【ビギン・トゥ・ドロウ・ア・ガリョウ】#2

アジャイトー @agito710515

だが、そこに文字はなかった。空白のメッセージ。差出人は、タカラダ。「……」アジャイトーは酷い胸騒ぎを覚えた。ただの操作ミスだろうか？だがこれが緊急の連絡とすれば？アジャイトーはシツレイを承知でタカラダに直接コールする。 22 #agatxt

アジャイトー @agito710515

ピリリ…ピリリ…「……」繋がらない。「アー、ジュン＝サン？ダイジョブですか？」アジャイトーの表情にただならぬものを感じたキリツギが思わず尋ねる。「スイマセン、キリツギ＝サン。急用ができました」そう言ってアジャイトーは部屋を飛び出す！ 23 #agatxt

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「アッ！待って！まだ座標…」キリツギの声が急速に遠ざかる。ドアに弾かれた黒人ヤクザが恨めしげにアジャイトーを見、ようとしたが、既にアジャイトーはそこにはいなかった。あとにはポカンとしたキリツギと黒人ヤクザだけが残された。壁のポルノ広告が一枚ハラリ、と落ちた。 24 #agatxt

アジャイトー @agito710515

既にニンジャ装束を纏ったアジャイトーはビルの屋上に立ち、ダイヤモンド・ヤクザ・クランの事務所の方向を見た。ここから事務所はそれなりに距離がある。だが！「イヤーッ！」アジャイトーは跳んだ！白い風となりビルの屋上を跳び渡る！ 25 #agatxt

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「ハァー……ナンデ俺が」クビジッケンが悪態をつき、近くにいたヤクザの尻を蹴った。「アイエエエ…」「ったく、ビビってねえで作業を進めろ！」「ア、アイエエエ…！」「チッ、クソッタレ」クビジッケンは再び悪態をついた。 27 #agatxt

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ここはダイヤモンド・ヤクザ・クランの事務所だ。だが、先日まで綺麗に掃除され整えられていた事務所内は酷く荒され、見る影もない。そのほとんどはこのクビジッケンが行った。弱小クランとはいえヤクザを圧倒するこの者の正体は？然り、ニンジャである。 28 #agatxt

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彼はフリーランスのニンジャではない。クビジッケンは恐るべきニンジャ強盗団『ウバイ・ニンジャクラン』の一員だ。ダイヤモンド・ヤクザ・クランは不幸にもその標的にされ、そこに派遣されてきたのがクビジッケンだったというわけだ。 29 #agatxt

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「クソ…」しかしクビジッケンは不機嫌であった。彼は本来、標的を調査偵察するのが役目であり、このように実際に襲撃をかけるのは別のニンジャの役回りである。だが、この時ウバイ・クランは別の標的もマークしており、威力部隊はそちらを優先したのだ。 30 #agatxt

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結局、現地を直接調査したクビジッケンがヤクザ事務所の襲撃を任された。幸い、こちらはただのヤクザ・クランであり、ヨージンボと目されるニンジャは暫くいなくなるらしい。カラテに優れるわけではない彼でも問題無いだろうという判断だ。 31 #agatxt

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ヤクザ達は事務所の隠し扉の奥から、素子や大トロ粉末、宝石の類を運び出す。その顔は恐怖で歪み、涙の跡が新しい。黒いヤクザズボンの股座は失禁による染みが見て取れた。見せしめに殺されたグレーター・ヤクザの死体が、彼らの恐怖を加速させる。 32 #agatxt

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オヤブンのタカラダはどうしたというのか？殺されてしまったのか？…答えは否。タカラダは全身を痛めつけられ、しかし辛うじて生きていた。その体を縄で固く縛られ、屈辱的ドゲザ姿勢を強制されていた。ゲシッ！彼の頭を踏むのはヤクザブーツ！ 33 #agatxt

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その足の主は…なんということだ！彼はダイヤモンド・ヤクザ・クランのニュービー・ヤクザだ！これはいかなることか！？「ヘヘヘ…タカラダ＝サン。ブザマですねぇ…実に愉快」ニュービー・ヤクザ、マキチは下卑た笑みを浮かべ、タカラダを見下す！ 34 #agatxt

