第8話 「閉じ込められた龍」 パート4

脳内妄想艦これSS 独自設定注意 雲龍さん大暴れ
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

8-4-42「くっ…」 ここで誰が大きな一撃を食らっても大きな不利に繋がるだろう…が、それも時間の問題と言えた。完全なジリ貧状態だ。 「何か策は無いの!?」 副砲で至近距離のイ級を退けながら、扶桑が五十鈴に向かって叫ぶ。 「こうなったら一度コイツらを振り切るくらいしか!」

2016-07-23 22:31:51
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8-4-43 それもかなりリスキーな選択だ。だが、この状態では反撃のしようも無い。五十鈴は脳内で決断を下す。 「総員、撤退よ!牽制射撃を行いながら一旦距離をー」 「五十鈴さん!!」 …五十鈴が号令のために目を離した一瞬だった。他の三人の目は五十鈴の直上から突撃する爆撃機を見た。

2016-07-23 22:32:18
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8-4-44 三人の叫びに五十鈴は振り向き、自分の目前に迫る爆撃機を見たー 最早回避は間に合わない。直撃を覚悟し、五十鈴は顔の前で腕を交差させ耐える姿勢を作る… ドガァアッ!! …激しい爆発音。だが、五十鈴には被弾した感覚が無かった。 カラン、と腕にぶつかる鉄片は敵機の残骸ー

2016-07-23 22:33:09
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8-4-45「えっ…」 腕を解いた五十鈴の目には、自分の目前で爆散した敵機の屑と…敵機を破壊し、空に舞い上がる零戦の尾が飛び込んできた。 「応援…?誰!?」 「五十鈴さん、あれを!」 浜風が指差した先。そこには、見覚えのある幡を翻し艦載機を次々と飛ばす艦娘の姿! 「雲龍さん!」

2016-07-23 22:34:01
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8-4-46 雲龍の艦載機は次々と敵航空戦力を圧倒…制空権を巻き返していく! 「…アイツ…遅かったじゃない!」 「今が好機です。攻勢に出ましょう!」 爆撃と観測射撃の脅威が薄れた隙に、『鳶』の4人も体勢を立て直す。 前衛を突破し敵主力を叩く構え! 「皆良いわね?突撃するわ…」

2016-07-23 22:34:35
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8-4-47 五十鈴が言いかけたその時…4人の横を何かが高速で通り抜けていった。 「へっ?」 それは紛れもなく…雲龍! 「ちょ、ちょっと!アンタが単騎で突っ込んでどうするのよ!」 慌てた五十鈴が制止しようと叫ぶが雲龍は止まらない。 彼女は全ての敵の視線を一手に受け、敵勢力の中へ!

2016-07-23 22:35:13
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8-4-48「ギィイイイッ!」 突っ込んでくる雲龍を見た前衛のイ級達は群れを成して飛びかかっていく! …だが、彼女はそれを見ても涼しい顔だ。滑走路の部分を留めた幡をクルリと持ち替えると雲龍は更に速度を上げ、自分の正面を阻むイ級に向かって柄の部分で突きを繰り出す!

2016-07-23 22:36:33
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8-4-49「ギィアァア!?」 メシャリ、と音を立ててイ級は吹き飛び、雲龍はそのイ級の飛びかかって来たコースをやすやすと通り抜けた。 左右から飛びかかったイ級の攻撃は空を切る。 だが、残りのイ級も直ぐに追撃の体勢を… ドゴッ!ドゴォオン! …雲龍を目で追ったのが悪手だった。

2016-07-23 22:37:48
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8-4-50 雲龍が通り抜けた直後にイ級の後頭部を襲ったのは、彼女が事前に放っていた艦攻! 雲龍は後ろは振り返らずに自分が吹き飛ばしたイ級を飛び越えると、軽く手で合図を送り、動けずにいた残りのイ級を爆撃で処理し更に前を目指す。 「…はぁあ…」 それはあまりに鮮やかな一瞬の出来事。

2016-07-23 22:38:12
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8-4-51「って、見入ってる場合じゃないでしょ!私達も動かないと!」 五十鈴は茫然としている綾波を我に返し、『鳶』は後続する形で行動を開始する。 前衛の一部が崩れ、既に戦局は此方に流れが戻ってきていた。 先行する雲龍に向けて主力の砲撃が開始され、次に彼女を阻むはホ級だ。

2016-07-23 22:40:00
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8-4-52 後方の主砲による支援を受けたホ級は強気に雲龍の真っ向に立ち塞がり、砲撃を開始する。 だが、後方からの砲撃も正面の砲撃も、雲龍は軽い体の動きで躱しホ級との距離をみるみる内に詰めていく。 焦ったホ級が次の一射!これも当たらない! もう一門で更に一射!雲龍はこれも回避!

