アンヴェイル・ザ・トレイル #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方、ゴイとボルタは上階、彼らの根城へ再び走って戻った。「ミューラ=サン!」「ウミノ=サン!」KRAAASH!ドアを破砕し、コヨーテが床を転がった。「「アイエエエ!」」「イヤーッ!」破砕したドアの残骸を叩き切り、カタナのニンジャ……エヴリマンが出現した。「「アイエエエエ!」」

2016-05-04 23:20:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」更なる斬撃を、コヨーテは横跳びに躱す。着地時には人間の姿だ。「泥臭い殴り合い、向いてない」フィルギアは呟き、さらに廊下を飛び下がる。「イヤーッ!」エヴリマンが斬りながら追う。肩越しにフィルギアはゴイ達に言った。「いいか、アンタらは何も見なかった!中の奴を助けてよ」

2016-05-04 23:28:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人は顔を見合わせ、室内に突入した。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」悪夢じみたニンジャの叫びが廊下を遠ざかる。「ミューラ=サン!」彼らは満身創痍のミューラのもとへ駆け寄り、助け起こした。「オイ……大丈夫か!」「アバッ」息がある!「懲り懲り……対立する部屋なんかに関わったせいで」

2016-05-04 23:39:44
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「今更そんな、クソッ」ゴイは安堵の涙を拭った。さほど親しくもない関係だが、心底無事で良かったと感じた。割れ窓からは風が吹き込み、クラブ・フライヤーやレポート用紙が室内を舞った。「モシモシ!モシモシ!」ウミノはブース内で叫んでいる。遠景に火柱が上がり、空には黄金の立方体。マッポー。

2016-05-04 23:46:23
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それは啓示的な数秒間だった。室内から音が消失し、0と1の風が彼らの頬をかすめて吹き過ぎていった。……「この装置にモジュラーというニンジャは無線接続している。そして周波数をリンクさせているのだ……無差別的破壊行為を行っているのだ。君はどこまで出来る。止めてほしい!出来る筈だ!」

2016-05-04 23:53:37
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010010……「ンなこと言ったってよォ」……彼は重なりあう二層の格子地平の上に浮遊し、飛沫を上げる01の爆発と、その発信源たる邪悪なニンジャを見据えた。「モジュラー」の名が見える。光輝き脈打つ管が、モジュラーと無線送受信機とニチョームのレディオ施設と、シルバーキーを繋いでいる。

2016-05-04 23:57:24
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「アイツ、溺れちまってるんだ」シルバーキーは呟き、顔をしかめた。「それがニンジャの自然だってのか?わからねえけど……イヤーッ!」意識を飛ばす!ウミノの鉱石ラジオを通してモジュラーに混線した瞬間の自我衝突を、彼は再び意図的に引き起こしにかかった。モジュラーのニューロンを襲う!

2016-05-05 00:06:43
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010010111「アバババ、アバーッ!」マイクロウェーブ攻撃を繰り返していたモジュラーは不意に弾かれたように仰け反り、サイバネティクスに電光を発しながら痙攣した。「アババーッ!」頭を抑え、フラフラと大学敷地から大通りへさ迷い出る。野次馬市民と到着しつつあるハイデッカー装甲車。

2016-05-05 00:14:46
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彼のニューロンはなかば焼き切れ、無差別マイクロウェーブの焦点を結ぶ事はかなわなかった。「……アバッ!」斜め上から飛来した一本の矢がコメカミを貫通し、アスファルトに突き立った。離れたビル屋上、アマクダリのニンジャ、ソリティアはその場を離れた。移動と準備に時間の99%。実働は1%。

2016-05-05 00:18:59
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「サヨナラ!」モジュラーが爆発四散したその時、学生寮の庭にフィルギアを追って飛び降りたエヴリマンは、遠巻きにじっと見守る学生達を苛立たしげに見渡した。「貴様ら……愚昧な……」「アンタの同志の皆さん、あらかた片付いちまったみたいだな」フィルギアは肩をすくめた。「しかし落ち着かねえ」

2016-05-05 00:25:49
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「敗北主義者の群れ。反吐が出る」エヴリマンはカタナを構え、呟いた。思いがけず、そこへ飛来物。ドリンクの瓶を、首を動かしてかわす。「か……カエレ!」その学生は……ユウラギは、震える拳を振り上げ、叫んだ。「出て行け、ウチコワシ!ここは俺らの学校だ!」「出ていけ!」他の学生達も続いた。

