蝙蝠【@koumoli】の #ふぁぼの数だけ行ったことがあるように架空の町の魅力を紹介する まとめ

空想街まとめました 101~200はこちら https://togetter.com/li/1195477 201〜270はこちら https://togetter.com/li/1502009
17
蝙蝠 @koumoli

ケンタウロスの住む街だった。 煙を吐く鉄の馬に追いやられ、彼らは少し生き辛そうだった。 「でも人力車よりは速いぜ?」 そう笑う兄ちゃんの背に乗り、私は街を見物する。 心地よい振動と共に眺めた世界は、柔らかな青草の香りがした。

2016-05-27 00:03:14
蝙蝠 @koumoli

髪を切らない一族だった。 老若男女が長く伸ばした髪を結い上げ、複雑な編み込みを凝らしていく。 それは、私の知っている髪型という概念とは全く別のものだった。 80近い老婆が豊かな白髪をマフラーのように首に巻いた姿は、お伽話に出てくる魔女を思わせ、私は年甲斐も無く興奮してしまった。

2016-05-27 00:17:24
蝙蝠 @koumoli

人間を飼う種族の街だった。 強靭な力を持つその種族の間では、か弱き人間をペットにするのが一大ムーブメントとなっていた。 「1日3食デザート付き、労働として1時間は膝の上で寝る事」という誘いにはかなり心惹かれるものがあったが、更なる街を目指してその申し出を断った。

2016-05-27 00:24:30
蝙蝠 @koumoli

夕刻街を散策していると、1人の住民が慌てた様子で私を家に引き込んだ。 この国では、金髪は日輪が輝きを与えし者、黒髪が宵闇の深みを授けし者、赤髪は明朝と日暮の写し見として、外に出歩く時間を定めているらしい。 面倒な制約ではあったが、空色と共に移り変わる人々は中々如何して美しかった。

2016-05-27 00:33:21
蝙蝠 @koumoli

時計を無くした国へ遊びに行った。 日の出と共に目覚め、日暮と共に眠る前時代的な価値観で動く国。 気楽で良さそうだと思っていたが、「太陽が南中したぞ!飯だ!!」と叫びながら弁当を食いだす人らを見て、この国は時計がある方が上手く回りそうだなと思った。

2016-05-27 00:46:27
蝙蝠 @koumoli

その国のお墓は、水晶の母岩で作られていた。 光を浴びて燦然と輝くグレイブヤードは、奇跡と呼ぶに相応しい光景であった。 何世紀前に亡くなったかも知れぬ人々の上に、数多に咲き誇る石の花。 これならば死ぬのも悪くないと、素直にそう思った。

2016-05-27 00:55:16
蝙蝠 @koumoli

春にも関わらず、どの家の軒先にも風鈴が下げてあった。 可愛らしい光景だと思いつつ、1人の老婆と話していると、仄かな音を立てて風鈴が揺れた。 「誰か来たねぇ」 そう言って、彼女はもう一杯お茶を用意する。 不思議だが何とも心地よい空間で、見えない誰かと共に街の名産品をいただいた。

2016-05-27 01:17:20

人外たちの世界
51.不死の国
52.魚人の世界
53.スクラップの末路
54.春の隠れ家
55.光の街
56.愛の国
57.閃光の街
58.足音の街
59.涙の街
60.鏡の無い国

蝙蝠 @koumoli

40歳までの人間に限り、好きな人に好きな臓器を提供出来る制度の国だった。 国民の二割ほどが、何らかの臓器を複数個持っているらしい。 愛しい人が自分の中で生き続けるのは面白そうではあったが、御歳350を迎えるというあまりに若々しい男性が「最早自分は誰なのだ」と問う姿は痛々しかった。

2016-05-27 22:28:17
蝙蝠 @koumoli

魚人達の住む世界を体験してきた。 長く滞在し過ぎると取り込まれるというので、シュノーケル1つで何度も潜水を繰り返す。 耐水紙を使って会話をしていると、魚人が突然遠くを指(ヒレ)差した。 その方角に顔を向けると、見たこともない程大きな川鳥が、煌めきと共に1人の青年を咥えて消えた。

2016-05-27 22:37:00
蝙蝠 @koumoli

「旅人さん?」 そう問いかけた電子音は、ヒビ割れ掠れていた。 「どうか、貴方の役に立たせてください」 懇願するAIに、私は今日の天気を尋ねてみる。 「本日は晴天。気温は22℃。夜から寒くなります。お気ぉつけつっっけくただ」 その言葉を最後に、巨大なゴミ捨て場は静寂に包まれた。

2016-05-27 22:49:59
蝙蝠 @koumoli

「春」と結婚したという女性が1人で住んでいた。 どこか浮世離れした雰囲気を纏い、人里から離れた山で住んでいる彼女を、私は始め白痴か何かだと思っていた。 しかし、私は見たのだ。 彼女が大樹に触れた瞬間、薄桃を開かせた桜の樹を。 蜃気楼のように乙女の頬を撫でた、春の柔らかな指先を。

