【ビギン・トゥ・ドロウ・ア・ガリョウ】#2

アジャイトー @agito710515

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【ビギン・トゥ・ドロウ・ア・ガリョウ】#2 #agatxt

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オールド東京湾を臨む寂れたオフィスビル街。その一角に、メタルフレーム眼鏡をかけた冴えない男がいた。やや大きめのエナメルバッグを下げたその男はアジャイトー。ニンジャだが、今の格好からそのことはうかがい知れない。 1 #agatxt

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今日ここにやってきたのは、ある情報屋に会うためだ。アジャイトーには探したい男がおり、探したい場所がある。ツテもない彼は知り合いのヤクザオヤブン、タカラダから一人の情報屋を紹介されたのだ。 2 #agatxt

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アジャイトーはタカラダから渡された地図をニューロンに刻みつけ、それを頼りに入り組んだ路地を進む。潮風のためか錆の匂いが強い。やがて、彼は薄暗いビルの裏手に一つのドアを見つけた。ここだ。 3 #agatxt

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ドアを開け中に入ると、少し急な階段があった。『熱いマイコ』『ヘンタイ安い』『大きく出る』などのポルノ広告が壁に貼られている。階段を上りきった先には広い廊下があり、その先にドアと、その前に立つ黒人ヤクザが一人。 4 #agatxt

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アジャイトーは物怖じせず進む。黒人ヤクザがアジャイトーを睨む！「ドーモ。なんの用ですか？」黒人ヤクザは威圧的！後ろに回された手には金属バットが握られている！コワイ！だがアジャイトーは物怖じせず進む！ 5 #agatxt

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黒人ヤクザからやや距離を取り立ち止まる。「ドーモ。ジュン・ハライです」アジャイトーは偽名を名乗る。こういう場でニンジャとして振舞っても余計なトラブルを招くだけだ。彼はエナメルバッグからあらかじめ取り出しておいた紹介状を見せる。 6 #agatxt

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「ダイヤモンド・ヤクザ・クランのタカラダ＝サンからの紹介で来ました。先に連絡した通り」アジャイトーは静かに告げた。黒人ヤクザが紹介状に顔を近づける。しばしの沈黙。「「……」」だがやがて、黒人ヤクザが顔を離し、道を開けた。 7 #agatxt

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「ドーゾ」黒人ヤクザがドアを開ける。アジャイトーが入室する。室内には巨大UNIX計算機が3台。それ以外にもよく分からない機械が壁を埋め尽くし、部屋をより狭くしている。窓はない。その中で、液晶モニターとにらみ合う男がいる。 8 #agatxt

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男はサイバーサングラスをかけ、首筋から二本のLANケーブルが伸びる。男はしばしモニターの文字列と格闘していたが、室内にいる客人に気付くと笑顔でアイサツした。「ドーモ。キリツギです」「ドーモ。キリツギ＝サン。ジュン・ハライです」 9 #agatxt

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「これを」アジャイトーは紹介状をキリツギに渡す。「タカラダ＝サンからですね。ハイ、確かに」タカラダからの連絡もありスムーズに事が進む。キリツギは紹介状をデスクの引き出しにしまい、アジャイトーに椅子に座るよう促した。 10 #agatxt

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「さて。ではどんな情報をご所望で？」「教会です」アジャイトーは単刀直入に告げる。「名付けを行う奇妙な教会です。場所が知りたい」「教会の名前は？」「分かりません」「フゥーム…」キリツギは顎をさすり、モニターに向かい合う。 11 #agatxt

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しばしキリツギはモニターの文字列を追う。アジャイトーの位置だと、モニターにはフィルターがかかり何が映っているのかは見えない。アジャイトーは目を閉じ、おとなしく待つことにする。 12 #agatxt

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-----「……ッハ！…アレ…ここは」「…………」「…あの」「……ンゴ」「あ、あの」「……ん？…あ、ドーモ」「エ、あ、ドーモ…エト」「スイマセン。お昼寝の時間だったので」「は、はぁ…」「眠気覚ましにコーヒーでも。話はそれからにしましょう」----- 13 #agatxt

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-----「オネガイシマス！どうか私に啓示を！救いを！」「ふむ、良いでしょう。本堂へついてきてください」-----「ぐ、うぐぐぐ」「あ、アア…」「来たーッ！ﾌﾟﾌﾟｵｳﾌﾟｵｲﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟﾎﾟ」----- 14 #agatxt

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…「アーそれらしいのが」「むぐぐ」「アー、ジュン＝サン？」「…ハッ、あ、スイマセン」（いかんいかん。つい物思いに耽ってしまった。）アジャイトーは少し頭を振り、意識を現在へ向けた。キリツギがキーボードでなにやら操作している。 15 #agatxt

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「アー。その前に、そのう」「アッハイ」アジャイトーはエナメルバッグの中身を漁り、新聞紙でくるまれた長方形の塊を取り出した。「こちらを」「ハイ確かに」それは所謂”情報料”だ。中身は大トロ粉末や素子である。キリツギは長方形の塊を素早くデスクの奥にしまう。 16 #agatxt

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オフラインのデータベースを確認しながらキリツギが言う。「ネオショーナンにある教会に、そのー、名付け？をする不思議な人がいるみたいです」「…ふむ」「まぁ、教会と言ってももう廃墟みたいですけど。残念ながら名前までは」 17 #agatxt

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「…そうですか。アリガトウゴザイマス」「ンー、思ったほど情報が無くて。スイマセン。あぁ、あと」そう言ってキリツギは、一度間を置く。「？」「アー、まぁこれはちょっと、イマイチ」「なんです。教えてください」 18 #agatxt

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「アー、そのニンジャが」「ニンジャ？」「その教会に、ニンジャが、出入りしていると。噂が」「……」アジャイトーはそこで、複雑な思いになった。沈黙を呆れと受け取ったのか、キリツギは慌てて訂正した。「いやまぁ、噂ですよただの、ハイ」 19 #agatxt

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ニンジャとはモータルにとっては恐怖の対象であると共に、荒唐無稽なフィクションの存在でもあるのだ。「まぁきっと、ヨタモノとかそんなですよ。何にせよ、行くなら用心にこしたことは無いです」「なるほど」アジャイトーは忠告を素直に受け入れた。 20 #agatxt

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「では、教会の座標を」ピピピ！キリツギが話している途中で、アジャイトーの携帯IRC端末が小さく鳴った。誰かからのメッセージを知らせる音だ。「ア、スイマセン」「イエイエ、ドーゾ」「シツレイします」アジャイトーはIRCメッセージを確認する。 21 #agatxt