ニンジャスレイヤー二次創作「テンダー・ホワイト・ドラゴン・アンド・ブルタル・レッド・ブラック・ドラゴン」＃１

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◆してみよう◆ ◆マスター・ししジニー＝サン .@jiny3jiny34643 ならびに、マスター・うさぎ小天狗＝サン .@USAGI_koTENGU に捧ぐ◆ ◆敬意◆ラブ・リスペクト・ラブ◆一方的◆身勝手◆ ◆物語は◆カラテだ◆

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オスモウの聖地、リョウゴク・コロシアム。

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オスモウの定期興行が開催されていない期間には、コンサートや他の格闘技イベントにも用いられている。そして今、ドヒョー・リングではなく5本ロープのマーシャルアーツ・リングが据えられたリョウゴク・コロシアムは、ネコネコカワイイのライブもかくやという大観衆の熱気に包まれていた。

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ネオサイタマ格闘技振興連盟が主催する大人気の格闘技イベント。その名も「トーシン・カラテヒーロー・グランプリ」。公式スポンサーにはネコソギ・ファンド、カラカミ・ファンド、ヨロシサン製薬といった錚々たるカチグミ企業。圧倒的な資金力による大規模プロモーションを各メディアに展開している。

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トーシン・カラテヒーロー・グランプリのレギュレーションは、打撃部門、組技部門、バーリトゥード部門に大別される。ジュドー、アイキドー、オスモウ、パンキドー、カンフー、そして日本古来のカラテ。多種多様なバックボーンを持つ格闘家が、高額賞金を目指して激しい戦いを繰り広げる。

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毎月1回開催という、格闘技興行としては殺人的に過密なスケジュールであっても、観客や世間が飽きることはない。その資金力で未来ある選手を発掘し、もしくは他の中小プロモーションから半ば強奪する。無論、スポンサー各企業や、リアリティ・ショーを放映するNSTVには多大な利益がもたらされる。

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TKグランプリは既に、オニタマゴ・スタジアムなどでの開催を含めて8回行われている。日本社会においてキモンとされる9回目の大会も、予約開始から1時間経たぬうちに全席売り切れた。1年前まで格闘技に興味を抱かなかった層までその名は轟いていた。メディア王カラカミ・ノシトの力は強大だった。

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選手も、観客もみな、大会プロデューサーにして「統括本部長」の役職名を名乗るヤマ・マサカツ氏の鷹揚な笑みと、あの言葉を心待ちにする。決め台詞というもののインパクトを彼は心得ている。リョウゴクに集ったすべての人が、予定調和のセレモニーに酔い、幸福なる無思考の熱狂に自ら身を委ねるのだ。

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ただひとり――コロシアム2階席ムコー・ショーメン・エリア、最も外側の立ち見席から目をすがめてリング上を見つめる、トレンチコートにハンチング帽の男性を除いては。

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リング上に並んだ12名のタイキストの、一糸乱れぬ重低音ビートのアンサンブルは、ヤマ氏にスポットライトが集中した瞬間にブレイクした。完璧な統制であった。彼は満足げに四方を見渡し、鈎爪めいて五指を軽く曲げた右手を高々と掲げ、宣言した。ヘッドセットマイクが彼のバリトンをエンハンスした。

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「このリングへ、カラテの頂点、掴みに来いやァ!!」

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【テンダー・ホワイト・ドラゴン・アンド・ブルタル・レッド・ブラック・ドラゴン】＃1

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暗鬱な重金属酸性雲が今日も空に蓋をする、退廃サイバー都市ネオサイタマ。昼下がりのコクボ・ストリート。狭いながらも実際奥ゆかしいアトモスフィアを残すチャ・カフェ「シゾーカ」にて、二人の男女がテーブルを挟み向かい合う。

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男性はやや長身で中肉、古びたトレンチコート姿。髪を整えスーツを着れば、どこにでもいる中年サラリマンとして風景に溶け込むであろう。一方の女性は、高級ハンドメイド・コケシめいた美しい白い肌と黒髪、細い目。しかし表情には隠しきれない不安と苦悩がにじむ。その胸は標準的であった。

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「主人は、ここ最近でこそ格闘家としての露出が増えましたが、もともとはトレーニングジムとしてのドージョーを実際慎ましく経営してきた人です。それが、ヤクザのジアゲ・ビズに狙われるなんて……」女性は頬に手を当て、眉根を寄せてうつむいた。男性はメモを取りながらじっと耳を傾ける。

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女性の名は、ペク・ミナ。彼女の夫ペク・ファランは、ここ1年の間に大ブームとなりつつある格闘技イベント「トーシン・カラテヒーロー・グランプリ」の人気選手である。日本では修得者が極めて少ないカラテ流派「テコンドー」の若きタツジンとして、主催からも格闘技評論家からも高い評価を得ている。

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男性――暗黒非合法探偵イチロー・モリタは、ここまでミナから聞いた話をニューロン内で整理しつつ、ナンシー・リーからもたらされたTKグランプリの内情と突き合わせていた。スポンサー企業の面子でおおよそ予想された通り、この興行もまたアマクダリ・セクトの資金源の一つとして運営されている。

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主催団体であるネオサイタマ格闘技振興連盟、それ自体はアマクダリの勃興以前から古い歴史を持つ。興行の安全を保証してもらうかわり、ソウカイ・シンジケートに一定額のミカジメ・フィーを納入する、実直で伝統的な日本のプロモーション・スタイル。しかしソウカイヤ崩壊後、その様相は一変した。

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有名警備会社の大株主であるヤマ・マサカツ氏を連盟会長に迎え入れたのを転機に、連盟はより大規模な大会の運営に乗り出した。リョウゴク・コロシアムやオニタマゴ・スタジアムなどの大型会場を押さえ、ライティングやスモーク、煽り映像などの過剰演出によって観客を巧みに熱狂へと誘うようになった。

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ナンシーのIRC調査によれば、ヤマ氏がアマクダリ・セクトと何らかの関係を持つことは疑いようがない。そして恐らくはニンジャ。だが、容易に全体像のつかめない巨大システムであるアマクダリの中で彼がどれだけの地位を占めているのかは、足を使ったモリタの実地調査でも未だに不明瞭であった。

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そんな中、TKグランプリ出場選手であるペク・ファランのテコンドー・ドージョーに対して、ヤクザクラン構成員とおぼしき輩の脅迫めいた訪問があったのだ。雀の涙ほどの「解決金」と引き替えに、ドージョー敷地の所有権を譲り渡すようにと。ファランは毅然と断った。翌日、門下生数人が重傷を負った。

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負傷した門下生たちは、みな一様に襲撃時の記憶の混濁や失禁といった自我科案件症状を起こしていた。ファランの下でそれなりにカラテを積んだ弟子たちであり、暴力の恐怖だけでそこまで精神錯乱するとは考えにくい。見舞いを終えたミナが思い至ったのは、ニンジャ・リアリティ・ショックという可能性。