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彼はニンジャだったのか？…答えは否。彼はただのモータルであり、しかし決して善良では無かった。ウバイ・クランに取り入った彼は、ニュービー・ヤクザとしてダイヤモンド・ヤクザ・クランに潜入し、見事彼らが隠し持つ財産を探り当てたのだ！ 35 #agatxt

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このままビズが成功すれば彼は多額の報酬を手に入れ、タカトビし悠々自適の生活を送るのだ、とマキチは考えている。しかし現実は甘く無い。ウバイ・クランは彼を体よく利用し捨て駒にするであろうことを、マキチ自身が気付いていないのだった。 36 #agatxt

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「グ…マキチ！てめえは間違ってる！相手はニンジャだ！ニンジャとつるんで無事で済むわけが…！」「アア！？アンタ自分の立場わかってねえの…？俺に説教くれるたぁ…いい度胸だなッ！」マキチのヤクザキック！「グワーッ！」 37 #agatxt

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「いいか！俺は賢い！アンタよりも！俺は偉い！アンタよりも！分かるか！エエ！？」一言ごとにマキチはタカラダにヤクザキックをお見舞いする！「グ、グワーッ！」「偉そうにしやがって！あんたの顔見るたびムカついてたぜ！」ヤクザキック！「グワーッ！」 38 #agatxt

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実際、タカラダを生かしたのはマキチが鬱憤を晴らすためであった。クビジッケンは面倒だったがそれに従い、タカラダを縛ったのだった。「それによォー、アンタだってニンジャに頼ってるじゃねえか。偉そうなこと言ってよォ」マキチはタカラダの頭を掴む。 39 #agatxt

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「『ニンジャとつるんで無地で済むわけが』…？ハッ！今の状況！インガオホーが下ったのはアンタの方だったようだなァ！」そう言ってマキチは哄笑した。すぐ傍では最後の宝石類を袋に詰めさせられるヤクザ達の姿。それを冷徹に眺めるクビジッケン。 40 #agatxt

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「クソォ…クソォ…！」タカラダは悔しさにたまらず涙を流した。（こんな理不尽があっていいのか！こんな不条理があっていいのか！これがこの世だと！）タカラダは胸の内で吠え、自由の利かぬ体を捻る。縄は固く結ばれ、解けない！ 41 #agatxt

アジャイトー @agito710515

「これで最後か」クビジッケンはヤクザに聞く。「ハ、ハイ」「本当か？」「ハイ！モチロンデス！」威圧的に迫られたヤクザは思わず失禁！「よし」そう言って、クビジッケンは未だ哄笑をやめない煩わしいモータルに近づく。もう用済みだ。 42 #agatxt

アジャイトー @agito710515

だがその時。「ム？」クビジッケンはなんらかの存在がここに近づいているのを感じ取った。クビジッケンは意識を集中しその優れたニンジャ知覚力を研ぎ澄ませる。これは…「…なに！？」クビジッケンはその時、ニンジャ視力によって窓の向こうにその存在を視認していた。 43 #agatxt

アジャイトー @agito710515

武装シンカンセンの如きスピードで白い影が突撃してくる！「イ…」クビジッケンは側転回避を試みた。だが白い影の方が早い！窓を突き破り、その勢いのまま飛び蹴りを繰り出した！クビジッケンは直前でカラテガードに移行したが、飛び蹴りの衝撃が体を貫く！「グワーッ！」 44 #agatxt

アジャイトー @agito710515

クビジッケンは吹き飛ばされ、事務所の壁に強かに打ちつけられた！「グワーッ！」白い影は後方回転跳躍し、たった今己が突き破った窓のすぐ傍に着地！両の手を合わせ、オジギを繰り出す！「ドーモ、皆さん。アジャイトーです」その鋭い両目は見開かれ、怒りに燃えている！ 45 #agatxt

アジャイトー @agito710515

【ビギン・トゥ・ドロウ・ア・ガリョウ】#2 終わり。#3 へ続く。 #agatxt