「アポロ飛行士に高い循環器系疾患死亡率、放射線が原因か 研究」という記事が出たので論文を探し出して読んでみた

AFP-時事の記事「アポロ飛行士に高い循環器系疾患死亡率、放射線が原因か 研究」(2016年7月29日付) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160729-00000010-jij_afp-sctch フロリダ州立大学の公式ニュースサイトの記事 http://news.fsu.edu/Top-Stories/Apollo-astronauts-experiencing-higher-rates-of-cardiovascular-related-deaths Scientific Reports誌に掲載された論文 続きを読む
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論文の表2では死因を循環器疾患、癌、事故、その他の4つに分け、死亡者全体に占める割合を検討しています。癌による死亡率はアポロ宇宙飛行士29%、地球を回っただけの人31%、地上訓練だけの人29%、55-64歳の米国人一般集団34%となり、宇宙飛行士の癌死亡率が同年代の一般集団と比較して高いわけではないという結果になっています。

nao @parasite2006

@kazooooya なるほど、宇宙空間ではGy→Svの換算係数も地球上と違ってくるのですね(www1.s3.starcat.ne.jp/reslnote/NATUR… p.25)。(続く)

2016-07-30 15:50:44
nao @parasite2006

@kazooooya (続き)「アポロ14号は,太陽活動が極めて活発な時期の9日間の船外活動で11.4 mGyの被ばくを記録している。ここで,Sv単位の値はGy単位の2倍となる(地上とは異なる)ので,実効線量は22.8 mSvとなり,これはまれに起きる大線量率である。」

2016-07-30 15:54:03

アポロ14号は史上3度目の月面着陸を行った宇宙船です。1971年1月31日、3人の宇宙飛行士を乗せてケネディ宇宙センターから打ち上げられました。3人のうち2人が33時間月面に滞在して合計9.5時間の船外活動2回を行ったあと、2月9日全員無事に太平洋に着水し帰還しました。
3人のうち2人はすでに亡くなり(指令船の操縦士だったスチュアート・ルーサは1994年膵炎で、船長だったアラン・シェパードは1998年白血病で)、ただ一人残っていた月着陸船操縦士エドガー・ミッチェルが2016年2月4日に米国フロリダ州の医療施設で85歳で亡くなりましたが、死因は明らかにされていません。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06H4T_W6A200C1CC0000/
この論文の投稿受付は2016年5月9日ですが、論文は2015年末までに死亡した宇宙飛行士を対象としているため、ミッチェルは含まれていません。
論文が死亡した宇宙飛行士の確認に利用したNASAのウェブサイト
http://www.jsc.nasa.gov/Bios/astrobio_former.html
ではミッチェルはまだFormer=元宇宙飛行士として掲載されており、Deceased=物故者にはなっていません。

(ありゃ?なんじゃこりゃ?)

Haruhiko Okumura @h_okumura

@kazooooya @parasite2006 「有意(p<.1)」に注意(計算するとp=0.077) twitter.com/h_okumura/stat…

2016-07-30 16:17:14
Haruhiko Okumura @h_okumura

nature.com/articles/srep2… アポロ飛行士43%(7人中3人)が心血管死,全米平均27%と矛盾しないが,地球軌道の飛行士11%(35人中4人)と比較したら「有意」(fisher.test()でp=0.077なんだけど)

2016-07-29 20:05:31
Nature Japan @NatureJapan

【生理】アポロ宇宙船飛行士の死因は心血管疾患が多い | Scientific Reports go.nature.com/2aiq9qi #アポロ #宇宙飛行士

2016-07-29 11:46:13
Haruhiko Okumura @h_okumura

nature.com/articles/srep2… アポロ飛行士43%(7人中3人)が心血管死,全米平均27%と矛盾しないが,地球軌道の飛行士11%(35人中4人)と比較したら「有意」(fisher.test()でp=0.077なんだけど)

2016-07-29 20:05:31
nao @parasite2006

@h_okumura @kazooooya 有難うございます。Fig.1 nature.com/articles/srep2… の脚注を読み落としていました。地上訓練のみとの比較の時には有意水準P=0.05を採用しておいて、ISSクルーとの比較の時はP=0.1だなんてずるくないですか?

2016-07-30 16:32:59
酋長仮免厨 @kazooooya

@h_okumura @parasite2006 ありがとうございます。私も気が付かなかった…微妙なところですね。

2016-07-30 18:00:54
Haruhiko Okumura @h_okumura

この「有意(p<0.1)」論文,「有意水準は事後に決めていいのか」「そもそもp<αかp>αかで効果があるなしを決めていいのか」も考えて読むべし twitter.com/h_okumura/stat…

2016-07-30 18:17:45
酋長仮免厨 @kazooooya

ノンフライトとの比較はぎりぎりか…。 Apollo Lunar Astronauts Show Higher Cardiovascular Disease Mortality: j.mp/2az6tQh pic.twitter.com/XEdRyPd5tk

2016-07-30 18:20:11
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あ〜る菊池誠(反緊縮)公式 @kikumaco

