- tasobussharima1
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「……じゃあ、変形チェスで」 僕が選んだのは、チェスを変形させた古めかしいボードゲームだった。いまどき、大抵のボードゲームはコンピュータで必勝法を編み出せてしまう。ボードゲームが人間の知性の象徴だったのは、もう何百年も昔の話だ。 だから、僕は敢えてそれを選んだ。
2016-06-03 21:36:03チェス… 量子コンピュータを持ち出すまでもなくコンピュータが勝ってチェスボクシング始める程度には枯れた分野っすなぁ… #徳パンク
2016-06-03 21:38:16何故って、この前ちょうど、そのゲームを新しい玩具で解きおわったところだったからだ。 「いいですよ、ルールブック貸してください」 「自分で調べなよ……」 「他人から借りるのがいいんですよ」 僕は入力に使った本を彼女に手渡した。今となっては珍しい紙の書籍だ。
2016-06-03 21:40:08流石に物理ボードゲームなら電子マニュアルってこともそうそうないんじゃないかな……いやまぁないでもないか #徳パンク
2016-06-03 21:42:18「ちょっと待っててください」 彼女はそれを受け取るやいなや、凄まじい速度で捲り始めた。いや、読んでいるのだろう。よく見ると、黄色い瞳が忙しなく動き回っている。 数分後。 「おまたせしました」 彼女は、本を最後まで捲り終え、パタンと閉じた。本当にルールを覚えたのだろうか。
2016-06-03 21:44:02そんな疑問は、すぐさま打ち砕かれた。 「わたしの勝ちです」 「なんで……」 気が付くと、僕は負けていた。どうして負けたのかさえ、分からなかった。 「じゃあ、ちょっとお願いを聞いて貰えませんか?」 断ることもできただろう。でも、そのときの僕の中は「なぜ」で埋め尽くされていた。
2016-06-03 21:48:05まぁお約束である。腕に自信がない奴はドージョー破りめいて勝負をふっかけてきたりなどせんのである #徳パンク
2016-06-03 21:49:05結局この二人は誰なんだろう……。徳カリプスよりもかなり前の話っぽいし、登場済みの人物だとすると女性キャラはノイラかエミリアかマロ氏の過去かの3択ぐらいになるけど #徳パンク
2016-06-03 21:49:39どうして負けたのか。途中からは、コンピュータの演算結果まで使ったというのに。 「ご飯、いっしょに食べませんか?」 「それがお願い?」 「はい。少し、興味があるので。食べながらでいいなら、勝てた理由も話してあげますよ」 僕はその言葉に一も二もなくうなずいた。
2016-06-03 21:52:01「……つまり、途中で不利を錯覚して、コンピュータの結果に頼り始めたのが敗因なんですよ」 食事時。僕は彼女と向かい合って座っていた。彼女が食べているのは、いかにも和食、という古めかしいメニューである。 「途中、何回か指し間違いをしてましたよね。私はそこを突いただけです」
2016-06-03 21:56:03自分が差し間違いをしたことで、コンピュータの認識する盤面と実際の盤面に差が生まれた。だから彼女はそれを突いて勝てた、ということらしかった。 「まぁ、盤面を長引かせれば、ヒューマンエラーの数は増えると思ってたんですけど。あたって何よりです」 問題なのは、それを可能とする『性能』だ。
2016-06-03 22:00:24「ルールを覚えたばかりで、そんなことまで……」 「あれ?わたし、何時ルールを覚えたばかりって言いました?」 ……? 「だって、本を読んで……」 「あれは、わたしの知ってるルールと差が無いか、確かめただけですよ。変なローカルルールで逃げられると困りますから」
2016-06-03 22:04:05まぁ少なくともゲームが終った時点でもまだ相手が初心者だったと思ってるなら普通に指し間違いしてなくても負けても不思議じゃないよね…… #徳パンク
2016-06-03 22:07:46「インチキだ……」 「じゃあ、またいつでも勝負しましょう。わたしも、勝てたらお願い聞いてあげますから」 そうは言われたものの。結局、僕は彼女には勝てなかった。 彼女は、人を『負かす』のが上手いのだ。あらゆる手管で勝利を手繰り寄せ。それでいて、何故か憎しみを抱かせない。
2016-06-03 22:08:05