鈍色の処女達

高嶋ぽんず@くノ一の魔女２巻、DLsiteにて発売中。 @ponzz

初音「千早お姉さま、薫子お姉さま、エルダーシスターとなった方には、戦車道を履修することを望まれているの。勿論、それぞれの都合があって履修できない場合もあるけど、先の戦車道全国大会での大洗女子の活躍からか、最近は富に戦車道が盛り上がってるから、お二人には……」

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千早「その……私は、合気道などはやっておりましたが、戦車道は……」 薫子「ああ、私はちょっとだけやったことがあるけど、でも経験者っていうほどじゃないよ？」 初音「お願い、できませんか？」

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優雨「わたし……ちはやがせんしゃにのってるとこ、みたい……」 史「千早様、通信手ならお手伝いできます」 千早「優雨、史……」 薫子「どうする？ 千早。わたしは構わないけど」 千早「はぁ……仕方ありませんね」 初音「じゃあ、引き受けてくれるの？」 千早「ええ……」

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初音「よかったぁ。あのね？ うちの学校は、イギリス系ということもあって、戦車はイギリスの戦車のみになってます。で、戦車道受講者は100名ほど。中学からの経験者は50人ちょっと。 お姉様は、センチュリオンmkⅠの車長を務めていただくのが慣例になってるの」

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薫子「そっか。じゃあ、私がセンチュリオンの装填手かな？」 千早「え？ その、戦車道経験者の薫子さんが車長をやったほうがよろしいのでは？」 薫子「そうなんだけどね。装填手って、あれで車長よりも大変なんだよ。千早が車長やったほうがいいって」

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陽向「イギリス系って、やっぱり英国面な戦車があれやこれやと……」 初音「残念ながらカヴェナンターはありません。あんなの使ったら、乗員か大変な事になっちゃうでしょう？ それじゃ、お願いしますね？」

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千早「あ、あの……スカート、短すぎませんか？」 薫子「確かに、ちょっと短いよねぇ。それにしても……」 千早「な、なんですか？ 薫子さん」 薫子「千早って、本当に足が綺麗だよねぇ」 千早「何を言ってるんですか、薫子さん」 ？？「コホン……」 千早、薫子「‼︎」

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千早「宜しくお願いします、美作さん」 薫子「お願いします」 春「こちらこそ、お願い致します。確か、ナイトの君は戦車道を嗜んでおられたとか」 薫子「やってたといっても、中学の頃の3年だけだから、そんなには……」 春「いえ、3年も学んでおられたのなら凄いと思います」

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千早「美作さん、その……私達が乗ることになる戦車……センチュリオンですか？ どのような戦車なのでしょう。私、戦車にはあまり明るくないもので」 春「ああ、さすがの白銀の姫君も、戦車の事はご存知ないのですね。まぁ、有り体に行ってしまえば、戦車道で使える戦車の中で一番強い戦車です」

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注釈《センチュリオンは、1944年に開発が開始され、1945年に６輌が完成した第二次大戦最後発の戦車である。実戦に投入される事はなかったが、Mk.13まで改修を重ね、20年に渡って英国の主力戦車として活躍した。高校戦車道で使用が認められるのは、Mk.Ⅰのみとなっている》

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千早「それを、薫子さんはともかく、私のような未経験者が乗るというのは。元々学んでいらっしゃった戦車道受講者の皆さんが乗るべきでは？」 春「いえ、エルダーシスターは聖應女学院の象徴。お姉様が乗ってこそのセンチュリオンなのです」

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千早「ですが、それは私達の手にあまるものですし、せめて三人で動かせる戦車はないものでしょうか。それだけ強い戦車には、相応の選手が乗るものです」 春「ふふ、やはりそうお思いになるのですね、お姉様は」 千早「それは……どういう事でしょうか」

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薫子「それはね、千早」 千早「薫子さん？」 薫子「戦車は戦車兵が強くするからなんだよ」 千早「戦車兵が？」 春「ナイトの君のいう通りです。戦車がいくら強くても、それを使いこなさなければ強くはないのです。戦車道を嗜む者は、先の大会でその事実をまざまざと見せつけられましたから」