2016-05-28 00:57:40
蝙蝠 @koumoli

その街に着くと、最初にスコップとカンテラを渡された。 なんでも地中に光が埋まっているから、暗くなったら適当に地面を掘ってほしいとの事。 半信半疑ながら掘り起こした光は、カンテラに用意された金平糖をエサに、仄かに辺りを照らし始めた。

2016-05-28 11:40:35
蝙蝠 @koumoli

美しい女王と化物の王がその国を治めていた。 女王は醜い化物を愛していた。 化物はその愛を疑っていた。 そして女王は、その疑惑を含めて愚かな王を愛していた。 魔物と人々が入り混じる城下町は、とても和やかな雰囲気に包まれていた。

2016-05-29 20:03:50
蝙蝠 @koumoli

瞬きをすると、睫毛から小さな閃光が放たれた。 初めての体験に戸惑っていると、間も無く雷が落ちると近くにいた女性に教えられる。 雨宿りも兼ねてカフェで話を聞いていたら「この現象の時は、好きな人がいつもより輝いて見えるの」と、睫毛から光を零しながら楽しそうに語ってくれた。

2016-05-29 23:08:20
蝙蝠 @koumoli

市の観光スポットを巡っていると、時折やけに重たい足音が聞こえてくるのが気になった。 何かを引き摺る様子も無く、ガイドに雑談がてらその話をしてみると、「その方はもうすぐ死んでしまいますね」と当たり前のように言い放った。 魂がこの地に沈みかけてるのだと、彼女は語っていた。

2016-05-30 00:57:47
蝙蝠 @koumoli

人と物の怪が共生してる街には、決して涙を流さない事という掟があった。 かつて種族の差を乗り越え結ばれた最初の2人が、絶対に相手を悲しませないことを約束に婚姻を認められたらしい。 そのため、この街で涙を流した者は、違う種族の姿が一切認識出来なくなってしまうのだと聞かされた。

2016-05-30 01:05:19
蝙蝠 @koumoli

鏡の無い国を訪れた時、水溜りを跨ごうとすると、側にいた老人に烈火の如く叱られた。 少しでも現身を何かに写そうものなら、向こう側の住民と入れ替わる恐れがあるのだそうだ。 まさか、と思いその場を離れようとすると、「試してみなよ」という私の声が水溜りから響いてきた。

2016-05-30 18:20:38

美味しいご飯を食べよう
61.手紙と希望の家
62.自殺の名所
63.言葉を食べる土地
64.人食いの国
65.記憶の国
66.緑の世界
67.トリップの国
68.空の島
69.音を食べる村
70.孤独の洞窟

蝙蝠 @koumoli

煉瓦造りの古い壁に、何百、いや何千枚もの手紙が貼り付けてあった。 そのほとんどが幼さの残る拙い字で、それでも必死に何かを訴えているのが分かる。 この地にたった1人で住む白い髭の老父は「この手紙がなくなる時は、世界から希望が消える時じゃ」とトナカイと共に笑って言った。

2016-05-30 19:26:32
蝙蝠 @koumoli

自殺の名所と呼ばれる崖から、ふっと身を躍らせた。 冷たい風が頬を切り裂き、背筋が粟立ち、鋭い岩が眼前に迫ってきた所で、私は思わず呻き声を上げる。 自殺体験ツアーとはよく考えたもので多くの人がVRで満足するらしいが、それでも数割の人間は本当の崖からもう一度飛び立ってしまうと聞いた。

2016-05-30 21:57:15
蝙蝠 @koumoli

言葉に味が付く土地だった。 「こんにちは」と言えば清涼感が広がり、「可愛いね」と褒めると、舌の上いっぱいに甘みを感じた。そして試しに「バカ」と言ってみると、喉にひりつく様な辛味が走り、堪らず噎せ返る。 焼け爛れた口と舌で「怖いでしょう?」と笑う女性に、私は無性に物悲しさを覚えた。

2016-05-30 22:58:34
蝙蝠 @koumoli

人を食べられる文化の国だった。 これまで何度か人肉を食べた事はあったものの、家畜として育てられる人間というのは珍しい。 私は少し奮発して、色白の可愛らしい女の子を捌いてもらう事にした。 特産品である塩と、軽く炙った少女の肉は、これまで食べたどんな人間より美味であった。

2016-06-01 03:18:42
蝙蝠 @koumoli

記憶を売買している街だった。 幸せな記憶を高値で買い取り、不幸を展示し、恋心を売りつけて、悲しみを忘れさせた。 興味半分で私の記憶を査定して貰うと、中々の金額を提示してもらった。 金に困ったらまた来ようと心に決め、新たな記憶を形成する旅に戻った。

2016-06-01 23:10:51
蝙蝠 @koumoli

陽の燦々と照りつける世界だった。 国一面を覆う程の芝生が、眩しいほどに視界を染め上げる。 光の中でしか生きられない緑色の人間達は、非常に牧歌的な暮らしをしていた。 歓迎の印に貰った花冠は、乾燥させてからお茶に入れると美味いと聞いたので、今から味わうのが楽しみだ。

2016-06-01 23:19:51