【ミイラレ! 青行燈のこと】
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(ドーモ、しかなです。いつもお世話になっております。これからオカルトコメディめいた一次創作【ミイラレ!】をお送りします。ひょっとしたら私が細々投下していたものをご覧になった方もいるかもしれない……そんな方を混乱させてしまうと困るため、前説をつける) #4215tk
2016-04-25 20:04:19(これから投下するミイラレはリメイク版……つまり、少し前まで投下していたやつと登場人物は同じだが背景をやや変えている。これを踏まえないと前作の続きかな? と誤解で頭がハテナに埋め尽くされ紆余曲折を経てシーライフに悪影響が出る可能性がある。ご容赦ください) #4215tk
2016-04-25 20:08:25不慮の事態はいつでも起こりうる。日条 四季は高校に入るまでの短い人生の中で、それを嫌というほど学んでいた。とはいえ……と、彼は心の中で誰にともなく抗弁してみる。家に帰った途端に天井から釣り上げられるような事態を予測できる人間など、そうはいないはずだ。1 #4215tk
2016-04-25 20:16:08今、彼は暗闇の中にいる。無論のこと、玄関の上には人が入れるスペースなどありはしないし、ましてや人間を吊りあげるような装置が備え付けてあるはずもない。彼自身や元々ここに居座っていた『住人』とは違って、この家は普通の和式住宅なのだ。となると、原因も自ずと掴めてくる。2 #4215tk
2016-04-25 20:20:18「……また怪異、かぁ」『ええ、その通りで』呟きに応えるようにして、青白い炎が彼の目の前に灯り、一人の女を照らし出す。白い着物に藍色の羽織という出で立ち。それが人でないことは、炎に照らされてもなお薄青い肌の色や頭から生えた牛のような角、なにより纏う空気から明白だ。3 #4215tk
2016-04-25 20:24:10「いやはや、風の噂に聞いてはおりましたが」どこからともなく取り出した扇子で口元を隠し、女が言う。その目が笑みの形に細められた。「たしかに肝が太くできていらっしゃるようで。その年頃の人間にしては大したものですよ、ええ」「慣れてるだけだよ」四季は肩を竦めて見せた。4 #4215tk
2016-04-25 20:28:11慣れている。その言葉は嘘でもなんでもない。生まれてこのかた、四季は目の前の鬼女のような存在……いわゆる『怪異』と呼ばれる者たちと縁が深い。非常に、や異常に、という言葉をつけても決して不足はないほどに。そのような存在が見えるのみならず、向こうから近寄ってくるのだ。5 #4215tk
2016-04-25 20:32:08「それでなんの用?」楽しげにこちらを見ている鬼女の瞳をまっすぐに見返し、四季は問う。怪異との話すときは冷静に。動揺を見せるとつけこまれる。彼が短い人生の中、何十もの怪異との触れ合いから得た教訓である。「わざわざ世間話をしに人の玄関先で待ってたわけじゃないでしょ」6 #4215tk
2016-04-25 20:36:16鬼女がくつくつと笑う。「いや、話が早くて助かります。もちろん大事な用件がありますとも。わざわざこの家のおっかない座敷童の目をかいくぐって、話し合いの場を設けるくらいの手間をかけてしかるべき大事な用がね」御影(みかげ)のことか。なかなか油断ならない手合いのようだ。7 #4215tk
2016-04-25 20:40:08「さて、日条 四季殿」と、鬼女は前置きした。当然のように自分の名前を出され、四季は少しだけ眉間にしわを寄せる。鬼女が笑みを深めた。「……名を知られていてもそこまで動じる気配なし。ま、近場の怪異どもの間では知れ渡っておるようですしねえ。そこで動じはしますまいか」8 #4215tk
2016-04-25 20:44:30「ずいぶん話が回りくどいね」四季は遠慮なく言った。怪異と人間のペースは往々にして違う。彼らに合わせていると恐ろしく時間を取られるということがままあるのだ。なので、自分から話の主導権を握りに行く必要がある。「さっさと済ませて欲しいんだけどな」9 #4215tk
2016-04-25 20:48:10多少つっけんどんな言い方になってしまったか。四季は心中で反省する。が、当の鬼女は特に気にした風もない。「積極的ですねえ。いいことです……さて、こちらだけそちらの名前を知っているというのも不公平。なので名乗らせていただきます。御伽 巡と申します。以後よろしく」10 #4215tk
2016-04-25 20:52:17流れるように自己紹介し、巡なる怪異は丁寧にお辞儀した。四季も釣られてお辞儀を返し、「……以後?」思わず眉をひそめる。この言い方、まるで今後長い付き合いになるとでも言いたげではないか。「ええ、そうですとも。しばらくは貴方の側に留まらねばならぬのでして」11 #4215tk
2016-04-25 20:56:13二人の間に浮かんだ青白い鬼火が風もないのに揺らめく。涼しい顔をしている鬼女に、四季は視線で言葉を促した。ぱちん、と扇子が閉じられる。「用を先に言ってしまうのとですね。とある百鬼夜行の復興にご協力いただきたいのです」「……えっと、ごめん。百鬼夜行?って?」12 #4215tk
2016-04-25 21:00:29