イギリス植民地軍における「マーシャル・レイス」とナショナリズム
デカン騎兵とかセネガル兵とか、何を考えて戦っていたのかは興味あります。大祖国戦争でも中央アジア出身の兵は全般的に士気が低かったそうで、当然だろうなあ。
2016-07-03 13:16:47この「マーシャル・レイス」という考え方はインドだけではなく西アフリカでも顕著にみられる。これは英人の素朴な偏見とともに、一定の教育を受ければ誰もが兵士になることができるという徴兵制の国民軍の前提と、彼らがそういった近代的な国民となりうることを否定できる都合の良い概念だった。
2016-07-03 15:23:02そして植民地軍は均質な国民軍という段階をすっとばしてほぼそのまま新興独立国の国軍となり、この「選ばれた種族」の考え方は志願制軍隊のプロフェッショナリズムと合流する。国軍の社会への統合は不十分にとどまり、政軍関係を不安定にした。
2016-07-03 15:28:39「マーシャル・レイス」はよい兵士になるがよい指揮官には絶対なれない(それは本国の「文明人」だけが果たせる役割)というのが前提なので、彼らに高等教育の機会が与えられたりはしない(志願する「レイス」の人間も望まない)。だから初期のアフリカ人ナショナリストに植民地軍出身者はほぼ絶無。
2016-07-03 15:54:01昼の続き。「マーシャル・レイス」という概念が英印陸軍の統制をどれだけ強化していたかについては、大戦中インド人兵士の植民地支配に対する反抗が散発的なものに留まったことからもうかがえる。インド国民軍を除けば最大の反乱はそういった伝統を持たないシンハラ人のセイロン防衛軍で発生している。
2016-07-03 21:58:34また大戦終結直後の1946年に英領インドの沿岸全域を巻き込む大反乱を起こして植民地体制に決定的な動揺を与えたのが、やはり特定の民族からの募兵という伝統を持たなかった英領インド海軍の水兵たちであったこともまたそれを証明するものかもしれない。
2016-07-03 22:02:30セネガル狙撃兵については小川了『第一次大戦と西アフリカ フランスに命を捧げた黒人部隊「セネガル歩兵」』がそれにこたえるものに、なるかと思ったんだけど、残念ながらブレーズ・ジャーニュ(ディアニュ)をメインに据えている論考で、セネガル兵自体の肉声はほとんど収録されていない。
2016-07-03 16:13:04amazon.co.jp/Memoirs-Maelst… 当事者の肉声が聞けるという点ではこのMemoirs of the Maelstrom: A Senegalese Oral History of the First World War が一番だがオーラルなので読みやすいとは言えず
2016-07-03 16:14:37「マーシャル・レイス」概念に対する疑問
明治維新前後の武家階級の忠誠心が、天皇や将軍というよりは藩侯(というかお家)に向けられており、それを「国」に収斂させるのが結構大変だったことを考えると、英国王がそこまでクシャトリヤ階級の忠誠の対象として定着してたってのは興味深いね
2016-07-03 14:59:04『少年キム』にも、インド大反乱の際英側で戦ったことを誇る退役インド人兵士が出てきたなー。
2016-07-03 14:57:28ムガル帝国でさえ、皇帝への忠誠というのはさほどでもなく、基本的にクシャトリヤの忠誠というのはその門閥に向けられていたと思うので、正直「英国王への忠誠心」がいうほど一般的だったとは思ってません。帝国の統治うんぬんも含めて。
2016-07-03 15:01:24まあでも門閥の頂点に立つクシャトリヤが、英国留学して国王への忠誠を強めて戻ってくれば、一番上を抑えている限りにおいて機能はするし、そういうこともあったかもぐらいな気はする
2016-07-03 15:02:42なのでまあ「騎兵は何を考えていたか」ということと、その周辺のインド人(という意識があったかどうか)が何を考えていたかには大分の差がありそうであり
2016-07-03 15:10:14