蝙蝠【@koumoli】の #ふぁぼの数だけ行ったことがあるように架空の町の魅力を紹介する まとめ

空想街まとめました 101~200はこちら https://togetter.com/li/1195477 201〜270はこちら https://togetter.com/li/1502009
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蝙蝠 @koumoli

死を悼まない国だった。 誰もが輪廻転生を信じ、自らが死ぬ事を恐れるものは居なかった。 「私の母よ」 そう言って、中年の女性は立派なヨウムを指差す。 ハムスターは義理の父、林檎の実は息子の玩具、庭のカラタチは遠い祖先の生まれ変わりだという。 国の至る所から、静かな鼓動を感じた。

2016-05-13 00:49:19
蝙蝠 @koumoli

流星群がピークを迎える日、星落つる国として名高い観光地にいた。 カメラを携えて頂に登った私が見たのは、息が詰まる程美しい光景だった。 広大な湖に映る満点の星空。 時折、空の宝石と水中の光が惹かれ合う様に近付き、水面で結ばれ弾けた。 私は眠ることも忘れ、ただその奇跡に魅入られた。

2016-05-13 01:16:11
蝙蝠 @koumoli

人も街も全てが美しいという素晴らしい国があった。 感動し、国を離れる道すがら、数軒のあばら家が並んでるのを見かけた。 何故あの素晴らしい国に住まないのか尋ねると、私より頭一つ背の低い男性が「住まないのではなく、住めないのです」と答えた。 あの国は今も、素晴らしいままだそうだ。

2016-05-13 01:56:59
蝙蝠 @koumoli

滞在が禁じられている島の近くを訪れた。 どの大陸からも離れた小さな孤島は、大規模な移動を行う鳥や虫たちの一時の安息地となっていた。 人間が一切介在しない太古のままの土地。 独自の生態系で回る無名の島が、どうかこのままひっそりと在り続ける事を祈った。

2016-05-13 02:13:44
蝙蝠 @koumoli

人口密度の高い街だった。 だが雑多な雰囲気と裏腹に、街にチリ一つすら落ちていない。 環境美化の秘訣を聞くと、「この下には私達の家族がいるのです」と市長は言った。 人が住めなくなった街は、墓を潰し、死体を埋め立てて土地を広げた。 命と引き換えに得た大地を、今日も誰かが掃除していた。

2016-05-13 02:25:14
蝙蝠 @koumoli

有角人種の街では、空前の「鈴」ブームが到来していた。 彼らは複雑な形の角に色鮮やかな鈴を提げ、歩く度にカラコロと金属や木製の軽い噪音を鳴らしていた。 商魂逞しい彼らは、無角人の為に鈴のピアスとイヤリングを売っていた。 耳元で微かな音色がする度に、あの楽器のような街を思い出す。

2016-05-13 02:43:57
蝙蝠 @koumoli

えらく芝居掛かった国だった。 動きも言葉も大仰で、何をするにも時間がかかる。 気になって歴史を調べてみると、かつて世界一二を競うほど貧乏だったこの国を、とあるNGO演劇団体が救ったという記述があった。 裸足で駆け回る子供たちの顔には、屈託のない笑顔が輝いていた。

2016-05-13 18:11:13
蝙蝠 @koumoli

影の薄い街だった。 「影にも自由を!影にも人権を!」というフレーズを叫びながら大通りを歩く人の群れ。 面白い考えもあるものだと、ふと道路を見ると、彼らの誰も足下に影が付いていなかった。 驚き蒼白になる私に向かって、私の影が手を振った。

2016-05-14 00:19:42
蝙蝠 @koumoli

全く同じ顔をした人物が2人ずついる国だった。 彼らのうち一方がクローンで、もう片方は本体だという。いざという瞬間まで、どちらがバックアップなのか明かされないため、ドッペルゲンゲル達の仲は良好であった。 別れ際1組の青年と握手をすると、どちらの手にも脈が走っていない事に気が付いた。

2016-05-14 00:39:33
蝙蝠 @koumoli

そこは魔法の都であった。 絵本で見たような空飛ぶ絨毯や、指ぱっちんで灯される蝋燭など、何もかもが幻想的だった。 印象深いのは、商店街に位置する賑やかな花屋さん。 手の平サイズのミニチュアゴーレムの体には色鮮やかな花が芽吹き、自ら日光浴や水を飲んで生きていた。

2016-05-14 00:45:07

文化と死生
31.地下帝国
32.青の果て
33.愛の墓場
34.祭りの村
35.優しい街
36.クッキーの国
37.まじないの国
38.小人の国
39.ゾンビの街
40.平等な子供達

蝙蝠 @koumoli

光という概念が抜け落ちた地下帝国。 この国にいる間、視力というものは何の意味もなさなかった。 人(?)々は互いにぶつからない様に、体の何処かに音の出る装飾品をつけていた。 暗闇の中、音だけの何かが軽快に走り抜ける街だった。

