140ssログ3月

Twitterで書いてた雑多ssのログです。刀です。男同士です。
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やまたに @mw_snc

ひざまる、と呟いた。返事はない。辛うじて生を繋ぐ瞼はまだ開かない。守られた。守れなかった。だって、守ってはいけなかった。僕は惣領だ。折れてはいけない。彼は従者だ。主を守るのが仕事。だから、これで正しいのだ。だから、動かないことを選んだ僕を殺してやりたいのは気のせいだ。(髭膝)

2016-03-14 19:39:17
やまたに @mw_snc

騒がしいなぁ、と薬研は肩を竦めた。検非違使を狩ると決めると手入れに刀装に桜付けにと本丸中が騒がしくなる。そんな人員配置の中、薬研が指示された遠征だ。木炭をよろしくと必死で頼まれて、褒美は先払い。お姫さん、忘れもんはねぇか。なあに、ふたり旅のついでに資材を取ればいいのさ。(薬宗)

2016-03-15 20:04:24
やまたに @mw_snc

ちょん、と狐の指で頬をつつく。ぱちり、声も出さずにまばたきが返った。これはこれは髭切殿、鳴狐になにか御用ですかな。肩の獣が代わりに喋る。君の表情を変える出来事なら、弟の仏頂面もなんとかなるかなぁ、なんて。鳴狐を実験台にしないでいただきたい。うんうん、気にしない気にしない。(髭膝)

2016-03-15 20:25:24
やまたに @mw_snc

髪を結んで、そう乱にねだられて宗三は苦笑した。誰がやったものか、いや犯人はわかっているのだけれど、ぐちゃぐちゃだ。宗三さんのせいなんだから、拗ねる瞳を宥めながら櫛を取る。そもそも、僕とは髪質が違うんですけどねぇ。薬研にそんなことわかるわけないじゃない。まぁ、そうですね。(薬宗)

2016-03-15 20:40:34
やまたに @mw_snc

旦那、と薬研は呼ぶ。鶴の旦那、歌仙の旦那と。そこまでは知っている。で。髭切の旦那に膝丸さんや。そう呼び掛けられ問いかける。おい。どうして俺と兄者で呼び方が違うんだ。子供はきょとりとして、それから兄者ににやりと笑う。旦那なのかい。北の方かなぁ。待て、そんな基準なのか。(髭膝)

2016-03-15 21:08:43
やまたに @mw_snc

つまらない、と姫さんが欠伸をする。袖で隠して上品に。薬研がいないからなぁ、と厚がからかうと、しかめた顔も綺麗は綺麗だ。あんたは顔で特してるよなぁ、つい正直に呟くと、ころころと彼は笑って。この性格も薬研のお好みだそうですから。と、楽しそうに惚気を吐いた。(薬宗)

2016-03-15 22:32:49
やまたに @mw_snc

怪我は許そう。弟も転んだりしてるし、畑仕事でマメも作るだろう。そう前置きして薬研は救急箱を大げさに閉じた。完全な八つ当たりだ。だって、目の前の男は反省のふり一つすらしやしない。横の噛み傷だらけの男が深々と頭を下げるだけ。うーんと、ごめんね。その台詞は俺より弟に言ってやれ。(髭膝)

2016-03-15 22:42:40
やまたに @mw_snc

居間に入ると兄者と短刀が炬燵で寝ていた。虎の名を持つ子供と獅子と呼ばれた兄を順に眺めて、猫が二匹だ、と口にした。あまりに猫のようによく似た姿で丸くなっているから。そんな声に起きたのは短刀で。違いますよ、七匹です。ぺらり、捲った布団に虎の子五匹。ううむ、では蛇も混ぜてくれ。(髭膝)

2016-03-15 23:03:02
やまたに @mw_snc

お前と似ている、と口々に言われたのでその脇差を観察する。兼さん、兼さん。背の高い打刀のあとを追いかけている。兼さん、刀装は持ったの。おやつを持ってきたよ。兼さん、兼さん。いや、俺はああまではない。そう確信して隣の兄を見た。兄者、茶を入れて来よう。兄は小さく笑い声を立てた。(髭膝)

2016-03-15 23:32:21
やまたに @mw_snc

酔ったふりをした。隣の肩にもたれかかった。兄は仕方ないなぁと笑みを浮かべて、ごめんねと俺を抱えて宴を抜ける。あにじゃ、あにじゃ。腕を回して甘えると、いつもとは逆に世話を焼かれて。それが嬉しくて。なに、兄に嘘は吐いていないのだ、いいだろう。どうせ、兄者にはお見通しだから。(髭膝)

2016-03-18 00:57:56
やまたに @mw_snc

甘い恋の言葉はいつだって信じられない。だって、弟はいつだって兄に良いようにと動くのだから。だから、それも髭切の望んだこと叶えただけじゃないだろうか、と。そんな疑いに、彼は寂しそうにするだけで。ねぇ、そんな顔するくらいならわんわん泣いて詰って、信じろって怒鳴ってよ。(髭膝)

2016-03-18 06:55:50
やまたに @mw_snc

眠れ眠れと宗三は歌う。腕の中の短刀を抱きしめて、その頭を撫でながら。いいこいいこと甘やかす。そんな兄弟のやりとりを庭先から見つめていると、厚が肩を叩く。羨ましそうな顔すんならお前もねだってくればいい、と。薬研はいいやと首を振った。たった一度、歌ってもらったことがあるんだ。(薬宗)

