【Голубй крейсер-空色の巡洋艦】

初霜×グラーフという珍しい組み合わせ
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…朝からホント賑やかね」 睦月が頭に浮かんだ言葉をいつの間にか部屋の入り口に佇む人物が代弁した。 「Romaさん、おはようございます」 「…Buongiorno。貴方も、大変ね」 ウェーブがかった髪に眼鏡、寝巻き姿の白人女性、彼女の名はRoma。伊国の戦艦級艦娘。

2016-05-17 21:02:18
葛葵中将 @katsuragi_rivea

先の作戦において伊国側隷下の代表として葛葵に協力した立場にある彼女。 気乗りしなさそうな態度とは裏腹に葛葵とリベのやり取りを見つめて僅かに微笑んでいるような印象を受ける。 元々リベッチオの保護者代わりのようなことをしていたRomaは先だっての作戦最中葛葵に意外なことを口にした

2016-05-17 21:03:39
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「あの子、リベがあんなに楽しそうにしてるのを見たのは初めて。貴方、父親に向いてるんじゃない?」 葛葵は鬼のような形相と共にそれを全力で否定して口論となっていたが… そのことがあってからRoma自身も(本人は否定するだろうが)葛葵に好意的に接しているかのように見えるのも事実。

2016-05-17 21:05:23
葛葵中将 @katsuragi_rivea

リベが起きてすぐに葛葵のところに行きたいと言うから…などとの理由で付いてきたらしいが 何も寝巻き姿のままで無くても良さそうだと睦月は思案する。 「Roma!このガキを何とかしてくれ!!」 …あの男はどれだけ警戒心を抱かれていたいのかと同時に彼の人望(笑)なのだと思うに留めた。

2016-05-17 21:08:01
葛葵中将 @katsuragi_rivea

そうして苦笑いを浮かべる睦月はやがて視線に気づいた。Romaのものだ。 だが、その視線は睦月ではなく彼女が先程拾い、手にしていた写真に向いていた。 「これですか?提督の書類の間から出てきたんですけど…」 「…ちょっとだけ、見せてくれる?」

2016-05-17 21:09:51
葛葵中将 @katsuragi_rivea

睦月もまじまじとその写真を見たわけではないが、 寒冷地仕様、それも鮮やかな水色の外套を羽織る銀髪銀眼の女性が写っていた。 その姿を見たRomaは首を傾げた。 「…?この子、どこかで見た記憶があるわ…」 「そいつか?このへんを最近荒らし回ってる海賊紛いの一味、その一人だよ」

2016-05-17 21:11:43
葛葵中将 @katsuragi_rivea

Romaの疑問には葛葵が答えた。どうやら観念したのかリベッチオを背負う形で彼女の頬ずりを甘んじて受けていた。 「このあたりの制海権を一時的に確保した代償に…厄介な連中が動き始めてね。私の頭痛の種だ、おかげで眠れやしない」 葛葵は(絵面と裏腹に)真摯な口調で続けた。

2016-05-17 21:13:06
葛葵中将 @katsuragi_rivea

海賊行為など時代逆行も甚だしい、と付け加えたあとに葛葵が説明した内容はこうだ。 彼ら、あるいは彼女達も武力を有した国家や深海棲艦とはまた異なる第三の勢力。 この西方海域や果ては北方海域に至るまで活動を広げていた勢力だったが… 第二次深海大戦勃発と共に鳴りを潜めた。

2016-05-17 21:15:01
葛葵中将 @katsuragi_rivea

海を我が物顔で支配する深海棲艦共にいずれ駆逐されていく運命だと思われた彼らだったが ここ最近になって再び勢力を取り戻しつつある。 そのきっかけは型録に登録されていない非正規艦娘が所有国家から複数名、第三勢力に加入したこととされている。 その中核を担う一人が写真の女性。

2016-05-17 21:17:26
葛葵中将 @katsuragi_rivea

葛葵は背後にある海図に目を向けた。それに釣られ睦月とRomaも同時に視線を送る。 海軍の勢力を示す青、深海棲艦を示す赤、それらの上から灰色で塗り潰された範囲が彼らの勢力図なのだろう。 それは…人類に仇なす深海棲艦を喰って代わろうかというほどまでに勢力を広げていることが伺える。

2016-05-17 21:19:20
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…人類の敵は内側にも存在するということだ。リベ、そろそろ離れろ。ウザったい」 リベッチオを引き剥がしながら葛葵はそう締めくくった。だが、それをハイそうですかと睦月は飲み込めなかった。 「それって…私達が彼女達を相手にすることもあるってことじゃ…」

