- tasobussharima1
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「みんな、僕の名前変だってバカにするんだ……」 僕と彼女は、いつの間にか言葉を交わすようになっていた。勝負で負ける度に、彼女は「一緒にご飯を食べましょう」と僕を誘った。それ以外の要求は特にしなかった。最初は無言だったけれど、居心地が悪かったので段々と会話をする羽目になった。
2016-06-05 21:04:05これは……田中ブッダ氏か!?徳エネルギーの確立後ならともかく、生まれた時点では徳エネルギー文明ではなかったはずの田中ブッダ氏はずっとそう思っていても不思議ではない #徳パンク
2016-06-05 21:06:18多分、これも彼女の掌の上なんだと思う。 よくは覚えていないけれど、色々なことを話したと思う。『学校』で習ったこと。好きな食べ物のこと。でも、一番記憶に残ったのは。 「まぁ、変わってはいるんじゃないですかねー。私も最初聞いた時マジウケでしたもん。腹筋攣りましたもん」 「ひどい……」
2016-06-05 21:08:05まぁもし田中ブッダ氏であるならその反応もやむなし……。もしかして徳ネームという風習自体、後に田中ブッダ氏本人が仕向けたものじゃないだろうな…… #徳パンク
2016-06-05 21:09:27名前について話した時の、彼女のこの反応だった。『学校』の生徒はネームタグを付けさせられていたけれど、僕は大抵目立たない所に付けるか、服の下に隠していた。自分の名前が嫌いだったからだ。 「まぁ、わたしの名前も、よく間違えられるので。全く人のことは言えないんですけど」
2016-06-05 21:12:05少年の側は田中ブッダ氏で確定として(失礼)、それを掌の上でころころしてるお相手の方は一体誰なのだろう #徳パンク
2016-06-05 21:14:15思い返してみれば、驚くべきことに。この時まで、僕は彼女の正しい名前を知らなかった。言葉を交わすのは、勝負の時と食事の時くらいで。別段、名前を覚えなくても不自由しなかった。 「読めます?これ」 『千里』。彼女の名札には、漢字でそう書かれていた。 「せんり」 そう読む字だった筈だ。
2016-06-05 21:16:04「違います」 彼女は、少し不機嫌そうにむくれた。僕がわざと間違えたことに気付いたのだと思う。 一見、定まった読み方のある漢字でも、固有名詞に使われる場合には読み方が変わる。その程度のことは知っていた。 それに……彼女は確か、『先生』達からは「チサト」と呼ばれていた。
2016-06-05 21:20:03「ちさと……ちゃん」 初めて口にした、彼女の名前。どこか気恥ずかしく、それでいて、心地よい響き。 それを聞くと、彼女は笑った。笑ったというより、ニンマリと笑みを浮かべた。そして、思いっ切り勿体を付けて。 「違うんですよ、これが」 「え……?」 「正解は、『ちのり』です」
2016-06-05 21:24:06やはりそんなストレートではなかった。千里で「ちのり」……それは読めんなぁ……。(いまやぁサウザンドマイル=サンとかでなくて良かった) #徳パンク
2016-06-05 21:27:05「……なんだそれ……」 勇気とか、色々なものを返して欲しかった。 「酷い話ですよね。漢字なんて段々使わなくなってるからって、読み仮名を音訓で統一しちゃうなんて」 この国は、衰退の先頭を走っている。言葉も、文字も、失われ始めている。だから、彼女の名前もその一端ということなのだろう。
2016-06-05 21:28:03そういえば肆捌空海は光定少年が漢字を読めることに驚いてたなぁ。この頃にはすでに色々とアバウトになりつつあったのか #徳パンク
2016-06-05 21:30:24