ストレイトロード:ルート140(20周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は951~1000+おまけ。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ガラス張りの部屋はベルトの迷路だ。機械で成型された酢飯の塊が魚の切身に覆われる様子を見て藍が言う。「昔は人の手で作ってたのよね」今も高級品はそうだ。職人が生き残っていればの話だが。「機械で作るのは安物よね」否定はしない。「どうして安物ってことを見せびらかすの?」答えられなかった。

2016-05-10 18:57:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、963。酢飯。 過去のリクエストワードを拾って一つ。イメージのベースはいつか行った海外の寿司屋の安っぽさ(ガラス越しに製造過程を見せる場所があったわけではない)。 工場見学は人気があるけど、時にはちっともワクワクしないものを見せられることだってある。

2016-05-10 18:57:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「頼むよ!君こそ世界を背負って立つ人間なんだ!」酔いの回った客が藍の背を軽く叩いた。愛想笑いで流す少女を私は店の片隅で見ていた。「さっき微妙な顔してたでしょ」宿に戻ってから藍が言った。「昔同じように言われたことを思い出したもので」「ふーん」私が背負う失敗の傷を察しない顔をされた。

2016-05-11 19:10:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、964。背負う。 一人の肩では潰れてしまう。 仲間と組めば、ありふれた物語の素材になる。

2016-05-11 19:10:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

あの怪物は太古の生物がどこかで生き長らえ独自に進化した種だ、という俗説があるらしい。根拠のない話と学者は無視しているが、藍は切り捨てる気はないと言う。「それがヒントかもしれないじゃない」毎日のように端末のニュース画面、電波から遠い日は地図を眺めるのも、隠れ里を探す為なのだろうか。

2016-05-12 19:30:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、965。俗説。 自由な発想は時に大きな発見の礎となる。

2016-05-12 19:30:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

夜通し降り続いた雨はようやく上がった。正確には私達の車が朝まで雨雲と並走し、ついに進路から外れたのだ。「やっと楽になった」昨日は車内に籠っていた藍が、外に出て体操をしている。不思議な動作は学校で習ったものらしい。「あの雨そろそろ着いたかしら」雲が車に誘導されていた疑いが浮上した。

2016-05-13 20:08:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、966。体操。 変な動きに見えても、自己流より効率がいい何かを隠しているかもしれない。

2016-05-13 20:08:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

目的地の手前で車を停め、徒歩で訪ねる。それが藍の計画だった。しかし駐車位置が地元の悪童達の言う縄張りと重なった為に、藍と少年の睨み合いが始まった。私は仲裁に入ろうとしたが、割り込ませた腕を藍に掴まれた。「あなたはもちろんわたしの味方よね?」私が答える前に相手の怒りが沸点に達した。

2016-05-14 20:22:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、967。仲裁。 子供を大人の理屈で止めるのは結構難しい。

2016-05-14 20:23:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

人間と怪物が領土を争う山から稀少な植物を救出した人々がいた。麓の建物で栽培の試みが続き、薙ぎ倒された樹木も接ぎ木で辛うじて守られているという。「中でも熱心な若者がいてね」私達に施設を案内する代表者が目を細めた。「草木が助けを求めていると本気で訴えていたよ」藍が何か悟った顔をした。

2016-05-15 20:42:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、968。接ぎ木。 守れる手段があるなら何でもする、と言って困難と戦う人がいる。 いつの時代、どこの世界にも。

2016-05-15 20:42:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ラジオが研究施設の火事を報じた。クリーチャー研究の殿堂と紹介され、藍は首を捻っている。本当ならあの怪物の、未だ統一されない正式名を巡る争いの中枢を意味するが。「でも何で名前まだ決まらないの」新種の命名規則の仕組み等も要因だが本筋は違う。「皆、名付け親という権威が欲しいのでしょう」

2016-05-16 19:42:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、969。殿堂。 頂点には一人しか立てないと悟られた瞬間、協力の輪は炎の車輪に変わる。

2016-05-16 19:42:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

空気の塊が膨れ上がった雲を突き破り落ちてきた。そう気づいた時には私達も足元の草木も同じ方向に倒れていた。藍もまた立っていられなかったようで、跳ね起きて事件の元凶を捕らえに行く姿が見えた。未熟な魔女が呼んだ突風はいわば気圧で出来た巨大な拳で、それを一人の為に全力で振り下ろしたのだ。

2016-05-17 19:07:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、970。突風。 いわゆる必殺技。

2016-05-17 19:07:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

村の食堂は一人の男の自慢話に沸いていた。話を聞く限り男は武器を持たず、生身の体一つで怪物に挑み、退けたらしい。「で、どうなったの」「大したことなかったな。餌やったら喜んで食いついて、それで帰ってった」藍が黙ったまま席を立ち、男を平手で打った。空気が凍った。「次の餌はあなたかもね」

2016-05-18 19:35:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、971。生身。 人に会った。何もしないのに食べ物をくれた。

2016-05-18 19:35:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「珍しい物が入ったんだ」古道具屋の主は藍を誘うように言い、店の奥から色褪せた箱を出した。〈本日入荷〉の札を捲ると無線機が現れた。形式以前にブランド自体が相当古い。「まだ使えるの?」「もちろん」ただし近くで誰かが電波を飛ばせばの話だ。藍は心当たりでもあるのか、具体的な質問を始めた。

2016-05-19 19:36:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、972。入荷。 手段を見る顔と目的を見る顔は違う。

2016-05-19 19:37:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

昨夜繕い直した上着に袖を通した瞬間、二の腕に鋭い痛みを感じた。調べてみると肩口に縫い針が一本刺さっていた。そこは直した箇所ではないし、昨夜使った針は確かに片付けたはずだ。不審に思いながらよく見ると、覚えのない裂け目とそれを無理矢理繕った跡があった。そういえば藍がまだ起きてこない。

2016-05-20 19:41:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、973。縫い針。 真夜中に現れた誰かの仕業かな?

2016-05-20 19:41:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

二人の旅が始まった頃は藍だけが財布を持っていた。何を買う時も使う時も彼女が支出に悩む様子はなく、資金をどこから捻出するのか判らなかった。ある夜、そのからくりに気づいた私は、藍の就寝後に一通のメールを書いた。翌朝、冷たい空気を纏った魔女が私に詰め寄った。「パパに何を吹き込んだの?」

2016-05-21 21:05:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、974。捻出。 限られた中から得るスキルは何事にも必要。

2016-05-21 21:05:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

敵を蹴散らす暴風の中心を遠巻きに見守っていると、背後に誰かが来た。「風の魔女の実力はこの程度じゃない。お前に扱いきれるのか」藍に人間としての伸び代は充分にあると知っている。手にした力の奥底は全く解らないが、「彼女を自由に扱うのは自身だけです」私に出来るのは風を通す道筋作りだけだ。

2016-05-22 19:56:26
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