2016-07-23 22:40:57
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8-4-53 急いで次発を装填し…次の発射準備が整った時、雲龍はホ級の『目の前』にいた。 ホ級の暗い目に、非常に冷静な顔の雲龍が映る。 その顔面に砲身を向けたホ級の一か八かの一撃! …だが、雲龍は身を屈めてそれを回避した。 ホ級は反対の主砲を下に向け、屈んだ雲龍を追いかけるー

2016-07-23 22:41:56
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8-4-54 砲身が彼女の頭にまで向いたとき、彼女はクスリと『笑った』…ようにホ級には見えた。 「はぁっ!!」 直後、ホ級の手を襲ったのは下段からの雲龍の蹴り上げ! 砲撃を行う直前に主砲は滅茶苦茶な方向に逸らされ、近くに居たロ級の方角に誤射される! 「キァアアッ!?」

2016-07-23 22:42:29
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8-4-55「てぇああぁっ!!」 雲龍はそのまま蹴上げた流れから体を捻ると、幡をフルスイングしてバランスの崩れたホ級を追撃!脇腹からミシミシと嫌な音が立ち、ホ級はその場で崩れ落ちた。 「雲龍さん、凄い…!」 雲龍の後方で周りの軽巡や駆逐艦を片付けながら、綾波は感嘆の声をもらす。

2016-07-23 22:42:56
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8-4-56「何なのよアイツ…!何で空母が単騎特攻して近接戦闘で深海棲艦と渡り合ってるの!?それに…」 五十鈴と対面していたチ級が、五十鈴が引き金を引く前に目の前で爆散した。 …雲龍が飛び回らせている艦載機だ。 「何で自分も戦闘を行いながら周りの空間を掌握出来てるワケ!?」

2016-07-23 22:43:38
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8-4-57 つい先頃とうって変わって徹底的に攻撃を封じられているのは今度は敵の側だった。前線に突撃をかけている雲龍の艦載機は、およそ戦闘中の彼女が意識を回しているとは思えないほど正確に動き、辺り一帯を掌握し始めていた。 「昨日発艦さえ出来なかった艦娘と同一とは思えない程ね…」

2016-07-23 22:44:16
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8-4-58 完全にフリーになった扶桑の主砲は、敵のリ級を一隻、二隻と沈めていく。艦載機で抗っていたヲ級も爆撃の嵐に晒され、最早戦闘不能に陥っている。 …そして、残るは敵旗艦、ル級を残すのみとなっていた。 「雲龍さん、まさか戦艦まで落とすつもりでしょうか?」 「どうだかね…」

2016-07-23 22:44:53
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8-4-59 『鳶』が全艦ル級に向けて移動を開始した時、雲龍は既にル級の間合いにまで詰め寄っていた。 この距離で主砲をまともに喰らえばひとたまりもない…そんな距離だ。 肉迫に持ち込もうとする雲龍が合図を送り、艦爆が集結を始める。 ル級も全砲門を雲龍に向け、雲龍を仕留める構え…

2016-07-23 22:45:23
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8-4-60「急ぎましょう、五十鈴さん!」 これは幾らなんでも分が悪い!4人も砲撃の準備を整え、射程圏内へ突入せんとする。 だが、一番最初に動いたのは…ル級だ! ドォッ!!ドォン!ドドォッ!! 主砲、副砲が一斉に火を吹き、立ち昇る水飛沫で雲龍の姿が見えなくなる。 「雲龍さん!」

2016-07-23 22:46:07
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8-4-61 綾波は一瞬『間に合わなかった』と思った。 ル級の目前の水飛沫が引いた後に雲龍の姿は無い…? …いや、違う! 雲龍の姿が次に目に入った時、彼女は既にル級の背後…しかも頭上を取っていた! 「いぃやぁあああーっ!!!」 高く上がった全力の踵が、ル級の首に突き刺さる!

2016-07-23 22:46:43
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8-4-62 ル級の口から体液が零れ、その体が前のめりに水面近くまで沈み込む。 そして雲龍は飛び退り…最後の合図を送る。 ドドドドドドッ!!!! 集結していた爆撃機が、無防備となったル級の上半身に、首に、頭に、さながら断頭台の如く殺到! 黒い屑鉄と化したル級は水底へと消えた…

2016-07-23 22:47:46
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8-4-63「雲龍さん!」 「…」 敵戦力全滅。程なくル級の沈んだ跡地で、佇む雲龍とメンバーは合流した。 「一人で特攻して主力全滅って…アンタ、頭おかしいわよ」 「…」 五十鈴が呆れ半分に感想を述べる。 だが、雲龍の反応は無い。 「ちょっと、聞いてるの?」 「…」

2016-07-23 22:48:57
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8-4-64 返答は無いままだ。 どうにも様子がおかしい。 …全員が顔を見合わせた直後… 「わわわわっ!!?」 全員が慌てて雲龍に駆け寄り、ふらりと倒れそうになる雲龍の身体を受け止めた。 「ど、どうしたのよ一体…」 「雲龍さん?」 4人は心配そうに雲龍の顔を覗き込む。そして…

2016-07-23 22:49:52
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ぐぅううぅう~… …盛大な腹の虫が鳴り響いた。

2016-07-23 22:50:31