ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ

理不尽が道理を殺す。それがインガオホー也。 ならば、稚拙な希望が生み起こすインガオホーとは? 入江の魔人シリーズとマスクドハンターズが一人仮面アーチャーとのコラボ外伝作品!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「……つマり?」「この世界に関する理解の低い異世界の住人が、この世界の敵を匿って何をするつもりなのか…うん、その行く末はかなり面白そうだ」「でハ、黙認ト?」「そうなるかな」「えー、黙認なんですかー?」闇の中から、新たな影が現れる。それは作業着を着た、小柄な女であった。 24

2016-07-11 16:55:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その首からは「アカシ」と記された識別カードが下げられている。江見は朗らかな笑みを向け、作業着の女の名を呼んだ。「何か不満かい、アカシ?」「不満ですよー大不満ですよー」アカシはキャンディめいた甘い声を出して、江見にしなだれかかる。江見はネコをあやすようにアカシの頭を撫でた。 25

2016-07-11 17:00:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「折角使えそうな実験体が山ほどいるじゃないですかー使わないと損ですよー」「そうか。そういう考えもあるねぇ」江見は目を細め、そして極めて優しい声色でセンダイに命じた。「センダイ」「はッ」「アカシの好きにやらせてあげなさい」 26

2016-07-11 17:00:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「でハ、適当ニ見繕ッテきまス」センダイはそう言い、闇の中へ溶ける様に消えていった。「アーン!提督大好きー!」アカシは喜色に満ちた声で江見に抱き付く。江見は難なくアカシを抱き留め、口元に邪悪な笑みを浮かべた。 27

2016-07-11 17:05:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「さぁーて、聖良君。この困難に君はどう立ち向かうのかなぁ!ハァーハァーハァ!」 28

2016-07-11 17:06:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ」#1 おわり #2 へ続く

2016-07-11 17:07:05

#2

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ」#2

2016-07-13 20:32:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

これまでのあらすじ:(幌筵泊地提督・聖良紅牙こと仮面アーチャーは、〝楔”によって住処を追われた深海棲艦を秘密裏に匿った。しかしてその行動は、幌筵泊地を実質的に支配する邪悪なる魔人・江見悠の知る所となった!)

2016-07-13 20:33:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

草木も眠るウシミツ・アワー。闇と静寂に包まれた幌筵の一角にくぐもった悲鳴が小さく響く。読者の皆様の中に暗視スコープめいた夜目の持ち主の方がいれば、その声を出す影を見つけることができるはずだ。人と思えぬ姿をした奇怪な異形が、荒縄で蓑虫めいて雁字搦めに拘束した何かを担ぐ姿を。 1

2016-07-13 20:34:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

荒縄で全身を拘束された哀れな犠牲者は、黒い装甲に白磁めいた白い肌。即ち深海棲艦。重巡リ級である。リ級は目尻に涙を浮かべ、必死に身を捩るが、襤褸布めいた包帯に覆われた腕はビクともしない。やがて、異形は基地主要施設から離れた建物に辿り着き、扉を開けて内部の闇へと身を滑り込ませた。 2

2016-07-13 20:35:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

異形は淡々と闇の中を歩む。一寸先も見えぬ闇の中、リ級は恐怖に震えた。最近、自分の仲間がどんどん姿を消していった。最初は眠りから覚めた時だった。次は騒ぎを聞きつけた提督の艦娘に連れられてだった。そして次は消えた筈の仲間が戻り、「提督に抗議しよう」と語って仲間と一緒に姿を消した。 3

2016-07-13 20:37:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

このリ級は消えた仲間たちを追って、脱出を禁じられた研究所から飛び出したところを捕まった。彼女は知った。仲間たちを攫ったのはこの怪物であると!リ級は悔し涙を浮かべる。通信装置は会敵した瞬間に破壊された。最早仲間にこの事実を知らせることは不可能だ。 4

