- tasobussharima1
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独房、と呼ぶには快適に過ぎる部屋の中で。彼は資料をひたすら読み漁っていた。 移動に際して監視の目があることを除けば、待遇は賓客のものだった。望めば、船団の設備を見学することすら可能だった。閉じ込めるよりは警戒を解こう、という意図なのだろう。 「そう易々と懐柔はされんでおじゃるが」
2016-06-02 21:04:05現状を一言で表すならば、膠着状態と言えるだろう。船団は主戦力を先の戦いで喪失。集落は『マロ』が居なくなったこともあり、身動きは取れまい。 そして……あの新型得度兵器は海上で未だ瞑想を続けている。何らかの目に見えないダメージを負ったのか、それとも他の目的があるのかは定かではない。
2016-06-02 21:08:03ひとまず、得度兵器については考慮から外して良いだろう。広域徳エネルギーフィールドの『失敗』からの立て直し、そしてパイプラインに代わる動力を確保するまでは碌に動けまい。 渡海侵攻の動きにだけは注視する必要があるが、侵攻が再開されれば、もうどうしようもない。
2016-06-02 21:12:07これはアレか。艦長の最後の自爆で生じた疑問について演算してるのだろうか。タイプ・ミロクみたいに完全に停止してるわけではないんだろうけど、本当に瞑想してるのに近いんだろうな…… #徳パンク
2016-06-02 21:13:01他の方面でも被害を受けつつある得度兵器としては一刻も早く渡海侵攻して徳エネルギーを確保するのかと思ったけどそうでもないのね…… #徳パンク
2016-06-02 21:14:22「まぁ……他にすることも無いでおじゃるし」 彼は資料の山から顔を上げ、外を見た。一面のガラス窓の向こうに、静けさを取り戻した海が広がっている。 この部屋は、『エリュシオン』の中にある。嘗ての巨大企業の中枢たる巨人機。その巨体は地へと墜ちて尚、支配者の高みを具現している。
2016-06-02 21:16:01千年以上を生きて尚。世界には、彼の手の届かぬ場所があった。ここは間違いなく、その一つだった。 ……それだけではない。プラン・ダイダロス。そして、次元階差機関(DDD)を初めとする『徳エネルギーではないモノ』。 徳カリプス以前の、あの穏やかな世界の影で蠢いていたもの。
2016-06-02 21:20:03まぁ、しょうがない。確かに生きてきた時間は長いけど、それは同時期に進行していた、それなりに反目のある二つ以上の分野に精通する助けにはなりにくい…… #徳パンク
2016-06-02 21:22:50研究者としての生き方を捨て去ろうと、未知への興味を抑えることは彼にはできなかった。 あの得度兵器の行使した技術、徳エネルギーフィールドへの対策を発見することを条件に、『マロ』は限定的ながら船団の施設の使用と嘗てのトリニティ・ユニオンのデータバンクへのアクセスを許可されていた。
2016-06-02 21:24:04まぁ、徳技術者としてまっとうなお仕事である……まだあの位置にタイプ・シャカニョライが居座っている以上徳エネルギーフィールド対策は徳島的にも必須だしなぁ #徳パンク
2016-06-02 21:26:25己が知らぬ世界の暴威を、『マロ』は味わっていた。 「これを知っていれば……『そう』思うのは、無理ないでおじゃろうなぁ」 その果てにある、人類再興という夢。確かに、この世界を知っているなら夢見てしまうだろう。 嘗てあった人の可能性と、世界の有り得たもう一つの姿を知っているのならば。
2016-06-02 21:28:02いつぞの特別企画のインタビューからすると、田中ブッダ氏はその世界は知っていたようだ。知った上で、もはやそれは人類の手の届かないところへ飛んでいってしまったから希望はないと判断したようだけど…… #徳パンク
2016-06-02 21:31:02モニタには、徳カリプス以前に撮影された画像が表示される。 『抉れた』木星の表面。その周囲に浮かぶ、巨大な人工物の残骸。プラン・ダイダロスの残滓。恒星間宇宙船を建造しようと試み、失敗したその爪痕。 ……それで、終わった筈だった。人類は宇宙から撤退した。人の滅びは止まらなくなった。
2016-06-02 21:32:10抉れた木星……?次元階差機関の建造失敗か?ガス惑星が抉れるっていったい何があったんだ……。人類が宇宙から撤退したのは徳エネルギーの実現でエネルギー資源問題が解決したからだけではなかったのか #徳パンク
2016-06-02 21:34:28