チョコレートアソート

バレンタインのシリーズ妄想。内容量:7粒
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レオナ @leo_msk_tdys

【3】 さっき見た光景が、頭から離れない。 どんよりした気分で、ふらふらと社内のカフェに入り、コーヒーをひとつ注文して席に座り、うなだれた。 「なんや、暗いなあ」 頭の上から声がして、顔を上げると、ヨコがいた。

2016-02-13 00:36:52
レオナ @leo_msk_tdys

【4】 私は、ふぅ、とため息をひとつつき、テーブルにアゴを乗せた。 「ぅおぃ!無視すんな!」 「……ヨコ、うるさい」 「ええぇーー……」

2016-02-13 00:38:02
レオナ @leo_msk_tdys

【5】 「それはお前、考えすぎやで」 私はさっき見た光景を、ヨコに話した。 ヨコと私と信五は同期入社で、初対面なのに何故だか初めて会った気がしなくて。 いつもみんなで冗談を言い合い、軽口を叩き合い、時にはマジメに相談なんかし合い、私たちは気の置けない仲間になった。

2016-02-13 00:38:57
レオナ @leo_msk_tdys

【6】 そんな仲間のひとり・信五に、私は恋をしてしまった。 「ヒナやで?頭撫でるとかはたくとか、フツーやん。気にするアレちゃうやん」 「そう、だとは思ってるけど……」 「……お前、意外となーんもわかってへんのな」 「なに、ヨコは何か知ってるって言うの?」

2016-02-13 00:40:02
レオナ @leo_msk_tdys

【7】 「おもろいから言わんとくわ」 そう言って意地悪く笑うから 「人の気も知らないで……」 とボヤくと、一瞬さみしそうな顔をして 「……会えるだけ、ええやん」 と、ほんの少しだけ口の端を上げ、つぶやくようにヨコが言った。

2016-02-13 00:40:46
レオナ @leo_msk_tdys

【8】 もやもやしたまま一夜が過ぎ、今日はバレンタインデー。 チョコは用意したものの、昨日のシーンを引きずっている私は、こんなものを渡せる気がしない。 重い足取りでフロアを歩き、自分のデスクにたどり着いたところで、声をかけられた。

2016-02-13 00:41:49
レオナ @leo_msk_tdys

【9】 「おう、彩香」 「あ、信五……おはよう」 「おはようさん。お前、今日の夜空けとけよ。メシ行くぞ」 矢継ぎ早に信五の口から出る言葉に、少し困惑する。 「え、なんで…」 「なんや、用事あるんか?」 「そうじゃないけど…」 「ほんならええやろ?」

2016-02-13 00:43:11
レオナ @leo_msk_tdys

【10】 少しばかり強引なのは、いつものことだ。むしろ、それが心地よくて、男らしさを感じてキュンとしてしまう。 でも今日は、素直にそう思えない私がいる。 かわいくない。わかってる。

2016-02-13 00:43:53
レオナ @leo_msk_tdys

【11】 どうして信五は私を誘ったんだろう。この後、何が起こるんだろう。 私はこのチョコをどうするんだろう。 そんなことをぐるぐると考えているうちに、終業時間を迎えた。

2016-02-13 00:44:24
レオナ @leo_msk_tdys

【12】 「彩香、おつかれ。行こか」 心の準備が何もできていないうちに、信五が迎えに来た。 向かったのは、会社近くのいつもの居酒屋。 扉を開けると、「いらっしゃいませー!」と威勢のいい声が聞こえ、信五が店員さんとやりとりをする。

2016-02-13 00:49:01
レオナ @leo_msk_tdys

【13】 その信五の肩越しに、私は安田くんと冴子ちゃんの姿を見た。 「信五、やっぱりほか行こ」 店の隅のテーブルで、そっとキスをする二人。 ジャマしたくなくて、信五の腕を引いた。 だって、二人を見つけたら、信五は絶対ちょっかい出すだろうし。