2016-05-17 21:21:06
葛葵中将 @katsuragi_rivea

懸念。これまで日ノ本国海軍が相手にしてきたのは人ならざる者として扱われる深海棲艦。 それに何の疑問も抱く必要性も感じることも無かった。 だが、艦娘相手に武力で対抗するとなれば話は別。 "人"を相手にするということに少なからず抵抗を覚えた。 睦月の言葉に葛葵は眉を顰めた。

2016-05-17 21:23:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

睦月ははっと自身の発言が迂闊なものであることを思い返した。 葛葵はオリジナルと称される先天的な艦娘達にも可能なら人として同じように振る舞えるよう尽力してきた一人。 人同士の争いなど誰よりも望んでいないことなど明白であるが故に心苦しい選択を余儀なくされていることを察した。

2016-05-17 21:25:08
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…ごめんなさい。提督」 状況が飲み込めず戸惑いながら両者の顔を交互に見ているリベッチオの頭を撫でながら葛葵は言った。 「そうはならないように上とも協議はしている。君達に"人殺し"の十字架を課したくはない。彼らと話し合いの場でも持てるならばいいのだがね…私達の力不足だよ」

2016-05-17 21:26:28
葛葵中将 @katsuragi_rivea

彼が時折見せる憂いは他の者が抱えているものよりもずっと深い闇を孕んでいるかのよう、そう睦月は思慮をする。 普段が普段なだけに…それを紛らわせるためのフェイクであろうことすら勘繰る時もあるほどに 「謝るのは私のほうだ。すまない」 葛葵は途方に暮れるかのような声で睦月に告げた。

2016-05-17 21:28:41
葛葵中将 @katsuragi_rivea

無論、彼に罪などあろうはずも無い。それでも謝罪の言葉を口にしなければならなかったのだろう。 自らの指揮一つで忌避する事態へと発展しかねないのだから… 「ま、そのことは私に任せておくといい。あまり気に病まないでほしい。 …それより、話してたらお腹空いた。朝食にしないか?」

2016-05-17 21:30:24
葛葵中将 @katsuragi_rivea

重くなった空気を振り払うかのようにざっくばらんとした口調に戻した葛葵の横顔を睦月は眺めていた。 この均衡が崩れた時に、元の彼は存在し得ないところに行ってしまうのでは無いかという一筋の不安に苛まれた。 (ううん、何考えてるんだろ…こんなんじゃ如月ちゃんに心配かけるよね)

2016-05-17 21:32:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

出来るならば…平穏が訪れるその時までは… そう静かに願いを重ね、睦月はその思いを心に仕舞い込み、 今しばらくはこのことを忘れるよう、逆に彼に負担に感じさせてはならないと堅く胸に誓った。

2016-05-17 21:33:31
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…そう、ですね!睦月もお腹好きました!」 気を取り直すように睦月が声をあげるとリベもそれに便乗した。 「リベも!パパが作るの?」 「フレンチトーストなら作れるけど…それでいい?そしてパパはやめろ。お前だけ朝食抜きにするぞ」

2016-05-17 21:35:41
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「えー?」 「えー?じゃない!」 いつもの調子に自然と顔も綻ぶ。 葛葵はまたリベの呼び方に文句を垂れているが、このほうが安心出来る。 睦月は胸を撫で下ろし息をついた。その視界の端に先ほどから押し黙り一言も発しないRomaの姿が映り、 視線をそちらに移した。

2016-05-17 21:37:19
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「Romaさんもどうですか?」 睦月の問いかけに彼女は微動だにせず手にした写真に注視し続けていた。 「Romaさん?」 「…思い出した…」 彼女は一言ぽつりと呟いた。その様子はいつもと明らかに様子が違う。 動揺、その一色に表情が染まっていた。

2016-05-17 21:38:58
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「ん?どうしたよ?」 その様子に気づいた葛葵が声をかけるとRomaは怯えるかのような表情を彼に向け、問い詰める。 「葛葵。何でこの子が…そいつらのところにいるのよ。何で海賊紛いのことなんかしているの…?」 「Roma?」

2016-05-17 21:40:39
葛葵中将 @katsuragi_rivea

Romaは写真に再び目を落とし、写っている女性に思いを巡らせた (Roma? I, andare in Russia Roma?私、露国に行くことになったよ) (E 'vero? Che cosa è successo all'improvviso?本当?急にどうしたの?)

2016-05-17 21:42:38
葛葵中将 @katsuragi_rivea

かつて母国で共に訓練を受け、共に苦難を乗り越え、共に艦娘となった。 あの日から、露国に渡った彼女の活躍はRomaの耳にも届いていた。 嚮導駆逐艦として着任し、かの国では英雄としても扱われたかつての旧友。

2016-05-17 21:47:08
葛葵中将 @katsuragi_rivea

(Poiché diventa una nave, come sicuramente proteggere la pace. そこできっと平和を守れるような艦になってみせるわ) (È il mio nuovo nome ...私の新しい名前は…)

2016-05-17 21:47:58
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