140ssログ3月

Twitterで書いてた雑多ssのログです。刀です。男同士です。
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やまたに @mw_snc

いっそただの弟であれば、厳しく咎めもしただろう。それは不毛だ、と。国宝の弟にすら言えるだろう。もし彼らが道ならぬ恋をしたのなら。ままならないのは、彼が粟田口に脚光を浴びせたからだ。そして、それは主の意思すら無視した結果。ならば、思う通りにさせる他ない。と一期は目を閉じた。(薬宗)

2016-03-25 13:12:42
やまたに @mw_snc

弟だって、案外名前に頓着がないのだ。小天狗は言うに及ばず、歌の子だって春山の名前を気に入って。妖に縁があるもの、獣に縁があるものはそれぞれ親近感を覚える名を選ぶし、それすら面倒と弟の方と呼ぶものまで。それら全てに彼は返事をするのだから。でも、僕の弟、そう呼ぶのは僕だけだ。(髭膝)

2016-03-26 02:37:24
やまたに @mw_snc

切れ。そう声がした。嫌だ。敵と同じ名の刀を切れ。また声がする。彼はこの家に来た刀、友だらうに。髭切は何度も拒否した。業を煮やした人間がそっと甘く囁くまで。それほど大事な刀ならお前の新しい弟にしよう。ああ、それを許してはいけない。僕の弟は彼だけなんだから。鋼を切る音がした。(髭膝)

2016-03-29 00:30:27
やまたに @mw_snc

春ですねぇ。宗三は暖かな風にそう呟く。春だなぁ。返る声ものんびりとして、陽気にあてられたようだ。羽毛布団は片さなくては。弟の部屋の火鉢も片しとかねぇとな。ぽつり、ぽつり、今後の話。今夜からは人肌がなくても寒くなさそうですね、とは言わなかった。ただ、片側を開けて布団に入る。(薬宗)

2016-03-29 00:35:42
やまたに @mw_snc

預けた爪先から、パチ、パチンと音が鳴る。爪を切らせてくれ、と言った男の真剣な顔を宗三は見下ろした。なにが楽しいのか。そう思う反面、自分はとても楽しい。彼が自分に傅いて世話すること、馬鹿みたいに集中していること。それから、あなた好みに整えられること。ねぇ、この長さがお好き。(薬宗)

2016-03-29 01:11:03
やまたに @mw_snc

行光、と呼ぶ声がする。唇を尖らせたお姫様には近寄るな。それをわかっていて、行光は隣に座った。まーた喧嘩か。はい。謝る気は。ないです。きっぱりとした返答に、笑って手を差し出す。じゃあ、宗三の奢りで甘味屋行くか。その手は、握られる前に影で見ていた男に拐われるのだけれど。(薬宗)

2016-03-29 01:21:09
やまたに @mw_snc

お手をどうぞ、桜姫。そんな戯れと共に差し出された手を宗三は取った。どちらまで。尋ねるも、どうせ本丸の中なのだけれど。ついてのお楽しみってやつだ。悪戯な笑みを浮かべる彼に大人しく従って。手を引かれるまま歩いて。このまま冥府へ連れて行かれてもいいな、なんて馬鹿なことを思った。(薬宗)

2016-03-30 13:24:22

してしまった。

やまたに @mw_snc

呼んでしまった。あおえ。君の名前。だだもれだ、と三日月がからかった。少しは抑えたらどうです、と狐が呆れた。それほどまでに心を写した声だと言う。自覚はない。でも、と極力避ければ君は寂しそうな顔をして。だから。呼んでしまった。ありったけ、君が好きだと叫ぶ代わりに。(石かり)

2016-03-02 00:29:03
やまたに @mw_snc

触ってしまった。きっとこの思いが顕にになってしまうから、決して薬研に触れないと決めていたのに。隠したまま、二度目の別れを恐れていたのに。触れない距離なら傷つかないって。なのに。あなたが悪いんです。だって、あなたが手を伸ばすから。触れるしかないじゃないですか。(薬宗)

2016-03-02 00:34:56
やまたに @mw_snc

誤魔化してしまった。嘘まで吐いて兄を遠ざけた。違うんだ。俺は兄者を尊敬してる。敬愛してる。また誤魔化した。この想いは抱えてはならぬから。けれど、兄者。どうして、兄と呼ぶなとひどいことを言うんだ。そうして涙をひとつ溢して、なんでもないと誤魔化してしまったんだ。あなたも。(髭膝)

2016-03-02 00:42:24

数珠丸さんいません

やまたに @mw_snc

可哀想にね、勝手なことを言って抱き締めてくる。暫くは寂しいね、暖かい腕の中に閉じ込めながらそんなことを言う。私が傍にいるからね、今までもいた癖に。まるで哀れで寂しい子だから仕方なく、なんて言い方はやめてくれ。僕は君がいればいいよ。強がりじゃない。君は信じてくれないけど。(石かり)

