは構えをとる。 腰を膝の高さまで下げ、右足を後ろに、ポン・パンチ！ 「イヤーッ！」 03

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@ten01nj 「的、高いかい？」 「いえ、イヤーッ！」 「イヤーッ！」 「拳をしっかり握れ、まっすぐ当てんと捻挫するぞ」 「イヤーッ！」 「もっと全力で、この腕が憎い奴の顔だと思え」 「イヤーッ！」 「いいぞ、その調子だ」 「イヤーッ！」 04

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@ten01nj 「イヤーッ！」 「イヤーッ！」 「足を踏ん張れ、動きを略すな」 「イヤーッ！」 「イヤーッ！」 腕を重そうにだらんと下げた。 「少し…時間を下さい」 おや、バテてきたか。 「そうだな、少しずつこなしていったほうが良い」 05

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@ten01nj カロリー棒を一本手に取る。それにしてもここは水、バイオインゴット、カロリー棒以外は支給しないのかね。シリアルとか。ほれみろ、マスターが食うのにまた一苦労だ。 「獄中以下のシケたメシじゃあなく、定食屋に行きたいもんだ」 「ドーモ悪かったですね、私のせいで」 06

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@ten01nj 言い方がトゲトゲしい。スネてるのか。 「いずれアンタも連れてってやりますよ。千切りインゴットよりはマシなもの出ますから」 「定食屋…CEOに似つかわしくありませんよ」 「量があって早くて油っこくてウマイんですぜ」 「…理解しかねます」 07

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@ten01nj 「油っこい定食より、本が欲しいです」 「アンタ、これ以上ナードになってどうするんで。CEOに必要だとでも？」 「社が必要と判断した知識はインストールされてますが、自分で考えないと活かせないんですよ」 歩く辞書、ワカリマス？と文句をたれてくる。 08

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@ten01nj 「俺には試作品のイアイドインストールだけで充分ですわ。ニンジャ考古学とかナンデ入ってるのかね」 「浅学な蛆虫！自分達の出自に興味を示さないとは」 おい今スゲェ勢いでバトウされたぞ。 「よろしい、では私が講釈してあげましょう。カツ・ワンソーを始祖とする…」 09

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@ten01nj ……座学めいて眠くなるかと思いきや、それ以上だ。そも、聞きなれない単語が多すぎる。こりゃ論文だな。 やはり、マスターのニューロンで考えて、俺にワカル程度に噛み砕いてもらわねぇと。 舟をこぎながらニンジャ考古学の新説とその反論を聞いた。 10

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@ten01nj 一刻後！ 「アー、腹もこなれたでしょうし、座学を中断してカラテの稽古に戻りますかい？」 「IRC空間でのニューロンの揺らぎと、ディセンション時に顕著に現れる意識混濁に一定の関連性を解明した著者は…、…。稽古してましたね、そういえば」 11

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@ten01nj 「さて、残りのポン・パンチだ。あと40回」 「これ以上尺を取るつもりですか！それより私は武器を使ったカラテをしたいです」ワキザシを横目に言う。 「マァ最初だしな…カタナは握力がつくまでは危ねぇ。スリケンをオススメしますぜ」 投げれば両手も空くしな。 12

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@ten01nj 「フゥーム…遠のカラテを磨くという見地では、悪くはありませんね！」 小考したのち、サブジュゲイターが返事をした。どうしてコイツはここまで偉そうに言えるかね。 「ちょっくら待って下さいよ…」 血中カラテ濃度を凝縮させ、指先にスリケンを精製する。 13

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@ten01nj これがなかなか難しい。そもそも俺はクナイ・ダート派だし、ちまちま精製してる間にイアイを振るったほうがよっぽど手早いと思うのだが。 「まだですか！」 そうせっついてくれるな。クソ、ボーンアーマーなら一呼吸で24枚作れるんだが、肋骨の間に。アアーッ面倒クセェ 14

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@ten01nj 「出来た！出来たぜクソッ。ほらマスター、アンタの分ですぜ」 なんとか精製できた一枚を手渡す。 「ドーモ…」 ヌンチャクをプレゼントされたガキめいて…というよりは、スプーンで脱獄を目論む囚人めいてギラついた目でスリケンを見つめている。そんなにうれしいかい。 15

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@ten01nj 「アー、筆も墨もネェ」 ワキザシで軽く人差し指に切れ目を入れてから、血で壁に人の輪郭線を描きマップタツに縦線を引く。 「モータルもニンジャも弱点は同じだ。頭、首、胸、金的、身体の真ん中に当てりゃあ大抵死ぬ。ご存知で？」縦線を片手で指しながら聞く。 16

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@ten01nj 「ハイ、正中線ですね」 「アイアイ、正解ですぜ」おお、それっぽい。 「次はスリケンの持ち方。拳を軽く握って、人差し指と中指の第二関節でスリケンを固定、親指を添える」 17

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@ten01nj 「ス、スリケンが大きいです」 手に余っているが、マァしょうがないだろう。 「今度は小さめに作りますよ。さ、試しに投げて下せェ」 18

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@ten01nj 「手首のスナップを効かせて…正中線に、」おお、カラテ知識も活きてるじゃねぇか。 「イヤーッ！」 スリケンは絵の膝ほどに当たり、硬質なタイルに弾かれて床に落ちた。 「…難しいですね」 19

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@ten01nj 腑に落ちない顔を横目に、スリケンを取りに行く。 「何事も鍛錬の積み重ねです。ポン・パンチもスリケンも、アンタが繰り返し思考すると同じだ。積み重ねで上達する」 20

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@ten01nj 「イヤーッ！」 部屋の隅から、人の絵のある向かいの壁にスリケンを投かく。 「むぅ…」 スリケンは血で描いた人型の眉間、タイルの目地に突き刺さっていた。 21

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@ten01nj ーー胚生まれ野郎と稽古ーー了

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サブジュゲイターさん、描き方を整理しよう。イマジナリと物理書籍のわらいなく先生似のほうな。#njslyr #ウキヨエ pic.twitter.com/q67Tg7eB63

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