蝙蝠【@koumoli】の #ふぁぼの数だけ行ったことがあるように架空の町の魅力を紹介する まとめ

空想街まとめました 101~200はこちら https://togetter.com/li/1195477 201〜270はこちら https://togetter.com/li/1502009
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蝙蝠 @koumoli

甘い花が咲き誇る国だった。 星型の白い花には幻覚作用があり、国の住民は空中に溶け込んだ麻薬作用の中で微睡みながら生きていた。 ガスマスクを付けて街を回る私が彼らにどう見えていたのかとても気になるのだが、帰る頃にはポケットいっぱいに落花生が詰められていた。

2016-06-02 18:35:24
蝙蝠 @koumoli

島の何箇所かに、極端に重力の弱い箇所が存在した。 重力が弱いというより、何処かからの引力が強いと言った方が正しいのだろうか。 基本的には立ち入り禁止なのだが、特別に機材で身体を繋いでそこに入らせてもらった。 世界の果ての小さな島で、私は、生まれて初めて空に溺れるという経験をした。

2016-06-02 23:42:23
蝙蝠 @koumoli

その村の住民は、音を食べて生きていた。 初めて経験する完全な静寂の世界に、楽しくなった私が鼻歌を歌いながらぶらついてると、小さな子供たちが寄ってきた。 私には分からないが、遠い異国の音楽はとても贅沢なものらしい。 故郷の歌を歌ってやると、先を争う様に音が食べられて消えた。

2016-06-03 02:11:29
蝙蝠 @koumoli

仄暗い洞窟の奥には孤独な化け物が住んでいた。 人の愛を食らって生きるという彼は、時折外へ出ては世界から愛を奪うのだと教えてくれた。 この世にたった1人しかいない化け物に、神は何という運命を背負わせたのだろう。 哀れな化け物への愛が尽きるまで、私は洞窟の側から離れられなかった。

2016-06-03 02:26:30

旅の終わりまでもう少し
71.曇天の国
72.蒼穹の海
73.記憶を失う国
74.タブーの国
75.踊り子の街
76.恍惚の国
77.積み木の王国
78.東の丘
79.西の浜
80.消失の街

蝙蝠 @koumoli

万年雲に覆われた影の国に蝋でできた人々が暮らしていた。 痛覚というものが存在しないらしく、体の一部を溶かして、染料や花弁を混ぜ込むのが彼らにとってのお洒落らしい。 自分では出来ないから、と1人の青年の顔にラメを混ぜる仕事を頼まれた。 彼の頬に溶かした光は、今も輝いているだろうか。

2016-06-03 21:40:31
蝙蝠 @koumoli

空と海が反転している土地だった。 雲を掻き分けた遠く先に鳥の群れが飛んでいて、頭上を魚やクラゲが優雅に踊っていた。 流石に雲の上は歩けないらしく、大地と空の縁をふらりと散歩する。 野良猫がしなやかに飛び上がり、私の横を泳いでいた魚を捕えた時は、思わず歓声を上げてしまった。

2016-06-04 01:25:06
蝙蝠 @koumoli

その国の人々は、誰もが記憶を食らう化け物を飼っていると話していた。 化け物に全てを喰らい尽くされた時が、その人間の死ぬ時なのだと言う。 住民らはそれを必然とするため、神話的な物語を語り継いでいた。 我々が「老い」と呼ぶ現象が、まだ神聖なものとして捉えられている国だった。

2016-06-09 18:04:17
蝙蝠 @koumoli

その国には食事風景を見せてはならないという決まりがあった。 若い娘が「人前でご飯を食べるくらいなら、セックスを見せつける方がマシ」と言う姿は中々のインパクトだ。(実際に何組か見た) 立食パーティなんて文化を知ったらひっくり返るだろうなと思いながら、私は郷土料理をテイクアウトした。

2016-06-09 18:48:54
蝙蝠 @koumoli

街路の至る所に様々な踊り子達が立っていた。 バレエ通り1丁目、タップダンス路地、ジャズ区など踊り毎に分けられ、パフォーマンスが喧嘩しないよう作られていた。 折角なので、私も1人の女性にワルツを手ほどきしてもらう。 全く上手には踊れなかったが、今となってはいい思い出だ。

2016-06-10 22:33:51
蝙蝠 @koumoli

「辛い事があっても神様が助けてくれる」と、彼らは唱えていた。 苦しんでいる人間を見捨てるはずがないと信じ、寧ろ自ら苦難を好んで選んでいた。 話す人誰もが恍惚とした表情で不幸を自慢する。 不幸こそが彼らにとっての幸福だった。

2016-06-11 01:22:54
蝙蝠 @koumoli

そこは積み木でできた王国だった。 子供の遊戯のような、近くにある森の木を適当に引っこ抜いて、簡単に並べただけの町並み。 「いつか此処に沢山の人が住むのが夢」 そう笑顔で語る巨人に、人々はあなたを恐れて遠くへ移住したのだと、話す事は出来なかった。