有意かどうかを検定で決めたいなら、有意水準を事後に決めてはいけない。解析前に決めておかないと twitter.com/h_okumura/stat…

2016-07-30 18:25:36
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

@kikumaco @parasite2006 少なくとも”Due to this test being considered extremely conservative”なんてことを理由にしたら(Methodにこんなことを理由として書いてますが)いかんですよね。

2016-07-30 22:58:11

(まとめ公開後の追加)

地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

おっと、文の断片がコンタミしていた。訂正→ 大体この論文のFig1とかTable2とか、検定を繰り返しまくっているではないか。多重比較の補正しないっていうのは明らかに統計的にアウトだろ。 twitter.com/tonkyo_Vc/stat…

2016-07-30 23:33:18
地下楽師@明日できることは今日やるな @tonkyo_Vc

大体この論文 nature.com/articles/srep2… のFig1とかTable2とか、Table2のFootnote検定を繰り返しまくっているではないか。多重比較の補正しないっていうのは明らかに統計的にアウトだろ。

2016-07-30 23:14:22

統計学の比較は2群間が基本ですが、3群以上の間で比較を行うときは単に2群間の比較を漫然と繰り返すのではだめで多重比較の補正を行わなければなりません(多重比較の補正には複数の方法があり、場合に応じて最も適切なものを選んで適用する必要があります)。この論文の場合1) 月へ行った宇宙飛行士、2) スカイラブやISSのクルーのような地球の周りを回っただけの宇宙飛行士、3) 1と2を合算したもの、4) 地上訓練だけで宇宙に行かなかった宇宙飛行士、5) 55-64歳の米国人一般集団の5つの群の間で比較を行うので(もっとも実際には可能な2群間比較を洗いざらいやっているわけではありませんが)、当然多重比較の補正が必要なのですが、論文の方法の項の「統計解析」のセクションを見ても多重比較=multipule comparisonを行ったとは一言も書いてありません。これで審査の際、レフェリーが本当に何も言わなかったか不思議です。

地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

あと、この論文、「母集団」として何を考えているのか考えないとおかしなことになる。少なくとも循環器系疾患が増加していると考えられるのは「宇宙飛行士」という特殊なバックグラウンドを持っている集団の中で月に行ったことがある宇宙飛行士ということになるし、一般化は無理っぽ。

2016-07-30 23:23:20
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

というか、月に行ったことない宇宙飛行士の死因の約半数が「事故死」っていう方がよほど吃驚仰天する結果だと思うんだけどな。どういう生活送ってんだよ、という気がしてくる。 nature.com/articles/srep2…

2016-07-30 23:25:12

論文の表2から亡くなった宇宙飛行士のうち事故死した人の実数を出すと、次のようになります。

  1. アポロで月に行った人達:7名中1名(14%)
  2. 地球の周りを回った人達:35名中17名(49%)
  3. 地上訓練のみの人達:35名中19名(53%)

アポロ1号事故(1967年1月27日、発射台上の火災、犠牲者3名)とスペースシャトルチャレンジャー事故(1986年1月28日、打ち上げ直後の空中分解、犠牲者7名)の犠牲者のうち、過去に宇宙飛行経験があった6名が2)の事故死者の数に、残りの4名が3)の事故死者の数に含められています。

スペースシャトルコロンビア事故(2003年2月1日、地球の周りを回った後大気圏再突入時の空中分解、犠牲者7名)の犠牲者は、7名全員が宇宙飛行経験ありとして2)の事故死者の数に含められています。

この結果、宇宙船以外の事故による死亡者の数は2)では17-6-7=4名、3)では19-4=15名となります。

その2

aramaki @aramaki34

日本人はだいたい悪性腫瘍、循環器系疾患、感染症で1/3ずつ死んでいるんじゃなかったか。アメリカ人だってそう違わないように思うんだが。「地球を離れなかった宇宙飛行士では9%、ISS乗組員などでは11%」てのが不思議なほど異常に少ない。 twitter.com/parasite2006/s…

2016-07-30 16:08:57
nao @parasite2006

「アポロ計画(1968年~1972年)で宇宙に出た宇宙飛行士24人中すでに亡くなっている人7人、そのうちの3人の死因が循環器系疾患だった」という話を「宇宙飛行士の循環器系疾患死亡率が43%で異常に高い」と言っちゃっていいの?headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160729-…

2016-07-30 10:59:34
nao @parasite2006

@aramaki34 この話、原論文nature.com/articles/srep2… を見つけて読んでみましたら、おっしゃる通り地上訓練のみの人やISSクルーの循環器系疾患死亡率は55-64歳の米国人一般集団と比較してずっと低いです。nature.com/articles/srep2…

2016-07-30 16:24:42
リンク www.nature.com Figure 1: The proportional mortality rate due to cardiovascular disease in the United States among individuals age 55–64 years, Scientific Reports is an online, open access journal from the publishers of Nature. The 2014 Impact Factor for Scientific Reports is 5.578.