2016-03-01 21:21:39
やまたに @mw_snc

じゅっかいピザって言ってみて。そんな遊びに、これだ、と膝丸は兄の元へ急いで行った。兄者、十回。そこで止めたのは、果たしてそれで呼ばれて満足なのか。そこまでしても忘れられていたら、と思ったからで。そんな弟に、髭切はおや、と一瞬悩んで。十回好きって言って欲しいの。違…わない。(髭膝)

2016-03-18 22:06:48
やまたに @mw_snc

ずっとこうしていて。触れる肌に、喉から出そうになった言葉は飲み込んだ。代わりに、もっと、と甘えてみせる。薬研はあんたの気が済むまで、なんて言うけれど、そんなものは来ないのだ。離れないで。繋がっていて。歪なひとつの生き物のようになればいいのに。そんな願い、口に出来ない。(薬宗)

2016-03-18 22:17:28
やまたに @mw_snc

まじめなひとほど手がつけられなくなるらしい。どこかで聞いた話に、髭切は納得した。はて、どうして弟は兄者兄者と鳴きながらあちらこちらに口付けるのか。どうしたんだい、膝丸。奥の手を使っても、てんで駄目で。わかったわかった。ほら、お前のお好きにおし。お兄ちゃんは君のだよ。(髭膝)

2016-03-18 22:22:40
やまたに @mw_snc

るり色の飴を、がり、と噛んだ。なんの味か薬研は知らない。赤や黄色と違って想像もつかない。ただ、彼の瞳によく似ていたからと口に運んだ。左文字の青。宗三は半分しか持てぬ青。それを砕いて飲み干した。まるで、彼と兄弟の縁を切るごとく。割れた破片で、口の中がピリリと痛んだ。(薬宗)

2016-03-18 22:33:54
やまたに @mw_snc

こいをしたのはいつからだろう。石切丸は考える。日常か、戦場か、なにかの話の中でだろうか。どれも答えにはならなくて、けれどどれも愛おしくて。ああ、いつから君はこっそりと私の心を染めていったのだろうね。そう彼のせいにしてしまうと、呆れたような視線がきて。君こそね、と。(石かり)

2016-03-18 22:43:00
やまたに @mw_snc

なつが待ち遠しい、と薬研が呟く。そうですか、と首を傾げた。宗三としては長い髪は蒸れるし、着崩し方もひどくなる季節だ。元から晒した長い足にふと目をやって、はたと気付く。髪を結い上げるのがお好みですか、開いた裾がお好きですか。その問いに、男はにやりと笑った。(薬宗)

2016-03-18 22:51:23
やまたに @mw_snc

いってくる、と向けるその背が嫌いだ。いつも自分の後ろにつく弟が、自ら遠ざかるその瞬間が。そこから沸き上がるのは焦燥で。どこ、どこなの、僕の半分は。あの子がいい。あの子しかいらない。昔と似た感情の波に、髭切は深呼吸を繰り返す。大丈夫、あの子は戻ってくるもの。そうでしょう。(髭膝)

2016-03-18 23:29:07
やまたに @mw_snc

天下五剣は増えなかったなぁ。獅子王が苦笑する。ひとり、少し寂しかったんだろ、と暗に言われているようだった。そうだな、肩を並べる相手は欲しい。だがな、獅子や。三日月はその腕に愛し子を包み込む。お前が寂しさを埋めてくれるのだろう。そう言うと彼は当たり前だと笑った。(じじしし)

2016-03-22 07:25:37
やまたに @mw_snc

兄様がしょげているので、と宗三は彼にかかりきりだ。縁もゆかりもないだろうに、気が合いそうだと言う理由で勝手に期待しておいて。そう悪態をつきたくなるのは、逢い引きを断られたからだろう。随分狭量だ、と薬研は自嘲した。夜中、忍び込んで拐ってしまおうと決めながら。(薬宗)

2016-03-22 07:33:30

源氏六人

やまたに @mw_snc

小天狗に避けられる、髭切はその背を見送った。一人しか人の主を持てなかった子供は、彼に拘る。彼を討った男の刀にも然り。僕はどうでもいいんだけどなぁ。むしろ感謝しているのだ。彼の運命が僕らを再会させたのだから。そう言えばまた嫌われるのだろうけど。頼朝、君にも感謝しているよ。(源氏)

2016-03-02 07:15:59
やまたに @mw_snc

獅子二匹、そう主は呼ぶ。あえてそう呼ぶ理由を、古参の獅子王は知っている。単なる猫、猫科好きだ。獅子の子もがおーと鳴けばいいのに。その呟きに苦笑する。彼の穏やかな笑みの中身に気付かないのか。平氏についた刀といる不服さや、弟以外と纏められた苛立ちを。さて俺の足はまだ無事か。(源氏)

2016-03-02 07:28:15