【Голубй крейсер-空色の巡洋艦】

初霜×グラーフという珍しい組み合わせ
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

「Ташкент(タシュケント)」 西方海域洋上、黒き外装の異国の艦娘待機船。その連絡通路で… タシュケント。そう呼ばれた少女は声の主を見つめた。 視線の先、"首の無い従馬-コシュタ・バワー-"の描かれた大檣頭の下には…タシュケントにとっては見慣れた顔があった。

2016-05-17 21:49:53
葛葵中将 @katsuragi_rivea

それは彼女の親友…あるいは同志の一人。 「Эй "Hrim" …Что-то же с поручением?(あぁ、"Hrim"か…何か用事?)」 けろっとした表情で告げたタシュケントに、 黒いコートを纏う青髪の少女…"Hrim"と呼ばれた彼女は不快感を顕にした。

2016-05-17 21:51:50
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「Время вылазки прошло уже давно!'М Поздно!(出撃の時間はとうに過ぎている!遅刻だ!)」 「Запомнить меня так?(そうだっけ?)」 悪びれることも無くきょとんとした表情を浮かべたタシュケントにHrimは肩を落とした。

2016-05-17 21:53:10
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「Но разве никто вас проблемы, если скорость…командующий сердится(お前の速さならば問題は無いだろうが、ボスはお冠だ)」 「В самом деле? Так вы идете!(本当?じゃーさっさと行こうかな!」

2016-05-17 21:54:55
葛葵中将 @katsuragi_rivea

Hrimにとってはいつものこと…タシュケントは"速力"こそ他の追随を許さないほどの速さなのだが… 常にマイペースを崩さない。これにより度々叱責されているにも関わらず改善されるようなことはこれまでに無い。 …おそらくこれからも。

2016-05-17 21:56:21
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「Мы от цели?(確認する。今回の目標は?)」 Hrimはタシュケントに問うた。出撃前に行う確認儀礼に近いものだ。 タシュケントは息を吸い込み、不敵な笑みと共に答えた。 「товарищ "GrafZeppelin"(同志、グラーフツェッペリン)」

2016-05-17 21:57:42
葛葵中将 @katsuragi_rivea

タシュケントは水平線の彼方を見つめた。朝靄に包まれる海はこの上なく穏やかに揺れていた。 それを見下ろすかのように、首無し騎士に仕える従馬の紋章は、 不気味に鈍く光り、朝露に濡れていた。 「Поднять якорь(抜錨)…作戦開始。」

2016-05-17 21:59:01
葛葵中将 @katsuragi_rivea

【Голубй крейсер-空色の巡洋艦】♯3

2016-09-18 21:00:37
葛葵中将 @katsuragi_rivea

ーーー現地時間◯五三◯ 西方海域、洋上

2016-09-18 21:01:41
葛葵中将 @katsuragi_rivea

朝靄も晴れた海はきらびやかな朝日をその身に写しつけ、 うねる海原が光を数多にも反射し、その日の海は穏やかであることを告げていた。風ひとつ感じられない所謂、凪。 白い航跡が二つある以外は平穏時と変わりはない。

2016-09-18 21:03:00
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…いつもこのような量の鍛練を積んでいるのか?」 グラーフは息を荒げに肩も上下させながら僚艦である黒髪の少女に問いかけた。 「今日はいつもより抑えました。シケもきてないですから…私たちの嚮導の方は雨のほうが喜びますよ」

2016-09-18 21:04:47
葛葵中将 @katsuragi_rivea

それを聞いたグラーフはがっくりと頭を垂れた。 答えた黒髪の少女、初霜は自身とは違い息も上がっていなければ汗一つかいていない。 彼女らの"嚮導艦"がいる時はこの比にならない量の鍛練メニューを常日頃からこなすという話まで聞かされ、肩を深く落とした。

2016-09-18 21:06:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

操舵、艦隊運動といった動作は基本となるため念入りに行うことは必須なのだが 一日が始まって間もないうちから"恐ろしい量"の鍛練をこなす羽目になり、 艦娘として就役してまだ日も浅いグラーフにとっては辛いことこの上ない

2016-09-18 21:07:09
葛葵中将 @katsuragi_rivea

彼女の目から見ても初霜の練度は自身とは比較にならないほどに高く、 体全身のキレと操舵技術、小柄な体格に見合わぬスタミナは祖国においてもこれほどのレベルの者はなかなかいないだろうとグラーフは思考する。 それも経験と弛まぬ鍛練に裏打ちされた確かな実力なのだろう。

2016-09-18 21:08:10
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「少しだけ、休憩しましょうか」 見兼ねて、というわけではないだろうが初霜は頬を僅かに紅潮させながら提言した。 グラーフは息を深く吐き出し、呼吸を整えると賛同の意を告げる言葉を口にした。 「…そうしてくれると助かるな」

2016-09-18 21:09:12
葛葵中将 @katsuragi_rivea

一時の憩いの中、グラーフは葛葵からデータとして渡された彼の艦隊資料を インターフェイスに呼び出して目を通していた。 彼、葛葵は協力関係としてこちらからの情報は可能な限り提供する、そうは言っていたが… グラーフから見た葛葵の第一印象は「非常に胡散臭い男」

2016-09-18 21:10:57
葛葵中将 @katsuragi_rivea

渡された資料自体にも詐称があるのではないかと疑いを持っていた。 (まぁ…それもお互い様なのだがな) 相互協力など体のいい表向きだけの関係性であることは自身らが一番納得している。 諦観の思考を僅かに抱きながらグラーフは目的の資料を開いた。

2016-09-18 21:12:09
葛葵中将 @katsuragi_rivea

初春型駆逐艦四番艦「初霜」。電子文字でそう銘打たれた資料ページには 目の前で水分を補給している少女と同一の顔写真が貼り付けられていた。 こうしたページには一部の秘匿情報を除いて本人が修めた功績や査定、訓練における評価なども記載されている。

2016-09-18 21:13:10
葛葵中将 @katsuragi_rivea

初霜の特性や能力に合わせて訓練に当たるほうが効率が良い、そう考えたグラーフは 彼女の身体能力に関する資料を探すうちにその成績といった情報をも目にした。 抱いた感想は「まごうことなき優等生」 評価を示す箱の欄には最大であるA評価がずらりと並ぶ。

2016-09-18 21:14:24
葛葵中将 @katsuragi_rivea

それ故にただ一点のみ最低評価Eを得ている項目が一際目立っているのが目に自然と止まった。 (対抗演習…?同艦隊内での艦娘相手の演習の成績だけは芳しくないようだな) グラーフは不可解そうに唇に指を当て、思考を巡らせた

2016-09-18 21:15:49
葛葵中将 @katsuragi_rivea

先程見せた初霜の練度であるならばこの結果はまずあり得ないはず 査定時の調子が悪かった。もしくは対抗演習として当たった相手がよほどの化物かのどちらかか、 あるいは… 怪訝そうな顔でインターフェイスの資料を凝視していたグラーフはふとあることに気づく

2016-09-18 21:17:12
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