【Голубй крейсер-空色の巡洋艦】

初霜×グラーフという珍しい組み合わせ
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

「初霜。全体点呼は何時からだ…?」 グラーフは自身の目に映る電子の光、その右下に注視した。 その部分には時刻を示す時計が表示され、現地の現在時刻が五時五十分であることを告げていた。 その言葉を聞いた初霜の表情がみるみるうちに焦燥へと染まっていくのが手に取って目に見えた

2016-09-18 21:18:55
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「◯六三◯…六時半からです!全速力で駆けても…ギリギリ」 二人は気づけば自軍が目を光らせる哨戒線の内側とはいえ コロンボ野戦泊地から随分と離れた位置まで足を運んでいた。距離にして二十六海里弱 二人の最大速力で航行しても全体点呼が始まる時間に間に合うかどうかの距離であった。

2016-09-18 21:20:39
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…やれやれ、また全速力での疾走か」 先程までの鍛練と同様の速力でコロンボ泊地の港湾部まで駆け抜けなければならないことにグラーフは深くため息をついた。 それに対しても初霜はいたってドライに言葉を返した。 「これも訓練のうちです。急ぎましょう」

2016-09-18 21:22:05
葛葵中将 @katsuragi_rivea

二人が踵を返し、基地方面へ艦首を向けた瞬間だった。 初霜の艤装、艦橋付近から光の玉が出現し弧を描き舞うように彼女の周りを飛び回る 「あら?」 「どうした?」「提督からです。緊急入電?珍しいですね」

2016-09-18 21:23:08
葛葵中将 @katsuragi_rivea

グラーフの問いかけに初霜自身もいかにも不思議、といった顔を向けてくる。 彼女の肩には通信科の妖精が一人、先程の光の玉の正体は彼女だろう。 実体化状態へと姿を変えた小人、もとい妖精は初霜の耳元で何かを囁いている様子が見て取れた。

2016-09-18 21:24:11
葛葵中将 @katsuragi_rivea

ーーー現地時間◯五五一。枢軸国連合艦隊司令官、葛葵冷士より入電あり。

2016-09-18 21:24:59
葛葵中将 @katsuragi_rivea

初霜は周囲を確認した後に”問題無し”の判断を下し、手っ取り早くグラーフにも伝えるために音声を自身の耳以外にも届くようスピーカーの音量を調節した。 <<ーー初霜、聞…えるか?ーーー今、ど……いる?緊急事……態>> 「やけにノイズがひどいな。しかも…緊急事態と言っているのか?」

2016-09-18 21:26:01
葛葵中将 @katsuragi_rivea

こういう状況に初霜は自らの経験則から第六感が警鐘を鳴らしていることをグラーフに小声で告げると言葉をさらに繋げる。 「ジャミングの可能性があります。」 二人は緊張の面持ちと共に身構えた。―――敵襲。

2016-09-18 21:27:11
葛葵中将 @katsuragi_rivea

数々の戦闘記録の中で、深海棲艦側も人類と争いを続けるうちに学習を重ねている。 初めは思考する力すらもあるか疑わしいような生物であったが、次第に知恵を身に着けていった 人類側と同様の技術を真似するに留まらず独自の技術まで身に着けた彼らは今では人類種唯一の天敵とも呼ばれる。

2016-09-18 21:28:16
葛葵中将 @katsuragi_rivea

妨害電波(ジャミング)。深海棲艦がまず人類の技術で真似をしたのは他でもない、 兵器群を操り、味方とt連絡を取り合うために行われる通信手段のシャットアウトによる連携行動の撹乱。 深海棲艦が存在する海域にはまずこの妨害電波が発せられているケースが多い。

2016-09-18 21:29:16
葛葵中将 @katsuragi_rivea

故に初霜とグラーフは初めに近海に深海棲艦が出現したことを疑い、葛葵からの通信はそれを告げるためのものだと予想したーーーだが妙だ。 この海域の制海権は一時的にこちら側の手中にある。 初霜とグラーフのいる位置は自軍の哨戒線の内側。

2016-09-18 21:30:12
葛葵中将 @katsuragi_rivea

哨戒部隊からここ数日中深海棲艦らしき姿は鳴りを潜め、統率の取れた深海部隊から孤立した個体以外は確認していないとの報告を受けていた。 こ屯していた敵は撃滅に成功し、戦力の立て直しには相当な時間がかかるとの予想が立てられた 今ここにおいて深海棲艦による敵襲があるとは考えづらい。