2016-05-14 01:45:32
蝙蝠 @koumoli

真っ青な雨が降る土地だった。 窓の外に、サファイアを削った様な底抜けの青が広がっていく。 その間、人の声は一切聞こえなかった。 硫酸銅を撒き散らす大国の兵器は、この地に生きてる人間がもういない事を知らない様だった。 美しい青だけが、あの街の住民だった。

2016-05-15 01:35:19
蝙蝠 @koumoli

この国は、愛の墓場と呼ばれていた。 牛を愛した男がいた。 兄を慕った弟がいた。 木と結ばれた女がいた。 大衆になれぬ者達がいた。 子が少ないこの国は、緩やかに死んでいくように見えた。 されど、死が2人を別つまで、別れ得ぬ者達の愛は潰えないようであった。

2016-05-15 11:27:48
蝙蝠 @koumoli

死者を弔うための村の祭りは、目の下に一筋の線を引くことが参加条件であった。 私もその風習に倣い、伝統芸能や郷土料理を楽しんでいると、不意に、いるはずのない人が視界の端に見えた気がした。 だからこのメイクか。 そう理解すると同時に、両の目から涙が零れ落ちた。

2016-05-15 17:45:24
蝙蝠 @koumoli

そこは優しい街だった。 子供達の将来のため、適性を検査し、レールを敷いて、はみ出すことは決して許されなかった。 そのおかげで、優秀な人材が大量生産されはしたが、彼らの誰もこの街以外に世界がある事を知らなかった。

2016-05-16 01:11:07
蝙蝠 @koumoli

我らの体が肉でできているように、その国の人々はクッキーでできていた。 砂糖を纏ったおしゃまな少女、ほろ苦ビターチョコのおじさま、プレーンタイプのおばあさん。 帰り際に買ったバニラエッセンスの香水は、今も上等の香りを放っている。

2016-05-18 20:54:21
蝙蝠 @koumoli

ジンクスの多い国だった。 敷居を跨ぐのは右足から、新しい服は晴れの日の午後に、赤信号連続5つで病気知らず。 興味深いものから馬鹿馬鹿しいものまで様々だったが、「流れ星を映した珈琲を飲むと幸せに」というジンクスだけはロマンチックで、今でもこっそり続けている。

2016-05-18 21:03:04
蝙蝠 @koumoli

そこは小人たちの国だった。 手のひら程の身長しかなく、流石に入国は拒否される。 そこでおにぎり2つと引き換えに、街を撮影してもらう事にした。 一週間後、3人がかりで運んでもらったカメラの中には、メジロの背に乗る騎士団やチューリップの中で寝る子供達の、夢のような世界が広がっていた。

2016-05-18 21:16:30
蝙蝠 @koumoli

数年前のバイオテロにより滅んだ街を、装甲車に乗って観光した。 生きている者は1人としておらず、車の中にいても強い腐臭が漂ってくる。 「何故こんな街を残しているんです?」 私がそう問うと「あれは昔、人だったからですよ」と運転手は答えた。 彼の指には、今もプラチナの指輪が嵌っていた。

2016-05-18 23:03:45
蝙蝠 @koumoli

「我が子」がいない国だった。 その国では生まれた子供たちが一堂に集められ、共同基金によって育てられていた。 何百人もの親と、何百人もの祖父母が、子供達の生活を平等に支える。 それはとても美しい光景であったが、1人の子が漏らした「私はもっと勉強がしたい」という言葉が胸に刺さった。

2016-05-18 23:08:02

彩り豊かな
41.止まった時間
42.電脳世界
43.空中庭園
44.人馬の街
45.長髪の一族
46.人飼いたちの街
47.空と髪の国
48.時のない国
49.水晶の墓碑
50.風鈴の街

蝙蝠 @koumoli

「この街へようこそ」 にっこりと微笑む男性は、どこか古めかしい服装をしていた。 彼だけではない。街行く人、家、言葉遣い、全てがかなり以前の流行だ。 「我々の主人はもう生きてはいませんが、これ以外の生活を知らないのです」 今日も彼らはプログラム通り、あの街の時を守っているのだろう。

2016-05-18 23:47:23
蝙蝠 @koumoli

緑滴る草原、花萌ゆる山、透き通る海、眩しいほどに輝く夜空、摩天楼の如きビルの群れと、長閑に眠る家畜たち。 全てが調和した世界を一週間ほど楽しんだ後、私はカプセルから出て栄養チューブを外してもらった。 人口が増え過ぎたこの国は、電脳世界でしか人を収容する事が出来なくなっていた。

2016-05-19 22:37:28
蝙蝠 @koumoli

水没が始まってる国だった。 まだ足首程度とは言え、街全体に透き通った水が張っている。 それでも、住民のほとんどは此処から去るつもりは無いようだ。 巨大な水溜りの中、天を見上げると、空中庭園のように高く建設された鮮やかな家々が並んでいた。

2016-05-26 03:20:00
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