フォビドゥン・フォレスト:プロローグ~1話前半まとめ

プロローグ~前半3までのまとめです ●高校生が妖怪と戦ったりする現代ファンタジーです ●キャラ紹介・設定紹介などは1話完結後に、 続きを読む
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フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

肌寒い冬の朝。天気は薄曇り。神社の石階段の下、バス停近くの開けた場所で幼馴染を待つ。俺は片桐。高校生だ。住んでるのは風科(かざしな)。お前がここに住んでんのかどうか分かんねぇから一から説明しとくけど、森と家だらけの田舎だ。悪いとこじゃねぇけど、遊ぶとこや観光名所は少ねぇ。 1

2016-07-06 22:48:13
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ここの神社も祭り以外は近所からしか人がこねぇし、普通なゲーセンだのカラオケだのは街まで行かなきゃねぇ。乗馬クラブやゴルフ場やらはおっさん連中向けだ。森のほうで遊ぼうにも…完全な雪解けには5月まではかかるし、奥の方は危ねぇ。まあ、山の中じゃなきゃ電波は入るだけマシなほうかもな。 2

2016-07-06 22:55:45
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「はる君、お待たせ~」 「おう」 鳥居の向こう側から、制服に着替えた俺の幼馴染…北里瑠梨が石階段を降りてきた。お待たせという割にゆっくりだが、バスの時間まで5分ある。大体宮司の娘でこの鳥姫神社の巫女が滅多なことで参道を走るもんじゃねぇからな。 3

2016-07-06 23:00:20
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俺は毎朝4時に起きて瑠梨を起こす。それから俺は仲間の世話やらを、瑠梨は掃除や朝の礼拝なんかをやる。で、それぞれ飯を食ってから神社前ので45分のバスに乗る。神社の娘が自力で起きれねぇのはどうかと思うが、他にも仕事があんのに忙しい神事も殆ど毎朝やれてるだけでも大したもんだろ。4

2016-07-06 23:06:59
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コレが俺たちの朝の基本の流れなわけだが、結構例外も多い。俺の朝飯に限っても仲間達のとこか学校で食ったり、手伝いついでに瑠梨ん家で御馳走になる場合もあったりする。そんでもバスは9割型、この時間のを使う。単に登校するだけなら2・3本遅くてもいいが、俺達は朝礼前にやることがある。 5

2016-07-06 23:11:30
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時刻通りにバスが来る。朝夕は一時間に2・3本あって田舎でもマシな方なんだと思うが、それでも乗り損ねると面倒だから毎日正確で助かる。まあ滅多に混む様な道じゃねぇけどな。俺達は一番奥の一つ前、二人掛けの席に座る。俺が右の窓側、瑠梨が隣。俺達の定位置だ。 6

2016-07-06 23:16:00
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「今朝は節分のやつの話だっけ?」 瑠梨が話しかけてくる。始発から2本目のバスだけあって、俺達以外には他に2人しかいねぇが、一応声を抑えて話す。 「だな。あとバレンタインと雛祭りと卒業式と…改めて並べてみると高校でわざわざやるイベントじゃねぇなコレ」 7

2016-07-06 23:21:31
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「今朝は節分のやつの話だっけ?」 瑠梨が話しかけてくる。始発から2本目のバスだけあって、俺達以外には他に2人しかいねぇが、一応声を抑えて話す。 「だな。あとバレンタインと雛祭りと卒業式と…改めて並べてみると高校でわざわざやるイベントじゃねぇなコレ」 7

2016-07-06 23:21:31
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「卒業式以外はね。でも良いんじゃない?中学の子もいるんだし」 「…いや中学でもどうなんだ?」 俺達の高校は田舎の割に結構大きい。俺らが生まれるちょい前くらいからの統廃合の結果らしい。つっても中等部も足して千人もいかねぇが。でもって、生徒会や部活、イベントは中高合同でやってる。 8

2016-07-06 23:30:41
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街の賑やかさは山のほうよりマシとは言え、娯楽が少ないことに変わりはねぇせいか、独特なイベントが多くて好評だ。運営する側はマジ大変なんだけどな…んなことを考えてると瑠梨がとんでもねぇことを聞いてきた。 「ねぇ、はる君はバレンタイン…誰かに告白するの?」 9