2016-09-18 21:31:26
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「提督、応答願います。こちら駆逐艦初霜、繰り返します。応答願います」 グラーフは初霜も同じような懸念を抱いていると確信しながらノイズの音波みを鳴らし続ける無線機に何度も声をかける彼女の横顔を眺めていた。

2016-09-18 21:32:47
葛葵中将 @katsuragi_rivea

張り詰めた空気、まるで肌を突くような錯覚を感化させる静寂が場を支配する。 言いようの無い胸騒ぎが感情を不安の一色に染め上げて行くのをグラーフは感じ取っていた。 (これから起こる波乱の前触れのような…これが戦場の空気か)

2016-09-18 21:33:56
葛葵中将 @katsuragi_rivea

おそらくこれは初陣となる。艦娘となってまだ日も浅い彼女だったが確信に至る 微かな身震いを自制すると初霜に声をかけようと口を開いた。 …だが言葉は出なかった。 初霜の横顔に広がる海、その遥か先に自然と目は向いていた、水平線の向こうから…それは姿を見せた。

2016-09-18 21:35:13
葛葵中将 @katsuragi_rivea

小さな点が空と海の境目にその姿が浮かんでいるのをグラーフは認め、出そうとした言葉をおさめ初霜に事態を知らせた。 「…"艦影"を確認!」「え!?」 即座に望遠双眼鏡を取り出し目視での視認を二人は試みた。 (数は…たったの一隻?)

2016-09-18 21:36:30
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「大きさから駆逐艦級もしくは軽巡洋艦級。おおよその速力……43!」 レンズ越しに映るおそらく艦娘と思われる人型は… 日本側及び独国側のデータベースには存在しない艤装と兵装を身に着けていた。 (深海棲艦ではない…?ではあれは…)

2016-09-18 21:38:35
葛葵中将 @katsuragi_rivea

あらゆる疑念が頭の中で渦を巻く。 何よりも目を引いたのは…まるで快晴の空をそのまま写し取ったかのような 鮮やかな"空色"の外套

2016-09-18 21:39:53
葛葵中将 @katsuragi_rivea

夜間哨戒の駆逐隊でも戻ってきたのではないか。 そう一瞬疑ったが…一秒に満たないその刹那は全てを吹き飛ばすには十分な時間だった。 未確認の艦娘-UNKNOWN-は口角の端を上げ、屈託の無い笑みを浮かべた。

2016-09-18 21:41:08
葛葵中将 @katsuragi_rivea

体の周りに陽炎の如し空気の揺らめきを纏い船体を左右に揺らすと彼女が踏み出す足下の海面が抉れ、前方に"音の壁"を超えた証である衝撃波を作り出した。 次の瞬間には風の波紋が初霜とグラーフ、両者の間を通り過ぎ追随して海水が壁のように高く上がる。 「найденный…(見つけた)」

2016-09-18 21:42:10
葛葵中将 @katsuragi_rivea

声は、二人の背後から聞こえた。生み出された波濤に船体は激しく揺れ、堪えながら振り返る見開いたその目に映るのは 先程まで双眼鏡を通して見ていた「空色の巡洋艦」 自身で起こした風にコートの裾をたなびかせ彼女は前屈姿勢のまま、鈍い光を宿した目をグラーフへとゆっくりと向けた。

2016-09-18 21:44:07
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「迎えにきたよ。同志、GrafZeppelin」

2016-09-18 21:44:35
葛葵中将 @katsuragi_rivea

ーーー現地時間◯五五五、駆逐艦初霜及び航空母艦GrafZeppelin、未確認の艦娘と邂逅。 未確認艦娘を以降、「空色の巡洋艦」と仮称する

2016-09-18 21:45:46
葛葵中将 @katsuragi_rivea

<<注意事項>> ・作戦予定は前倒しとなった(眠気が先にきた ・艦これ二次創作小説投下行為です ・独自の解釈があります ・拙作 ・厨ニ感増し増し ・今回も戦闘は無し(どうしても必要なシーンと判断します ・最近髭出番多いですね 以上苦手な方はミュート推奨

2016-09-26 22:57:38
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