蝙蝠【@koumoli】の #ふぁぼの数だけ行ったことがあるように架空の町の魅力を紹介する まとめ

空想街まとめました 101~200はこちら https://togetter.com/li/1195477 201〜270はこちら https://togetter.com/li/1502009
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蝙蝠 @koumoli

古びた廃線の果ては、「待ち人の駅」と呼ばれていた。 草の生い茂った線路だ。まさか電車などが走ろうはずもない。 ぼんやり褪せたベンチに座っていると、何の偶然か、通り抜ける風が電車の走行音とよく似た響きを立てた。 この優しい奇跡は、今も誰かを待つ人々の救いになっているという。

2016-06-20 19:58:55

さあお手を拝借
91.霧の奥の悪夢
92.骨と皮の街
93.書物の国
94.宵闇の音楽祭
95.染色の国
96.神社の花畑
97.雪の砂丘
98.空とエアレース
99.面影の香り

蝙蝠 @koumoli

「霧が深くなったら気を付けて」 道路の所々に、そんな人型の標識が立っていた。 とはいえ然程気にも留めず観光していると、突然周囲が真っ白な霧に包まれた。 驚きつつも、言われた通り道の端に座りこんで息を殺す。 再び視界が晴れた時には、「何か」に首を食い千切られた標識だけが残っていた。

2016-06-28 19:24:30
蝙蝠 @koumoli

そこは骨と皮の街だった。 軽く、強く、しなやかな家具。 よく伸び、水を弾き、最高の手触りをした壁。 この街の死者は、物として蘇っていた。 「息子よ」 まだ年若い女性が、白い柄をした万年筆を見せてくれた。 「これであの子に手紙を書くの。来週の日曜日に『3歳の誕生日おめでとう』って」

2016-06-28 19:45:56
蝙蝠 @koumoli

国の中心には、今まで見た事がないくらい巨大な図書館があった。 なんでも個人が書いた日記や手紙までご丁寧にしまっているらしい。 それは珍しいと何冊か読んでみたのだが、いつか公開されると分かっている日記には、伏字だらけの呪詛や、嘘くさい自慢話が山のように載っていた。

2016-06-29 22:55:04
蝙蝠 @koumoli

夕暮れ、住民と共に小高い丘を登った。 新月の夜は微かな光すら見当たらない。辺りから光が消え失せる頃、誰かがオカリナを吹き始めた。それに合わせて手風琴やフィドルの音が聞こえ出す。 ゆったりと流れる闇の中で、私達は光を待った。 朝になると陽が昇るという奇跡を、村全体でお祝いした。

2016-06-30 00:18:29
蝙蝠 @koumoli

体のほぼ全てが水分で構成された人々が住んでいた。 正面にいる相手を通して後ろの景色が見えるというのは不思議なものである。 1人の男性が私の眼の前で絵の具を食して見せてくれたのだが、体内で華が咲くように緩やかに溶け込んでいくそれは、言葉にし難いほど美しかった。

2016-06-30 23:14:38
蝙蝠 @koumoli

歴史のある神社の裏は、まるで植物園かと見紛うほど数多の花が咲いていた。 神主さんに事情を伺うと、数百年も昔から、神様に願いを叶えて貰った人がお礼として花を捧げてきたらしい。 その話を聞く間にも、大切そうに苗を持って来た人がいた。 桃源郷の様な其処で、またカンカラと鈴の音がした。

2016-07-01 01:34:56
蝙蝠 @koumoli

巨大なスノーマンに乗って、熱砂の上を駆け抜けた。 雪山で巨大化し過ぎた彼らは、年に一度集団で砂丘を訪れるのだと言う。 私は服をずぶ濡れにしながら、灼熱の海を謳歌した。 溶け出した彼らの体は、水となって土地を潤し、通り道にはやがて小さな緑が芽吹くのだと砂漠の民が教えてくれた。

2016-07-01 15:37:09
蝙蝠 @koumoli

翼を持つ人々の部族で、エアレースを観戦した。 独特に変形した骨と皮からは血管が透け、飛ぶ為に特化した細身の体は、強靭かつしなやかに鍛え上げられていた。 太陽の下で、精々20代程度の若い子供達が空を切り裂いていく。 その瑞々しさに当てられ、私もつい応援に熱が入ってしまった。

2016-07-02 00:36:07
蝙蝠 @koumoli

「好きな花はある?」 そう訊かれ木蓮と答えると、彼女は私の影に向かってトワレを2回プッシュした。 「私達に伝わるおまじない。この香りが、貴方の面影を思い出せる鍵となりますように」 このまじないは確かに効くようで、スミレの匂いを感じる度に、彼女とあの国の事がふっと頭に浮かぶのだ。

2016-07-02 00:37:43

始まりの終わりの始まり
100.認識の国とハートの標

蝙蝠 @koumoli

最後に紹介するのは私の故郷、認識の国。 広く、狭く、美しく、汚らしく、文字が示す通りに目紛しく変化する不思議な国です。 例えば「私の腕に抱かれた猫が」と言うだけで、何処からか猫が現れるように。 さて私は、一体どのように認識されていたのでしょうか? まあ全て正解になるのですけど。

2016-07-02 01:13:39
蝙蝠 @koumoli

私のために用意された、私だけの100ある世界を、共に認識してくれてありがとう。 時折見えるハートの風船が、私を導く標となりました。 貴方の認識があって初めて、私の旅行記はこの世に存在し得たのです。 何たって私は、生粋たる認識の国の住人!文字で構築された世界で生きる者!

2016-07-02 01:15:07
蝙蝠 @koumoli

それではさよなら皆様方。 いつかご縁がありましたら、よければまた、私の元へ遊びに来てください。 少しでも私の事を覚えていたならば、それをパスポートにどんな場所へもお連れしましょう。 貴方はただ私についてくるだけで、果ての無い世界を何処までも見渡す事が出来る稀有な存在なのですから

2016-07-02 01:17:30

追記

蝙蝠 @koumoli

【ゆ る 募】 空想街の挿絵を描いてくださる方がもしいれば、 togetter.com/li/982813 の番号or名前をリプいただければ嬉しいです 8月末日まで募集してます 締め切りは10月末日あたりを予定

2016-07-03 01:43:41

要は、ここに書いたネタを加筆修正して紙媒体にしよう計画です。
絵/写真について特に枚数規定は無いですし、被ってもこちとらラッキーハッピーってな具合で欠片も気にしないので、よければお力添えしていただけると喜びます。

A5版の同人誌を予定中
見開きページ(横長A4)に収まるサイズであれば、どんな形でも構いません

あと、大変ありがたい事に複数の街を描きたいとのお声をいただきました
こちらとしては大歓迎を通り越して土下座からの奴隷宣言って感じなので、ご負担にならないのであれば是非お願い致します

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