2016-05-05 00:29:49
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「うわ、スゲエ」フィルギアは呟いた。再び飛来物。「イヤーッ!」エヴリマンは飛んできた石を切り裂き、血走った目で学生達を睨んだ。「アイエエエ!」何人かがNRS反応を示して失禁しながら倒れこんだ。瞬間的な極限の怒りに駆られたエヴリマンは学生達に向かって踏み出す。フィルギアが腕を掴む。

2016-05-05 00:34:43
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「よせよ、そんな暇アンタには無い」「貴様!」エヴリマンが腕を振り払うまで1秒。「イヤーッ!」横殴りに斬りつける刃の上に、垂直落下してきたヤモトが着地した。フィルギアの眼鏡が切っ先に払われて吹き飛んだ。フィルギアは歯をむき出して笑った。ヤモトはエヴリマンを斬った。

2016-05-05 00:41:02
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「アバーッ!」エヴリマンの額が額当てごと横に割れ、血と脳症が噴き出した。ヤモトはくるりと回って着地した。学生達が後ずさった。「サヨナラ!」エヴリマンは爆発四散した。ヤモトはフィルギアを見、頷いた。二人は走り出す。遠く「御用!御用!」というハイデッカーの御用サイレンが聞こえてきた。

2016-05-05 00:44:37
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……「手段を……そう!この装置を用いて、こうやってね、私はそちらと通信ができる。専門の人間が居ればいいんだが、私はオナーを失っているからね」ウミノはマイクに向かって捲し立てた。「私は無力なのだ!」『そんな事はねえよ!あンただけが頼りだ』スピーカーからはシルバーキーの声。

2016-05-05 00:47:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『その装置とやら、頼むから無くさないでほしいんだ。こうやって通信できるだけで全然話が変わってくるからさ。あのな、ニチョームは自力じゃそっち側に戻れねえ。助けが要る』「どんな助けだね!」『それをこれから考え……いや、待て!そうだ!アテはあるじゃねえか!』「何がだね!」

2016-05-05 00:50:32
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『こっちの話だ……いや、こっちの話じゃねえんだ、もはや。助けてもらわねえと』「モシモシ!ヨー、フィルギアです」フィルギアがウミノの肩越しにマイクに向かって言った。「どうした?アテがあるって?何か思いついた?誰を探せばいい?」『フィルギア=サン!』「悪いけど、ここも引き払わなきゃ」

2016-05-05 00:55:36
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今まさに、学生寮につけた車輌からハイデッカー達が降り立ち、学生に事情聴取を行っている。ウチコワシ戦士は敷地から蹴りだされ、引き渡された。しかし学生達は、思いがけず、ハイデッカー達に対しても毅然とした対応を通していた。逮捕されるほどに反抗的ではないが、完全な服従とも言えなかった。

2016-05-05 00:58:47
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この日の惨事の体験者の中から、さほど日を経ず、アマクダリ政府の横暴に対するレジスタンス組織、ローニン・リーグの発起人の何名かが出てくることになるが、それはまた別の話だ。

2016-05-05 01:02:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そうした動きは、開放された学生のなかで一人、早々に敷地を離れ、悠然と街の雑踏に消えていった者の意図するところであっただろうか。否……仮にきっかけのひとつをその者が作ったとしても、その扇動者をローニン・リーグがその後、受け容れることはなかった。

2016-05-05 01:13:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「行かないと、まずい。ハイデッカーが来てる」ヤモトがブースに入ってきた。フィルギアは頷いた。そしてマイクに向かって言った。「それじゃ、また別の場所から繋ぐからさ。ウミノ=サンと機材は引っ張っていくよ。誰を探せばいい」『双子のニンジャだ。多分どっちかはネオサイタマに居る』

2016-05-05 01:16:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「んんん……」フィルギアは眉間を押さえながら思考を巡らせた。「了解。また繋ぐ。オタッシャデ!」通信を終えると、ウミノは既にブースを出ており、ミューラ達の手を握っていた。「君たち、私はこれで。協力に感謝する」「その。何者なんだ、あんた。いや、あんた達」「忘れな」フィルギアが言った。

2016-05-05 01:22:33
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言ってから、フィルギアは思い直し、首を振った。「いや……別に忘れなくてもいいか。どっちでもいいや」そしてウミノの肩を叩き、促した。ヤモトは鉱石ラジオを抱えた。強い風が吹き、レポート用紙が舞うと、奇妙な三人の姿は無かった。やがてボルタは蓄音機を操作した。カブラ・ノヴァが流れ出した。

2016-05-05 01:26:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アンヴェイル・ザ・トレイル】終わり。

2016-05-05 01:28:22