2016-07-13 20:38:50
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

抵抗しようにも、異形の怪物の力はこちらよりも上。最早このリ級は、ツキジで捌かれるのを待つマグロであった。怪物は闇の中を進み、幾つかの扉を開けると、地にリ級を放り捨てた。「グワーッ!」「連レてきタぞ」怪物は捩じれた声で呼び掛けた。リ級が訝しむよりも速く、眩い光が視界を焼いた。 5

2016-07-13 20:40:33
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「お疲れ様でーす!いやー、相変わらず手際のいいことです!」「コれで6体メだ…今日は何ヲ?」「んー…今日はいいお薬が手に入ったから、解剖で行きましょう!」「心得タ」「アイエエエエエエ…」頭上を通り過ぎる物騒極まりない言葉の応酬に、リ級は静かに失禁した。 6

2016-07-13 20:41:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

光に慣れた視界は、新たな絶望を見た。ここは、四角い手術室のような部屋であった。中央に置かれた台には青黒い血と白い肉が散乱し、ドリルや電動ノコギリ、金槌などおおよそまともなことをするとは思えぬ危険な代物が無造作に置かれていた。リ級は仲間たちの末路を悟った。悟らざるを得なかった。 7

2016-07-13 20:43:17
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あー、この子活きが良さそうですねー」作業着を青黒い血で汚した女が場違いなほどに明るく笑った。リ級には、それが悪魔の笑顔に見えた。「さ、楽しい解剖を始めましょうねぇ」「アイエエエエエエ!?」リ級の悲鳴は闇の中に響き渡った。やがて、肉が裂ける音の後、悲鳴は聞こえなくなった。 8

2016-07-13 20:44:51
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「はぁ…」昼下がり、聖良紅牙は自身に与えられた司令室で溜息を吐いていた。机の上には昼食として給されたサーモン・スシが手つかずのまま置かれており、既にその表面からは水分が失われていた。 10

2016-07-13 20:46:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『午後のパラムシロラジオの時間です!』部屋の隅に置かれたラジオからは機械的な明るい声でニュースが流れる。『まずはこんなニュースから!ここ数日、北方海域で巨大な影を見たという話が後を絶ちません。もしや絶滅したとと思われた鯨でしょうか?上層部は専門家の意見を待つとの』バツンッ! 11

2016-07-13 20:48:29
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

急に、ラジオが途切れる。聖良は顔を上げた。青みがかった白髪の少女が、ラジオのスイッチを切っていた。そのバストは標準的であった。聖良は少女の名を呼んだ。「叢雲様…」「何よ、腐ったニボシみたいな顔して」なまじりを吊り上げ、叢雲の勝気な美貌が怒りにキツく歪む。 12

2016-07-13 20:51:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

聖良は申し訳なさそうに身を縮こまらせた。叢雲はツカツカと歩み寄り、「イヤーッ!」聖良の頭に拳骨を落とした。「い゛っ…グワーッ!?」「何ウジウジしてんのよ!」「うう…だって」「だってじゃないでしょうが!」叢雲は小さな子供を叱責するように大声を出した。 13

2016-07-13 20:54:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

聖良はビクッと体を震わせる。そして申し訳なさげに視線を向ける。その視線は更に叢雲の怒りを煽ったが、更に拳を振り上げることを思い直し、深く息を吸い、そして吐いた。「こうなる可能性なんて、初めから想定の範囲内でしょうが」「それは…」 14

2016-07-13 20:55:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

聖良は反論の言葉を口にしようとし、しかして何の言葉も出てはこなかった。脳裏に過るは今朝の光景。いつものように匿っていた深海棲艦達の様子を見に来た聖良紅牙が見たのは、今にも武装蜂起を起こしそうな深海棲艦達であった。彼らは言った。この1週間で、仲間が次々に姿を消していると。 15

2016-07-13 20:57:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

しかもある者は叢雲や聖良に連れ出されたきり、戻ってこないとも。彼らは怒り心頭であった。折角死の危機から逃れることができたと思った矢先に、仲間が一人、また一人と消えていくのだ。恐らく誰も生きてはいまい。その場は涙ながらの説得で抑えはしたが、怒りの決壊は時間の問題であった。 16

2016-07-13 21:00:25
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