2016-07-06 23:38:08
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「…ねぇよ。大体あんなセコいのやってられっかよ…」 バレンタインイベントは、直接手紙やらチョコを渡せねぇ奴らのために、俺ら生徒会メンバーで配達してやろうってやつだ。正直そんくらい自分でやれと思う。 「ええ…真面目ににやろうよ…」 「いやコクるほうな…仕事はやんよ…」 10

2016-07-06 23:41:27
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「なら良いけど、セコいは言い過ぎじゃない?きっかけとか後押しが必要な人だっているよ」 「そうかもしんねぇけどなぁ…」 過去数年の実績があるし反対はしねぇけど、どうも気が進まねぇ。 「お前こそ断り方考えとけよ」 「…何の話?」 マジかコイツ。 「いやバレンタインの話だろうが」 11

2016-07-06 23:44:42
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「お前ぜってぇコクられるだろ」 「そんなことないよ。それに断り方なんて用意してたら自意識過剰みたいじゃない」 「いやコクられるって、神社の巫女で仮にもアイドルの端くれで…」 あと意外に色々デケェし…とは言わなかったのに、腕で胸を庇いながらむくれて横を向きやがった。 12

2016-07-06 23:48:08
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「端くれ…まあそうだけどね」 振り向き気味に複雑な表情でこっちを見てきた。 コイツはローカルアイドルなんてのもやってる。アイドル4人と社員2人だけの事務所で、仕事も多くて週2・3回。忙しい本業や学校に障らねぇ程度なのは結構だが、これで稼ぎ頭だという事務所の経営が心配になる。 13

2016-07-07 00:00:49
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「でも私がアイドルしてるなんて知らない人も多いだろうし、絶対誰も来ないと思うよ…おっと」 バスがヒサゴ橋に入った。遠心力で軽くよろけてきた瑠梨の腰を片手で支えてやる。ここは道路が螺旋状に六周ほどループして、慣れてても左回りの遠心力が結構くる。14

2016-07-07 00:04:51
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「ありがと」 「気を付けろよ。そろそろ新人も入る時期だろうし」 この運転手はベテランのほうだが、その運転でもうっかり寝てると頭をぶつけることはあるし、新人の運転だと結構怖い。シートベルトが欲しいとこだが、ここ以外で危ないとこはねぇし導入されるこたぁねぇだろうな。 15

2016-07-07 00:13:21
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ここまで神社から10分。橋の最後の1周で遠目に市街が見える。この辺の田畑地帯を10分走るとあそこに着く。そっから更に10分で学校に着く。街中に中高と小学校の4階建ての校舎が2つ、それぞれのグラウンドとプールに部活塔なんかがある。ヘタな都会の学校より大きいと思う。16

2016-07-07 00:22:26
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グラウンドでは運動部が寒さに震えながら走り込み、部活塔のほうからは吹奏楽部の軽い音合わせが聞こえる。 「ねぇ。はる君。さっきの話だけど」 俺に続いてバスを降りた瑠梨が話しかけてきた。 「さっき…?どの話だ」 「バレンタインの話」 「それならやらねぇって言っただろ?」 17

2016-07-07 00:34:07
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「そうじゃなくて…」 「ん?なんだよ」 コイツがこうも言い淀むのは珍しい。校門の近くまで来たってのに立ち止まってやがる。 「もし私が誰かに告白されたら…どうする?」 それを俺に聞くのか、お前は。 「…そいつに『ご愁傷さま』とでも言ってやるよ」 「…なにそれ」 18

2016-07-07 00:38:45
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瑠梨は呆れたような怒ったような、何とも言えねぇ声でそう言うと、俺を追い抜いて校門に向かっていった。「はる君!置いてくよ~!」 「いや、お前が止まってたんだろうがよ…」 軽く溜息を吐いてから俺も歩き出し、校門に入る辺りで追いついた。 (「なにそれ」とか言われてもなぁ…) 19

2016-07-07 00:44:10
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実際、ご愁傷さまとしか言いようがねぇだろうよ。だってコイツには…いや、悪いがこの話はここまでにしとく。勝手にヘタなこと書くと不味いかも知れねぇからな。 20

2016-07-07 00:46:33
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