【日本人の政治的反応度④】空体語の”言いまくり”に沈黙せざるを得ない日本人／～人間の暴力を言葉（＝思想）と切り離して、一種の自然現象（＝天誅／天譴）とみる伝統的な日本の考え方とは～

山本七平bot @yamamoto7hei

①この問題については後述しますが、この点ではこの暴力を非難している人々も同じで、その暴力自体を思想として捕えようとはしていません。 キリスト教団体の連合体が、万博にキリスト教館の出展を申し込んだのは、資料によりますと１９６７年９月です。＜『日本教について／イザヤ・ベンダサン』

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②従って、出展について討論するならそれ以前のはずですが、この時は別に何の問題もなく、その後約２年間も別にこれといった動きもなく経過しております。 これはちょうど「靖国問題」の２０数年間の放置と対比できるでしょう。

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③ところが万博が…日米安全保障条約改訂と関連づけられて一種の政治問題として取り上げられると（典型的な日本人的行き方です）これに刺激されて１９６９年の５月頃になってキリスト教会内にも急に万博出展の可否が政治問題として…宗教問題として取り上げられ、一種異様な興奮状態になってきました。

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④問題はすぐさま「キリスト教館出展の可否」を跳び超えて「万博は７０年代の侵略体制にふみ入った日本の独占企業群の帝国主義的再編の先取りであって、それは抑圧された人間の側に立って闘ったイエスの志向とは相反するものだから粉砕しなければならない」となり、（続

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⑤続＞そこで…そういう体制にない「キリスト教の総体を根底から問う」のだということになり、従って「キリスト教館出展は万博の犯罪性への加担行為」であって、それをあえて強行する「教会」の幹部を「告発する運動」を「総会その他で展開」すると発展していったわけです。

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⑥このように展開された運動において、この出展を「犯罪性に加担する行為であることを認識せず、人間性回復とかキリストの臨在とかいう美しい宗教的言辞によって、その犯罪性をカモフラージュした」北森教授に「物理的な力」が加えられたわけです。

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⑦それ以後は混乱と暴行の連続だったようで、ある教会では牧師が入院（暴行を受けてか？説明なし）し、副牧師が精神錯乱に陥ったような例もあり、さらにこれが東京神学大学へと波及して行くのですが、その前にまず、今まで引用してきた言葉…の論旨を点検してみたいと思います。

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⑧まず第一に「万博の犯罪性」とか「万博を粉砕する」とか「教会を闘争の拠点にする」とかいう言葉を字義通りに受けとって、この人びとを誇大妄想狂乃至は精神異常者と見、その行動を精神異常者の集団的行動と考えてはならない、ということです。

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⑨「教会を（革命の）拠点とする」などということは、ちょうど前述の「八紘一宇」と同じように、それを口にしている人さえ字義通りにその言葉を受けとっているのではなく、意識せずともただその言葉によって生ずる「政治的効果」だけが念頭にあって発言しているはずです。

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⑩そうでないなら、この発言自体が、日本の現状への分析は愚か、自分の属しているキリスト教会の現状分析さえできない事の証明になり、従って誰もそのような発言は問題にしない筈です。 ところが戦前・戦後を問わず、こういう発言に対して、日本人は常に抗弁も反論もできず沈黙してしまうのです。

山本七平bot @yamamoto7hei

⑪言うまでもなく、原因は、その底に、日本人が無条件に服している「日本教の教義」があるからです。 すなわち、これらの言葉が「空体語」にすぎないことは、口にする人自身がよく知っているのですが、「神は空名（空体語）なれど、名あれば理あり、理あれば応あり」であって、（続

山本七平bot @yamamoto7hei

⑫続＞これらの言葉は勿論のこと、「神」という言葉ですら、それを口にする人は一種の政治的効果しか念頭にない訳ですが…この言葉を口にした瞬間、その人は空名の絶対者から委任された「絶対的審判者」のようになり、その人から何を言われても何をされても抗議もできなくなるのです。

山本七平bot @yamamoto7hei

⑬従って北森教授に加えられたのは「物理的な力」と表現せざるを得なくなるのです。 さらにこれが東京神学大学へと波及して行くのですが、その前に、まず私が集めた資料を全部点検したのですが、それに記された「北森教授殴打事件」とその反響において、当然のことですが、（続

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⑭続＞五・一五事件のときと同じように 「多人数で、議論をするといって押しかけ、問答無用と老神学者を殴打するような行為は卑劣だ」 といって非難した者は一人もおりません。 さらにこの行為は刑事事件にはもちろん、公の非難もしくは何らかの懲戒…も、資料で見る限り皆無です。

山本七平bot @yamamoto7hei

⑮ではもしこの暴行者を警察に引渡したらどうなったか。 五・一五事件の３５万通の嘆願書と同じように、この場合は嘆願ならぬ非難攻撃の手紙が３５万通以上、当事者に送られたかも知れません。 もちろんこれは単なる推測ではなく、それ以後の事件の推移がこれを裏づけてくれます。