2016-03-18 10:26:24
やまたに @mw_snc

かわり。かわり。あの子の代わり。それはきっと親切だった。弟が世話を焼くのと同じようにお茶を淹れてくれるひと。寂しいだろうと戻るまで話し相手になるひと。みんな優しいひと。みんなみんな遠ざけた。だって。弟の代わり。膝丸の代わり。片割れの代わり。なんて。あ、駄目。切っちゃ駄目。(髭膝)

2016-03-19 06:52:23
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花見酒、と薬研が酒を持ってきた。まだ蕾じゃありませんか。そう伝えると、にぃっと笑って。桜色の美人を見ながら飲んでんのさ、と。それじゃ年中花見酒じゃありませんか。しかも僕は、桜が見えない。仕方ない、と口付けて、恋を囁いて。そうしたら、ほら、あなたからも桜が待った。(薬宗)

2016-03-19 07:09:13
やまたに @mw_snc

春は花が美しい。わざとらしく髭切が言うと、弟はなにか言いたげに前髪に触れた。馬鹿だねぇ、緑が美しいなんて言うわけないのに。桃色が可愛いねぇ。黄色も鮮やかだ。誉めていくと、どんどん曇る顔。兄者が、花をお求めなら俺は。ありゃ、そんな話だったかい。(髭膝)

2016-03-19 07:24:56
やまたに @mw_snc

口付けはいつも悔しそう、腕に包むと目に見えて苛々と。それが可愛い、と宗三は笑う。はぁ、と一期は息を吐いた。買い物帰りに絡まれたのだ。あと、嫉妬深いのもとても可愛い。指先が一期の頬に触れる。撫でる。ああ、弟とふたりで行ったのがばれている。あなたこそ、とは口にしなかった。(薬宗)

2016-03-19 18:24:17
やまたに @mw_snc

佇まいは凛として、物腰は柔らかで、刀を握ると覇気がある。そう彼は兄を語る。興味のないことは忘れて、茶もろくに淹れられなくて、一人寝ができない、とも。称賛も不満もどれもこれも幸せそうな顔で言うから、今剣は肩を竦めた。もうのろけはごちそうさまですよ。(髭膝)

2016-03-19 22:41:52
やまたに @mw_snc

首の後ろに歯形。けだものですか。と顔をしかめたのは今剣で、否定もせずに笑ったのは髭切だ。いたいでしょうに。痛いねぇ。かわいそうでしょう。そうでもないよ。はっきりと否定する。これは愛情だもの、と。その兄の肩や腕にも噛み痕があることは、ふたりだけしか知らぬこと。(髭膝)

2016-03-19 23:07:17
やまたに @mw_snc

お前が欲しいよ。その言葉に弟は、一も二もなく頷いた。如何様にも、兄者の好きなように。欲しいのはそれじゃなくて、それじゃないんだけれども、面倒になって髭切はその体を抱きしめた。じゃあ、もう、僕のもの。そこから先は、このあと教えてあげればいいよね。(髭膝)

2016-03-20 07:35:35
やまたに @mw_snc

月が笑う。ひどい男だ、と。愛し子の名も呼んでやらんのか、と。髭切はきょとりとして、それから微笑んだ。大事なのは名前じゃなくて、僕の弟ということだよ。たったひとりをさすその名以外になにがいるというの。それでもあれは、膝丸と名を選んだろうに。月はなおも楽しそうに笑っていた。(髭膝)

2016-03-23 11:04:20
やまたに @mw_snc

お前の名は、そう尋ねられたから自分で選べるのだと理解した。薄緑、幼い子の声がする。ねぇ、おまえは薄緑でおわったでしょう。耳の奥で叫ぶように。そうだ。俺は、その名に不満などなかった。あの戦の天才が嫌いではなかった。けれど。膝丸、と呼んでくれ。兄者がその名で呼ばれるならば。(髭膝)

2016-03-23 11:09:05
やまたに @mw_snc

兄とか総領とか、そんなもの捨ててしまいたいと思うことが髭切にはある。ほんの一瞬。結局は己が誇りを捨てることなんて出来ないのだけれど。でも、弟のその足に口付けて、思うままの我儘を聞いてやりたいのもまた事実なのだ。人の心とはなんとままならないのか。髭切はそっと溜息を吐いた。(髭膝)

2016-03-25 12:49:44
やまたに @mw_snc

髭切と呼んでみて。その兄の願いに膝丸は首を横に振った。不敬だ、兄者。すると兄はつまらなそうに、そう、と呟く。命じはしない。それで諦めてくれるのだから、よかった。主を別ち場所も離れ、この上一具の関係すらなかったことにしなくないのだ。たとえ、兄弟におさまらぬ仲だとしても。(髭膝)

2016-03-25 12:53:55
やまたに @mw_snc

離さないで。そんな願い事は無意味だと宗三も知っている。彼の兄弟は多い。弟は幼い。兄たちは記憶があやしい。ならば、と世話焼きの薬研が手を出すのは当然のことなのだ。わかっている。けれど。好いたものを独占したいのもまた、当然でしょうに。そんな我儘、口には出来なかった。(薬宗)

2016-03-25 13:00:26
やまたに @mw_snc

とことこ、いいや、てとてと、と足音を立てて小夜が歩く。雛のように次兄の後ろを。わざとだろうなぁ、と薬研は苦笑した。気配を殺すと宗三を驚かせるから。いなくなったのかと思われるから。そして。宗三を見かけた薬研に、二人きりではないと教えるために。まったく、逢引もできやしない。(薬宗)

2016-03-25 13:07:06
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