2016-06-11 10:21:17
蝙蝠 @koumoli

東の丘の民は、農耕と牧畜で生計を立てていた。 何不自由ない暮らしに見えたが、人々は「西の奴らはもっといい暮らしをしてる」と苦々しげに語った。何でも生活必需品である塩を彼らが独占し、人々は高騰に喘いでいるという。 旅の都合上西へ行くと語ると、奴らは危険だからと小振りの斧を渡された。

2016-06-11 19:06:49
蝙蝠 @koumoli

西の浜辺の民は、漁業を中心に生計を立てていた。 何不自由ない暮らしに見えたが、人々は「東の奴らはもっといい暮らしをしてる」と苦々しげに語った。何でも生活必需品である米を彼らが独占し、人々は高騰に喘いでいるという。 東で貰った斧を見せると、散々毒突いた後乾物と塩をくれた。大儲けだ。

2016-06-11 19:15:51
蝙蝠 @koumoli

いやにひと気の無い街に、たった2人の男女がいた。 詳しくは話してくれなかったが、彼らは途轍もない禁忌を犯したのだと言う。 「明日、この街は滅びるわ」と異形の女は言った。 美味しい珈琲の香りがする街は、今はもうどんな地図にも載っていない。

2016-06-11 19:55:29

空想広がる
81.走馬灯生産所
82.雨と祝福の国
83.夢の街
84.貝殻岬
85.神様の森
86.オートマチックタウン
87.オルゴールロード
88.氷の季節
89.蟲の里
90.待ち人の駅

蝙蝠 @koumoli

ずらりと並んだ灯篭を眺めていると、中に私が写っていた。 歪な着ぐるみに向かって小さな私が駆けていく。幼い私がこちらに笑いかける。 そこには信じられない程沢山の私がいた。 ただ「ばあちゃん」とだけ声が出た。 世界で唯一の走馬灯職人は、泣きじゃくる私を微笑ましそうな顔で撫でてくれた。

2016-06-12 01:35:29
蝙蝠 @koumoli

その国の結婚式は、必ず雨の日に行われていた。 何故そんな悪天候に、と疑問に思っていると、偶然挙式するカップルが見学に呼んでくれた。 そして、薄い屋根で覆われた会場に入った瞬間、私は全てを理解した。 雨粒が拍手のように鳴り響き、永遠に止もうとしないのだ。 空が愛を祝福する国だった。

2016-06-12 09:01:04
蝙蝠 @koumoli

夢が溢れ出す街だった。 夜中、ふとホテルから外を眺めると、窓という窓から白い煙が立ち昇っていた。 やがてそれは巨大な獅子になり、美しいドレスになり、空を自由に飛ぶ少女になった。 勿論カメラには映るはずもない不思議な光景。 その日私が見た夢も、夜の街を闊歩していたのだろうか。

2016-06-12 09:46:12
蝙蝠 @koumoli

岬を歩いていると、貝殻を売っている家族に出会った。 それほど珍しい物でもなく、何か食べる部分があるわけでもない。田舎の土産と判断してその場を離れようとすると、これの本質は中身にあるのだと力説された。 その迫力に押され渋々貝を耳に当てると、潮騒に混じって魚達の内緒話が聞こえだした。

2016-06-13 19:47:38
蝙蝠 @koumoli

あまりに永く生き過ぎたその生き物の足からは、幾つもの根が伸びていた。 皮膚は苔生し、花が咲き、小さな者共の住処と化している。 「俺の為に泣いてくれんかね」 それが、間も無く石となり、森行く旅人達の守り神となる彼が最期に発した、あまりに細やかな願いだった。

2016-06-13 20:23:54
蝙蝠 @koumoli

機械技術の発達した国だった。 人々は「1つより2つ、2つより3つ」をモットーに、義手や義足を山ほど付け足していた。 中には全てのパーツを倍にしたという猛者もいて、後は健康診断時の体重だけが怖いと笑っていた。 6本腕の親父さんが作るたこ焼きがとても美味しかったのでオススメだ。

2016-06-13 21:10:34
蝙蝠 @koumoli

そこは、一部の道路が金属で作られていた。 何度も噂で聞いた事のある国だったので、私は早速オフロードバイクで公道を走る。 初めての悪路に苦戦しながらも、やがてオルゴールと同じ要領で、地面から旋律が流れ始めた。 途中ネズミ捕りに引っかかってしまうほど、愉快な発想をする国だった。

2016-06-13 21:33:33
蝙蝠 @koumoli

「季節は何になさいますか?」 可愛らしい店員がそう尋ねるので、私は裏メニューの梅雨をお願いする。 やがて、テーブルに季節を閉じ込めた氷と背の高いグラスが運ばれてきた。 淡い藍と紫の氷は、少しずつ溶けながら水に混ざっていく。 紫陽花と雨の味がするそれは、喉の奥をさらりと滑った。

2016-06-18 20:12:03
蝙蝠 @koumoli

虫がそこらを闊歩している里だった。 翡翠の目をした蜻蛉の群れに、とぐろを巻いた大百足、人すら喰らう肉食の蜘蛛。 はてさて見た事のない虫が、我が物顔で生きていた。 里の婆様から滋養強壮に生きた幼虫を渡された時は流石に慄いたが、意を決して口に含むとムッチリとした食感が悪くなかった。

2016-06-20 19:25:08
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