不知火に落ち度はない　46（早霜）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

あ、お久しぶりですが。更新できそうなタイミングつかめたんで、今から書きますの。 １，ぬいと駄提督、セミナーへ行く ２，時雨恋色物語 ３，早霜着任一悶着 と、ぱっと浮かんでるだけでこの3つが候補ね。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

で、どれが読みたいか1時間で決めな。（まさかの選択肢使った遊び） #落ちぬい

yamoto⋈ @yamoto

@otinui_yamoto では最終結果発表。　早霜着任話で決定です。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

では、早霜話を始めますずい。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それで、兵頭っち。ここおいとくから、早霜着任したら読ましといて」 「おうよ。殿下の宝刀北上様マニュアル。活用させて貰うぜ」 「作るの苦労したんだかんね。粗雑に扱ったら祟るよ」 5月の午後。GW開けの空気の中で、北上様は分厚いファイルを机に置いた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、目の前に詰まれた北上様マニュアルは、数ヶ月間かけて作り込んだだけあって、充実の内容である。 北上、こういう細かいの作るの相当得意なんだよな。 魚雷屋つーのは、カン以上に計算や誘導技術などが必要になるからか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちなみに兵頭っち。その貞子みたいな奴はいつ来るの？」 「明日の朝着」 「夜中に来たりしてね」 「ないない。TVからにゅっと顔を出すとかねーから」 そんなん来たらホラー過ぎるわ。 180cm近い体重が40kg未満の女とか、普通に夜来ただけで充分怖い。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「にしても、ずいぶん来るの遅くなったね。何してたん？」 「龍田からの説明じゃ、他海域の作戦で忙しかったんだと。海外とのやりとりもあったみてぇだな」 「海外っつーと。USA？」 「EU」 「ナルヴィク海戦でもやってたんかね」 ありそうな話である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「EUの艦娘ってどんなんなわけ？」 「今のところ情報入ってきてるのは、イタリア艦とドイツ艦だけだな。ザラとか知ってる？」 「知らないねえー。どっちも酒飲みそう」 北上様らしいご意見である。 実際モグリとの話じゃ、相当な飲兵衛がいるそうだが。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そのうち出会うこともあるのかねー」 「あるだろ。地球はどうせ丸いんだし。国内情勢が安定したら、次は海外派遣とかあり得る話だ」 「向こうの深海棲艦共も、酒とか飲むと思う？」 「生態についちゃ似通ってるらしいが、違うところも結構あるっぽいな」 謎は多い。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

連中が何を考えてるのかは不明だし。 そもそも地球上の生物かどうかもまだわかってねえ。 鹵獲してるって話も耳にしてるが、その後どうなってるのかさっぱりである。 とかく敵は敵。とりあえずブッ倒せが基本方針だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「んじゃ、あたしゃもうお役御免だねえ。あー、デスク仕事疲れたー」 「おう。長い間おつかれさん。でも時々ヘルプ頼むわ」 「気が向いたらでいいー？」 ダメにきまっとりゃす。と、言いたいが北上様は北上様だ。 徹底して自由な生き物なので、俺の命令ききゃしねえ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「なるべく、頼むわ」 「気が向いたらねー」 ほらな、聞いちゃくれねえ。 そうして長い勤務を終え、北上様は自分の巣に帰っていくのであった。 午後からの仕事を俺一人に預けて。 そう──俺一人に預けて。 そこ普通補佐でついてくれるっていうのねえの！？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんなこんなで俺は仕事を片付けるべく、手の空いてそうな長門に連絡を入れてヘルプを頼んでおくのだった。 二つ返事で引き受けてくれたんで、助かったけどな。 お礼は勿論、うん。考えたくねえよ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして夜。俺はいつもの宿直室で寝っ転がり、ミリタリー誌など読書中なう。 EU事情やアメリカ方面の事情もたまに載っかってるんだ、これ。 「なるほどな。アウターヘブンの作戦は、ここいらだった訳か」 カラブリア沖海戦。あっちはあっちで激戦区か。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「EU内部で、そも分裂してるような戦線だものな」 戦争してた国同士が手ぇ組んで作ったのがEU。 そこにかつての連合ｖｓ枢軸を模倣した連中が出たとなると、足並み揃えるだけで一苦労だろうな。 中には『鈎十字』を見たなんて話もあるぐらいだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「近いうちにEUとの会議もあるっつーし」 俺にはあまり関係ない、上との話だけどな。 だが、海外派遣も実際現実味を帯びてきてる。 逆に言えば、国内事情が徐々に安定してきている、というわけである。 実際戦線を押し戻しつつあるからな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

これは俺達の努力で勝ち取った勝利である、と言いたいが。 残念、だいたいはアウターヘブンとかの大規模作戦における陣頭指揮のお陰である。 龍田の情報収集能力は桁違いだしな。 深海棲艦の拠点探しの4割はあいつの功績だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それに── 「『尻尾付き』はまだどこにも出てきてねえしな」 俺の追う相手は。 まだどこの海にも姿を見せてない。 あの尻尾を生やした、怪物はどこにもいない。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

あいつを仕留めん限りは、国内事情の安定なんざ関係ない。 あれは、そういう類いの怪物だ。 一匹で戦局が一気に変わるような──そんな荒唐無稽な戦力を有してる。 だから、もしかすると待っているのかも知れん。 こちらの努力を踏みつぶす瞬間を。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

は──上等だ。 「その上を行って、ブチ殺す」 俺の望みと願いは、そこ。 あの日から狂った全てを、取り戻すにはまずそこしか有り得ねえ。 だからこそ──姿を見せる日までは、追い続けるしかなかった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんな思考に入りかけたとき、宿直室のドアがトントン、と叩かれた。 時計の時間を見ると、23:30との表示。 日の変わるすぐ前に、誰が来たんだ？ ともかく返事は返しておこう。 「どうぞ」 #不知火に落ち度はない