2016-02-13 00:50:13
レオナ @leo_msk_tdys

【13】 でもそれが、思わぬ展開を生むなんて。 「ほんなら、オレんち行こ」

2016-02-13 00:50:53
レオナ @leo_msk_tdys

【14】 ……どうしよう。来ちゃった。ホントに来ちゃった。 「お、じゃましまーす……」 初めて入った信五の部屋は、キチンと片付いていて、黒を基調とした落ち着いた雰囲気だった。

2016-02-13 00:51:49
レオナ @leo_msk_tdys

【15】 「あ!私やるよ」 コンビニで買ってきた食べ物を、キッチンでガサガサと出している信五に、声をかけた。 味気ないコンビニ食。せめてもの演出として、お皿に盛りつける。

2016-02-13 00:52:52
レオナ @leo_msk_tdys

【16】 「お、ええやん。お前、上手いな」 なんてことない言葉だけど、そう広くはないキッチンで、肩が触れるくらいの距離で言われ、必要以上にドキドキする。 顔が赤くなるのを必死に抑えつつ、乾杯をした。

2016-02-13 00:53:05
レオナ @leo_msk_tdys

【17】 「今日、ペース早ない?」 早いよ。信五の部屋に二人きりなんて、キンチョーして、飲まなきゃやってられないよ。 しかも、近いし! ソファーに並んで座る信五の膝が、時々私の足に触れる。

2016-02-13 00:53:53
レオナ @leo_msk_tdys

【18】 「なあ、なんでウチ来たん?」 信五が、ふっとマジメな顔をして、言った。 「なんで、って……」 「いくら俺や言うても、男の部屋やで。何もないなんて、思てへんよな?」 至近距離で見つめられ、動けないでいると、噛み付くようにキスをされた。

2016-02-13 00:55:45
レオナ @leo_msk_tdys

【19】 「…んっ、……信五っ」 必死に肩を押し、体を離す。 「っ、信五こそ、どうして?……麻美ちゃんがいるのに」 切ない。好きな人とキスをしたのに、切ない。苦しい。 そんな私の気持ちとはかけ離れて、信五は素っ頓狂な声を上げた。

2016-02-13 00:57:27
レオナ @leo_msk_tdys

【20】 「はぁ⁈麻美?……お前、なんか勘違いしてへんか?」 「……勘違い?」 「お前といい、マルといい……オレと麻美はいとこ同士や。それに、ーー好きでもない女、家に呼んだりせえへんやろ」 「え……」

2016-02-13 00:58:25
レオナ @leo_msk_tdys

【21】 「だから、好きやー言うてんねん」 そう言うと、肩を掴まれ、また信五の顔が近づいてきた。 「、待って」 それを制して、私はバッグの中を探った。 差し出したのは、信五に渡すためのチョコレート。

2016-02-13 01:07:43
レオナ @leo_msk_tdys

【22】 信五は優しく笑って、それを一粒口に入れ、私に甘いキスをした。 【チョコレートアソート・4粒目〜whisky bon bon・終】 pic.twitter.com/3fbROWWRkI

2016-02-13 01:08:52
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レオナ @leo_msk_tdys

【チョコレートアソート・5粒目〜caramel】 「雪、か…」 窓の外をちらつく雪を見て、遠い空に想いを馳せる。 美希がロンドン支社へ行って、二年。あいつのいない生活にも慣れた。 #エイトで妄想

2016-02-14 01:38:45
レオナ @leo_msk_tdys

【2】 寂しくない訳ではない。だからと言って、寂しいっていう程でもないねんけどーーって、なに言うてんねん、俺。 「さぶっ」 空調の効いた年中常春の社内で、そううそぶき、カフェに入ると、彩香を見つけた。

2016-02-14 01:39:29
レオナ @leo_msk_tdys

【3】 「なんや、暗いなあ」 わかりやすく影をしょっている彩香に、声をかける。けど…… 無視か!ぅおい!

2016-02-14 01:40:35
レオナ @leo_msk_tdys

【4】 彩香と美希、ヒナと俺の四人は同期入社で、二年と五カ月前、美希は俺の恋人となった。 そんな折に、美希にロンドン支社への転勤が命じられた。 かねてから海外勤務を希望していた美希を、俺は快く見送った。物分かりよすぎやろ、俺。

2016-02-14 01:41:32
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