【HYDE】Reunion -再会-

その想いは、運命は、彼女が望んだもの。 もう一度、貴方に逢えたら。
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ばしこし@文垢 @bs_ks_0

お前は、死んだのか。 ーーーいや、俺は生きている。 お前は、生きているのか。 ーーーいや、俺は死んでいる。 お前は、誰なんだ。 ーーー俺は、俺だ。

2016-05-07 02:07:46
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

私は知った。この世界を見守りし"祖なる存在"を。全ての生命の起源、運命の創まりーーー様々な文献や解釈があるが、どれも真実かと聞かれれば難しい。だが、一縷の望みを掛けるには十分過ぎる程に。僅かな希望を抱くには、申し分ない存在。「...祖龍...ミラルーツ」。古の龍に、願いを込めて。

2016-05-11 23:18:13
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

感情、意思、欲望。 様々なものが渦巻く心は、一体何を求めているのか。 ああ、わかっている。 「また、君に会いたい」と。 突き動かす想いは、ただこの一心。

2016-05-11 23:30:18
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

ーーーそれは、とある再会の物語。

2016-05-11 23:36:10
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

『君とまた、出会えたら』 その願いは、今もこの胸の中にーーー。

2016-05-12 20:32:14
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「それは本当か!?」。ある昼下がり。ハイドは、いつの間にかまだ幼さの残る少女の肩を掴んでいた。無意識での行動だったのか、力加減がなっておらず。「...ハ、ハイドさん...ちょっと痛い、かも」。「...あ...すまない」。指摘されて初めて気付き、慌てて少女を束縛していた手を離す。2

2016-05-12 20:34:25
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

"祖なる龍"。以前から名前は耳にしていた。古龍であるという事と、古の文献に様々な情報が記されているという事。だが、そこに羅列される情報のどれをとっても決して"真実"とは呼べない程に、その存在はベールに包まれたものである。この世に生きとし生けるものかどうか、それすら定かではない。2

2016-05-15 14:52:55
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

そう。読書好きなセーレから、その言葉を聞くまでは。「...運命を、創りし存在」。目の前の少女が発した言葉を、無意識に繰り返す。運命を創る、生命の根源ーーーそれはつまり、全ての命を司る起源。「こんな古龍居るのかな...?私、聞いたことないよ」。キョトンとした目で本を見やるセーレ。3

2016-05-15 14:57:41
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

もしかして、この古龍なら。「...何か知っているか?」。淡い期待が浮き沈みする、そんな感覚。ハイドは、己の中に魂を預けるふたつの存在に問いかけた。《...名は何度か。しかし、実際に姿を見た事は...未だ無い》《...私もだ》。予想してはいた答えだが。「...そうか」。声が沈む。4

2016-05-21 23:16:24
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「でもすごいよね、運命を司ったり龍の祖だったり」。古の祖龍の情報が羅列されたページを見ながら、セーレが感嘆した。それもそうだろう。運命を創り、龍達の魂の起源であり、命の祖とも呼べる存在。そんなものが、実際にこの世に生きているのであれば。それはいい意味でも悪い意味でも天変地異だ。5

2016-05-21 23:20:31
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「...ありがとうセーレ、面白い情報だった」。未だ興味津々に本を見やる少女を一瞥し、ハイドはその姿に背を向けた。と。「あっハイドさん!」。背に可愛らしい声が飛んできた。ハイドはこの声が好きだった。「今日のご飯、何がいい?」。「セーレの得意なものがいい」。「わかった!任せて!」。6

2016-05-21 23:24:01
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

何もない空間。空気の感触さえ肌には感じられない。此処はどこだ。幸い、体の自由は失われてはいなかった。立ち上がったハイドの視界を埋めたのは、果てしない白...無の空間。「...ここは」。《......運命の歪曲を願う愚か者よ》。彼女の耳ーーーいや、正確には"頭の中"に声が響いた。8

2016-05-28 14:35:52
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「ーーーっ!誰だ!」。咄嗟に辺りを見渡すが、そこにはただ白い世界が広がるだけ。鼓動が速くなる。《...お前の力、示してみよ》。姿こそ見えないが圧倒的な存在感を放つその声が、段々と遠ざかって行くのがわかった。《覚悟を、示せ》。"我は、ーーーに居る"。「っ待ってくれ!待っ...」。9

2016-05-28 14:41:10
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

《ーーーハイド!》。聞き慣れた声で、ハイドの意識は覚醒する。そこはもう、無の世界ではなかった。「...クシャ...、夢...」。見慣れた空間、すぐそばには少女のあどけない寝顔。安堵の息を漏らすと共に、ハイドの耳には"あの声"が離れない。「......力を、示す......」。10

2016-05-28 14:44:07
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

不思議な感覚。先の存在は、果たして夢だけのものか否かーーー。"幻想"と呼ぶには余りにも相応しく、"現実"と呼ぶなら余りにも信じ難い。だが。「.....クシャ、テオ」。ハイドは相棒達に問いかけていた。儚い一夜の幻を、今一度思い出しながら。「...ついてきてほしい、場所がある」。11

2016-06-24 08:32:55
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

その夜。すやすやと寝息を立てるセーレに小さく「行ってくる」と告げ、ハイドは外に出た。漆黒の闇が、その姿に暗い影を落とす。「......ふう」。一度、息を深く吸う。目を閉じると、己自身も夜の闇と同化する感覚をおぼえた。ゆっくりと瞼をあげる。頭上には、無数に瞬く星達。「行こう」。12

2016-07-06 16:39:16
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

辿り着いたそこは、滅亡せし王国『シュレイド』の城。空に浮かぶ、禍々しい程に黒く染まった...月に隠された太陽の姿。同じだ。夢に見た景色と、何もかもーーー。既視感に胸がざわめいた。ハイドが眠りに落ちた先で出会った声の主は。《......やはり、来たか》。彼女の眼前に、鎮座する。14

2016-07-06 20:52:23
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「......ミラ、ルーツ」。神秘的であり、圧倒的な存在感は、正に"伝説"と呼ばれしものに相応しい貫禄。全てを見透かすかのような紅の瞳は、静かにハイドを射抜く。《お前には...よほど、捻じ曲げたい運命があるようだ》。夢で聞いた、声。頭の中に直接語りかけてくるように、低く鋭い。15

2016-07-06 20:56:39
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「...なぜ、私の夢に」。素直な疑問だった。目の前に聳え立つ祖龍は、少し瞳を細めながら息を吐く。《......全ては、お前の心が導いた未来。求め、縋りたい過去》。刹那、耳をつんざく咆哮にハイドは思わず表情を歪めた。一瞬の内に辺り一帯を覆った僅かな殺気が、彼女の肌を絶えず刺す。16

2016-07-06 21:01:02
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

《さあ、示すのだ》。幾つもの稲妻を纏い、空が鳴く。その威圧感と殺気は、今までに感じたそれより遥かに秀でていた。地に膝をついてしまいそうになる程に、身体が重く感じた。《...ハイド》。内に宿る魂が、彼女の名を呼ぶ。「...大丈夫」。ハイドは、笑った。「だから、見守っててくれ」。17

2016-07-06 23:47:29