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薫子「私もあの試合は見たよ。第63回戦車道全国高校生大会決勝」 千早「ああ……それはニュースで見た覚えがあります。確か、大洗女子が逆転優勝を飾った試合でしたか」 薫子「千早にはわからないかもしれないけど、あの試合は凄かった。あれを見て、奮い立たない戦車道の選手はいないよ」

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春「そうです。私達はあの試合をみて気づいたのです。私達は強くあらねばならない、と。自分たちが乗っている戦車に恥じぬ戦いをしなければならないと」 千早「そう、ですか……」 春「はい。私達は、自分が今体を預けている戦車を使いこなそうと、そう決意したのです」

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千早「それで、センチュリオンを私達に……」 春「はい。私達は、決して伝統のためにお二人にこのセンチュリオンを預けるわけではありません。私達が、私達の戦車道を誇りを持って歩むために必要な事だからこそ、なのです。おわかりいただけたでしょうか、白銀の姫君」

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春「では、お姉様方、戦車道受講者の皆さんに挨拶を。戦車道訓練場で待ちわびています」 千早、薫子「「はい」」

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ーー櫻館談話室 千早「んー……」 薫子「どうしたの？ ずいぶん難しそうな顔して本読んでるけど。眉間のシワ、残っちゃうよ？」 千早「ああ、薫子さん。戦車道の件について、ちょっと考えてました」 薫子「どんなこと？」 千早「センチュリオンの乗員についてです」 薫子「あ……」

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千早「一人足りないのですが、それを美作さんにお願いしようと考えたのです。ですが、美作さんは恐らく、生徒たちをまとめるだけで精一杯のはずです。センチュリオンに乗っていただくのは流石にためらわれます」 薫子「かといって、ことがことだけに誰かに簡単に頼るわけにもいかない、か」

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千早「そうです。乗員の役割を確認したところ、車長、装填手兼通信手、操縦手、砲手の四名となっています。車長は私、装填手は薫子さんにお願いするとして」 史「千早様、薫子様、お茶をシナモンティーをお煎れ致しました」 薫子「あ、いい香り」 千早「ありがとう、史」

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香織理「あら、いい香りね。シナモンティー？」 史「はい、千早様がお悩みになられていたので、気分転換にと。香織理様もお飲みになられますか？」 香織理「お願いできる？」 史「かしこまりました、少々お待ち下さい」 香織理「それでどうしたの？ 随分難しい顔をして」

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薫子「エルダーの慣例ってことで、いきなり戦車道やることになったんだけど、戦車の乗員でちょっとね」 香織理「ああ、センチュリオンの乗員が一人足りないってこと？」 千早「どうしてわかったんですか？ 香織理さん」 香織理「日陽が昨日から煩いのよ。お姉様と戦車の取り合わせがー、とか」

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薫子「ははは……」 千早「香織理さん、誰か心当たり無いかしら」 香織理「んー……流石に戦車道をやってる知り合いはいないわねぇ。初音に協力してもらったら？」 千早「それも流石に。私たちや生徒会長が募集したら、ちょっと大変なことになりそうだから」

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香緒理「それもそうかぁ。でも、陽向に誰かいないか聞いておくわね？」 史「香織理様、お待たせいたしました」 香織理「ん、いい香り。史。相変わらず上手ね。陽向もこれぐらいできてくれたらいいんだけど」 史「ありがとうござます。千早様、御前に協力を仰がれてはいかがでしょう」

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千早「雅楽乃に？ あの娘に、そんな知り合いいるかしら」 薫子「ここで眉間にシワ寄せて唸ってるよりはましだと思うよ」 香緒理「そうそう、千早の眉間、シワの後できてるもの。可愛い妹たちが見たら、心労で卒倒し兼ねないわね」 千早「そんなに難しい顔してたかしら」